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2話 アラフォーおっさんと女子高生、ドロップアイテムとしての性能に困惑する!


 アラフォーおっさんと女子高生は、『バシレウス』の面々とイルヴァに深々と頭を下げる。


 自分たちをドロップアイテムとして拾ってくれと…




「ん、 これ飲んで 死んじゃうから」




 イルヴァはまた、グイグイっと手に持つ2つのスキルストーンを差し出してきた。




挿絵(By みてみん)




 そこにペトロネッラが助け船を出してくれる。




「また、お前は… ちゃんと説明してやらんと可哀想だろうが… 我々と同行するのなら、このスキルストーンを必ず飲んでもらうが、良いだろうか? スキルを使えなければ死ぬだけだからな… だが…」




 ペトロネッラは最後に少し言いよどみ、ゆっくりと問題を話してくれた内容が…


 この『バシレウス』の攻略組には、アイテムを鑑定するスキルを持っている者がいなく、所持しているスキルストーンの詳細が不明であった。


 スキルストーンを1度、体内に取り込むとそれを消去する術がなく、一生そのスキルを使い続けなくてはならないのだ…

 スキルには、下級、中級、上級、帝王級があるとされており、もし、下級のハズレスキルだった場合、ダンジョンにいるこの状況から考えると生死に関わる。


 女子高生の御輿(みこし)は、不安を口にした。




「ハズレスキルというのは… どんなスキルなんですか?」




 御輿の不安と疑問を攻略組のメンバーは、顔を見合わせ思案していると、獣人のヴィダルが話しに割り込んでくる。




「はっ、そんなもん、【ライト】とかじゃねーか? あんなもん使ってるヤツなんて聞いた事ねーだろ!」




 下級スキル【ライト】… それは、ただ光を出すスキル。

 ダンジョン内は至る所に、クリスタルが生成されており、それがほんのり明かりを灯しているのだ。

 薄暗い場所もあるのだが、そこは明かりの魔導具を使用すればよいだけなので、わざわざ貴重なスキルに【ライト】を選ぶ者はいないのであった。


 アラフォーおっさんと女子高生は、イルヴァが手に持つ2つのスキルストーンを眺める。




「コウ君は、どっちのスキルストーンがいいですか?」




 御輿に話しかけられた、アラフォーおっさんはまじまじとスキルストーンを見つめ…




「たぶんこれは大切な事だし、牧野さんから先に選んでいいから… 俺は残り物でいいよ?」




「むぅー 牧野じゃなくて名前で呼んでくださいよ… はい! ミ・コ・シ」




「お、おう… み、ミコシ… さん? が先に選んでいいからね…」




 おっさんは、気易く接してくる御輿にタジタジになる。

 この歳まで女性経験などなく、魔法使いどころか賢者の領域に踏み込んでいるおっさんなのだ…


 20才以上歳の離れた女子高生の名前を呼ぶ… なんとハードルの高い事か…


 顔を引きつらせながら、なんとか御輿の名を呼ぶ。




「コウ君は… 優しいんだから… じゃ、私、先に選んじゃいますね? ・・・・・・・ うん! これに決めた!」




 名前を呼ばれた事など当たり前の事の様にスルーし、御輿が先にスキルストーンを掴み、そして戸惑いながらアラフォーおっさんが残ったスキルストーンを手に取るのだが、この大泉(おおいずみ) (こう)という男、特に優しさで御輿に先を譲った訳ではない。

 ただ、優柔不断でどちらかに決めかねて流れに身を任せただけなのだった…

 これが、凶と出るとは知らずに…


 手に持ったスキルストーンを口に含む様にと、急かされた2人は一斉に口の中に放り込んだ!

 口の中に入ったスキルストーンは見る間に溶けて無くなっていく…


 変化は直ぐに解った。

 

 溶けたスキルストーンが身体中に染み渡り、それは脳へと到達し、理解する。




「私のスキルは… 【ファイアーストーム】です…」




 御輿は頭の中に、濁流の様に流れ込んでくる【ファイアーストーム】の情報に圧倒され、肩で息をしながら答えた。


 その場にいた『バシレウス』の者達は、歓声を上げる!

