表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/84

第7話 おダンゴちゃん

 あの人のことが気になりだして、どのくらいたつでしょう。

 中学生になってしばらく、彼は、ただ視界の片隅にいつもいるだけの存在でした。

 けれど、いつの間にか少し気になる存在になっていたのです。

 彼が私に振りむいてくれることは、決してないでしょう。

 だって、私は――。


「おダンゴちゃん、これ、職員室に持っていって」


 委員長の百木ももきさんが、プリントの束を私に押しつけてきます。


「え?

 でも私、これから図書委員の仕事あるから……」


「図書室なんて、開くのが遅れたって誰も困らないよ」


「でも……」


「いい?

 これは学級委員としての命令なの。

 今すぐ持っていって!」


 百木さんは私の手を取り、その上にプリントの束をズシリと載せました。


「……わ、分かりました」


 どうして、いつもこうなんだろう。

 みんな面倒な仕事を私に押しつけます。

 見た目が悪いからでしょうか?

 頭の上でまとめている髪が、お団子みたいということでついた私のあだ名、「おダンゴちゃん」

 そんな名前で呼ばれて、私が平気だと思ってるのでしょうか?


 背が低く、太い黒縁の眼鏡を掛けてるのが悪いのでしょうか?

 みんなより、スカートが長いのがいけないのでしょうか?

 休憩時間も一人でいて、ほとんどしゃべらないからでしょうか?


 いつからか、気が安らぐのは、彼、切田苦無きれたくない君を見ているときだけになってしまいました。


 ◇


「苦無君、なんだか元気ないですね」 


 自分からは他人に話しかけないと決めている私が、思わずそう声をかけたのは、彼が浮かない顔をしていたからです。

 初めて見るその表情に、なんだか胸がキュンとなって、思わず声が出てしまいました。


「あ、堀田さん、なんでもないんだ。

 いや、それは嘘かな。

 ちょっと聞いてくれる?」


「あわわわ」


「?」


 人さまから相談など受けるのは、生まれて初めてなので、変な声が出てしまいました。 


「い、いいですよ!

 なんでも聞きますよ!」


「堀田さん、顔が近い」


「ご、ごめんなさいい!

 私ったら……」


 私が聞いたのは、彼の小さなお友達が困っているという話でした。

 

「でね、来週テストがあるでしょ。

 その最終日に、タカシ君の幼稚園に行ってみようと思うんだ」


「私も行きます!」


「え?」


「苦無君がご迷惑でなければ、私も連れていってください」


「えと、でも、堀田さんには関係ないし――」


「お願いです!

 どうしても行きたいんです!」


「そこまで言うなら、ぜひ一緒に行こう。

 ボクも、一人で行くのが不安だったんだ」


 ああ、これは夢でしょうか!

 苦無君と二人でお出かけなんて!

読んでくださってありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