 この【ファイアーストーム】は上級に分類されているスキルであり、これを使いこなし習熟度が上がれば相当な戦力になる事は間違いないのだ。


 御輿が引き当てた良い流れで、おっさんにも期待が集まるのだが…




「あの… なんか、すみません… 俺… 【ライト】らしいです…」




 頭を掻きながら申し訳なさそうに、自ら引き当てたハズレスキルを発表するアラフォーおっさんであった。 




「・・・・・・・・・・」




「よし! 皆! これから56階層にあるベースキャンプに帰還するぞ! 遅れた者はお仕置きだぞ! はっはっはっはー」




 副団長である、ペトロネッラは何事もなかった様に、振る舞い、団員の何人かの者達は笑いを抑えきれず、特に獣人のヴィダルなどは腹を抱え転げ回っている。

 その様子に、どんどんと落ち込み、顔面蒼白になっていくおっさんに団長である、アレクサンデルが話しかけてきた。




「大丈夫だよ! えっと… 確か名前は、コウと言ったかな? 俺達のギルド、『バシレウス』は弱者をけして見放しはしないからね! その為に俺達はギルドを作ったんだ! そうだろ? みんな!?」




 その団長の言葉に攻略組の団員達は、皆頷き、大声を上げ賛同する。

 この『バシレウス』は、元々差別を受けてきた者や戦争や災害で行く宛ての無くした者達の集まりなのだ…




『ダンジョンを攻略した者は、1つだけ何でも好きな願いを叶える事ができる』




 このギルド、『バシレウス』が叶えたいその願いとは、皆が理不尽な目に合わず、幸せに暮らせる国を作る事!

 彼らはその為に、命を懸けてダンジョンに挑む強者達なのだ。

 たかが、ハズレスキル1つで挫けるなと、レベルが上がればまたスキルストーンを使えるのだから…

  

 そして、アレクサンデルはおっさんを庇うように話を変える。




「そうだ! コウもミコシも俺達には馴染みの無い名前だけど… 意味なんてあるのかい?」




 それを聞いた御輿はあわあわとし、おっさんを見遣る… 

 だが、おっさんは御輿に優しく微笑み話しだす…




「俺の名前の(こう)は、ひかりって意味なんですよ… まあ、簡単に言うと【ライト】ですね… もしかしたら俺がこのスキルを得るのは運命だったのかもしれません…」




「そ、そっか… うん! その意気だ! 頑張ってレベルをあげような! コラ! ヴィダル! 笑い過ぎだ!」




 おっさんを励ます、団長のアレクサンデルをよそに、ヴィダルはひたすらに腹を抱えて笑い転げていた。




「な、名前からライトだってよ!! ヤバい、こいつ… 運命だってよ… 【ライト】が運命! ぶはぁ!?」




 イルヴァが笑い転げていたヴィダルの顔を踏みつける…




「ヴィダル… ダメっ… ライトもミコシもこれからいっぱい強くなるから」




 イルヴァは、おっさんを庇いながらヴィダルを踏み続けるのだが、御輿の名前は当たっている。

 しかし、おっさんの名前は、大泉 光のはずなのだ…




「おい… イルヴァ… 確か、この者の名前は、コウ オオイズミだぞ?」 




 副団長のペトロネッラは、イルヴァに問いただす。




「ん、ライトはライト… いつかこの『バシレウス』の希望の光になる子だから」




 そう言って、アラフォーおっさんの頭を優しく撫でてあげるイルヴァであった。

 


 

「ごめんなさい! コウ君! 私ばっかりいいスキルになっちゃって… 今度は私がコウくんを守るから!」

 



 御輿はギュッと、おっさんの両手を握り締めブンブン上下に降り続けるのだが、これがマズかった…


 アラフォーおっさんは、無愛想だが十分に美女に分類されるであろう女騎手に撫でられ、自分より20才以上若い女子高生に手を握り締められる経験などしたことなどないのだ…

 そもそも、こんな経験があるアラフォーの人間などいるわけがない。


 おっさんは直立不動で固まる…


 そして、御輿の両手を上下に振る振動で、何故かおっさんのスーツのズボンが足下に落ちていく…!?


 パンチラ…


 アラフォーおっさんの、なんの色気もないパンツが露わになって数秒が経過していく。


 両手を握り締められているおっさんはズボンを上げられずに、顔をひきつらせ、から笑いするしかなかった…




「なーに、やってるんですか!? コウ君がそんな変態さんだとは思いませんでしたよ?」




 御輿は、おっさんの手を握り潰し恐ろしい笑顔で詰め寄る。


 誤解を招きそうな状況だが、このおっさん、大泉 光は露出性癖がない事だけは断言しておこう。

 ましてや、痴漢などの前科なんてあるわけがない、ただの小心なおっさんなのだ…


 では、何故パンツ丸出しなのか…


 このおっさんは最近では運動もせず、仕事と家の往復だけの日々を送っており、加齢と運動不足からお腹が少しばかり出てきてしまっており、ベルトの穴の数は年々増え続け、最大になっていたのだが…


 何故か、現在それがブカブカで、ずり落ちてきてしまっているのだ。


 おっさんは何とか御輿から両手を解放してもらい、ズボンを急いで上げる!


 そして気づく。

 自分の体型がスリムになっている事を…




「身体が… 痩せてる…!? 違う? 若返ってるのかも!?」




 おっさんは自分の身体を触りまくり、その変貌ぶりに驚きを隠せない。

 その様子に、御輿は変な人でも見るように、ジト目でおっさんを見遣る。

『バシレウス』の面々も、自分の身体をベタベタ触り意味不明な行動をとっている、おっさんを見ながらクスクスと笑っていた。




「で、ライトよ… お前は何をやっているのだ?」




 既に大泉 光と言う名前を呼ぶ気もなくなるくらいに、ライトと言う二つ名が定着してしまったおっさんに話しかけてきたペトロネッラ。




「あ、あのですね… 不思議なんですけど… 俺、若いんです…」




「・・・・・・・・・・」




「うん? 何を言ってるのか解らんぞ?」




 そう言いながらペトロネッラは、おっさんの言っている事の意味の説明を御輿に求めた。




「私に意味を求められても… ねぇ、コウ君… 若い男子はいろいろ溜まって大変だって、お母さん言ってたけど… 今この場でハッスルするのはどうかと思うの…」




 御輿は顔を赤らめ、自分の身体を調べる為に、ほぼ半裸状態にまで肌蹴ているおっさんから距離をとり、イルヴァの背後に隠れながら優しく語り掛ける。




「み、ミコシさん! 違うんだ! 見てよ… 俺の身体… こんなに硬くなってるんだよ!」




 大泉 光という男の沽券に関わる事なので、もう1度だけ言っておこう…

 彼には露出性癖や性犯罪の類の経験はない! そもそも、女性経験が皆無の朴念仁なのだ…


 そんな、アラフォーおっさんに、イルヴァが静かに近づき、身体を弄い、目を見つめながら問いかける。




「うん カチカチだね ライトは… 何歳なの? わたしにはミコシと同い年くらいに見えるよ?」




 イルヴァの言葉におっさんは一瞬、固まり、ゆっくりと口を開く。




「えっと… 俺は39歳ですよ? 流石にミコシさんと同い年なんて…?」




「「「はぁーー!?」」」




 御輿を含め、『バシレウス』の団員達は呆けるのだった…








※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※








「あのライトって子… おっさんなりきり露出プレイだなんて… アブノーマルすぎるわ! あの歳で相当辛い目にあってきたのよ… ヴィダルも笑ってないで仲良くしてあげなさいな! 慈悲深き大母神・シャクティよ! 彼の者のアブノーマル過ぎる穢れを祓い、健全な性涯を送れますように…」




 このおかしなお祈りをしている女性は、『バシレウス』攻略組のヒーラーを務めているシスター・セシーリアと呼ばれていた… いや、自分でシスターを名乗っているのだ…


 彼女は獣人であるヴィダルの実の姉で、修道服はきているのだが、扇情的に着崩しており、シスターとは程遠い格好なのだ…

 しかも、たわわに実ったお胸様とモフモフの尻尾を携えた狐の獣人…


 この世界の回復系のスキルストーンは教会と呼ばれている宗教組織がほぼ独占しているのだが、彼女はその教会から破門された過去を持つ…




「おい、おい、あのライトとか言う小僧… お前のあの姉からアブノーマルとか言われておるぞ… 可哀想に…」




 攻略組の古参であるドワーフのドーグラスがシスター・セシーリアの弟、ヴィダルに話しかけた。




「あのライト… ウチの姉ちゃんに目を付けられた… なあ、ドーグラス、俺達はアイツに優しくしてやるか…」




「そうじゃな… 気の毒に…」




 そして誰が言い出したかは定かではないが、大泉 光に二つ名がついた。


『アブノーマル・ライト』と…


 レベル1で二つ名をつけられる者は少ない。

 だが、彼はやり遂げた… この世界に来たばかりで…

 不名誉な二つ名ではあるが…

 







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※








「ほら、これ見てくださいよ… ここの生年月日の所に19○○年て書いてあるでしょ… 俺は… ただのアラフォーのおっさんなんですって…」




 大泉 光は財布の中から免許証を取り出し見せていた。

 それを見た御輿は嘆く…




「本当だ… 19○○年て書いてある… えっ本当に39歳なの!? さっきも私のお母さんと同い年とか言ってたし… 冗談だと思ってた… でも、でも、この免許証の写真はコウ君と似てるけど違う人じゃない?」




 御輿は、大泉 光の免許証を見て、更に頭が混乱していた。




「本当なんだよ… そうだ! 俺はミコシさんと毎朝会ってたんだよ! ミコシさんはコンビニでバイトしてるでしょ? 俺はそこのお客さんです… 解らないかな…?」




 その言葉を聞いた御輿は、驚きながらも自分が接客した事があるお客さんを思い浮かべる。免許証の写真を見ながら…




「あっ! クルクル天然パーマの…」




「うん!うん!」




「いつも、おにぎりと野菜ジュース買ってく…」




「うん!うん!うん!」




「笑顔がぎこちない、幸薄そうな、おじさん!!」




「うっ…」




 どうやら現状、大泉 光と言うアラフォーおっさんは高校生くらいの年齢に若返ったらしいのだ。

 身体は高校生、中身はアラフォーおっさん… どこかの万能メガネをかけたちっこい名探偵とは大違いだが…




「それにしても、この免許証なる物は見事な造りだな! どうやら君達の世界はこの世界よりも技術が進んでいるようだ… 私にはライトが元々何歳だったのか知りうる術などないが… もし、ライトが若返っているならば、一緒にこの世界に来たミコシはどうなのだ? 身体の変化があったりするのか?」




 知識欲旺盛なペトロネッラは、(こう)の免許証を眺めながら御輿に浮かんだ疑問を投げかけた。




「えっ!? 私ですか? 変化… 変化…」




 御輿は、自分に飛び火するとは思いもよらず考え込んでいると、(こう)が思い出したように話しかけてきたのだ。




「そういえば! ミコシさん! 足首を挫いていませんでしたっけ!? 動けないくらい痛そうにしてたのに…」




「あっ!! そうだった! 私、酔っ払いのおじさんにぶつかられて、足首挫いてたんだ! って… あれ? ぜんぜん痛くないよ!? えー どうしてーー??」




 アラフォーおっさんは若返り、女子高生は怪我が治ってしまうこの現象… 考えても意味が解らず、そもそも異世界に来ている時点で理解できないのだ。


 いつまでも考え込んでいても仕方がないと『バシレウス』の団員達に連れられ大泉 光と牧野 御輿は、57階層、階層主の部屋を後にする。

 

 56階層にある『バシレウス』のベースキャンプ、そして地上への帰還を目指して…






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