11話 アラフォーおっさんと女子高生、ドロップアイテムとして億万長者への第一歩!
光は緊張しながらスマホの画面を見つめていた。ViewTubeの生配信で、史上初の「異世界アイテムオークション」が開催されようとしていた。
「皆さん、お待たせしました。本日は記念すべき第1回異世界オークションにお越しいただき、ありがとうございます」
御輿が司会進行を務めている。視聴者数は既に30万人を超えていた。
「今回出品するのは、【火球】のスキルストーンです。使用方法をご説明します」
光が画面に映った。
「スキルストーンは口に入れると溶けて、頭にそのスキルの情報が植え込まれます。その後、『ファイアボール』と唱えることで魔法が使えるようになります」
コメント欄が大荒れになった。
『口に入れるの?』
『安全性は?』
『副作用はないの?』
「安全性については、この世界では一般的な使用方法です。ただし、自己責任でお願いします」
光が慎重に説明した。
「それでは、オークション開始です。開始価格は100万円からです」
御輿が宣言すると、瞬く間に入札が始まった。
『150万』
『200万』
『500万』
『1000万』
価格の上昇が止まらない。
「現在の最高入札額は1000万円です」
『2000万』
『3000万』
『5000万』
光は信じられない光景を見ていた。
「5000万円...」
『1億円』
その瞬間、配信が一時的に止まるほどのコメントが殺到した。
『1億!?』
『マジかよ』
『金持ちすげえ』
「え、えーと...現在の最高入札額は1億円です」
御輿も動揺していた。
最終的に、1億2000万円で落札された。落札者は「田中」という名前だった。
「田中様、落札おめでとうございます。後ほど詳細についてご連絡いたします」
配信終了後、光と御輿は興奮状態だった。
「1億2000万円って...」
「信じられない。スキルストーン1個がこんな値段になるなんて」
しかし、光はすぐに次の課題を考えていた。
「でも、これで問題が一つ解決したね」
「どういう意味?」
「異世界のお金を日本円に換える方法だよ」
光が説明した。
「逆もしかりで、日本の商品を異世界で売れば、日本円を金貨に換えられる」
「なるほど!でも、何を売ればいいの?」
そこで、ペトロネッラに相談することにした。
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翌日、光と御輿はペトロネッラを訪ねた。
「日本の商品を異世界で売りたい?面白いアイデアだな」
ペトロネッラが興味深そうに聞いた。
「でも、何を売ればいいか分からなくて」
「それなら、貴族が欲しがるものがいいだろう」
ペトロネッラが考え込んでいる横でスマホをう操作し、日本の商品を見せる。
「これは… 凄い物ばかりだな! 貴族が喜ぶもの...宝飾品はどうだろうか」
「宝飾品?」
「実は、この世界では日本の宝石と違って、加工技術がまだ発展していないんだよ」
ペトロネッラがスマホの画面を見ながら詳しく説明してくれた。
「日本の宝石のカットや研磨技術による美しい形状と輝きは、こちらの貴族なら目の色を変えて欲しがるだろうな」
「なるほど...技術格差を利用するわけですね」
光が納得した。
「でも、宝石って高いですよね?」
「大丈夫。今回のオークションで得た資金があります」
御輿が自信満々に言った。
ペトロネッラが追加で情報をくれた。
「私から貴族御用達の商人を紹介することもできるぞ」
「ありがとうございます!」
光は感謝した。
その日の午後、田中氏との最初の取引が行われることになった。
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約束の時間に、光は【ライト】の転移魔法陣を発動させた。
『もしもし、田中です』
声の主は40代くらいの男性のようだった。
「こちら大泉 光です。本日はありがとうございます」
『こちらこそ。本当に魔法が使えるようになるんでしょうか?』
田中氏の声には期待と不安が混じっていた。
「はい。では、スキルストーンをお送りします」
光が転移魔法陣で【火球】のスキルストーンを転送した。
『おお...本当に石が現れました』
田中氏が驚嘆した。
「それを口に入れて、溶けるまで待ってください」
『分かりました...あ、味はしないんですね』
しばらく沈黙が続いた。
『すごい...頭の中に情報が流れ込んできます。ファイアボールの唱え方、魔力の流し方...』
「成功ですね。では、実際に使ってみてください。ただし、安全な場所で」
『分かりました。庭に出ます』
数分後、田中氏の興奮した声が聞こえてきた。
『出ました!本物の火の球が手から出ました!』
「おめでとうございます。これで田中さんも魔法使いです」
『信じられない...本当に魔法が使えるようになった』
取引終了後、田中氏は約束通り魔法を使う動画をSNSに投稿した。
会社経営者として知名度のあった田中氏の投稿は、瞬く間に拡散された。
『本物の魔法だ』
『CG技術じゃない』
『世界が変わる』
『次のオークションはいつ?』
メディアも注目し始めた。テレビ各局が特集を組み、専門家たちが議論を交わした。
「これで魔法の実在性が証明されたね」
御輿が満足そうに言った。
「次はこちらの商売の番だ」
光が決意を込めて言った。
その日の夜、光は姉の香織に電話をかけた。
「姉ちゃん、お疲れさま」
『光?最近テレビでよく見るけど、何してるの?』
「実は、お姉ちゃんにお願いがあるんだ」
光が事情を説明すると、香織は驚いた。
『宝石を買って転送?面白そうね』
「危険な仕事じゃないから、安心して」
『分かった。協力するわ』
翌日、香織は光から送られた資金で宝石店を回った。ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイア...様々な宝石を1000万円分購入した。
「こんなに高級な宝石を買うなんて、人生初の経験だわ」
香織がスマホに報告してきた。
「お疲れさま。それじゃあ、転送するよ」
光が宝石類を受け取ると、その美しさに息を呑んだ。
「すごい...こんなに綺麗に加工されてるんだ」
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翌日、ペトロネッラの紹介で高級商人のマルクスと会うことになった。
「ペトロネッラ様からお話を伺いました。珍しい宝石をお持ちとか」
マルクスは50代の紳士的な男性だった。
「はい。日本という遠い国から持参しました」
光が宝石を見せると、マルクスの目が輝いた。
「これは...なんという美しさ。このカットは一体どのように?」
「我々の国では、古くから伝わる特殊な加工技術があります」
光が説明した。
「特に、この光の屈折は見事ですね。貴族の皆様が喜ばれることでしょう」
マルクスが各宝石を丁寧に鑑定していく。
「全体で、金貨1000枚でお買い取りさせていただきます」
「1000枚!」
光は驚いた。1000万円が金貨1000枚になるということは、10倍の価値になったことを意味する。
「少ないでしょうか?実はもう少し上乗せも...」
「いえいえ、十分です」
光が慌てて答えた。
取引成立後、光は興奮していた。
「10倍の利益...これはすごいビジネスだ」
御輿も驚いていた。
「技術格差ってこんなに価値を生むのね」
その夜、二人は今後の計画を立てていた。
「これで資金ができたね」
「うん。スキルストーンをたくさん買えるし、より多くの人に魔法を届けられる」
光が目を輝かせた。
「でも、供給量を急激に増やすと価格が下がるかも」
「そうね。需要と供給のバランスを考えないと」
御輿が慎重に分析した。
「月に10個くらいのペースで販売していこうか」
「それがいいと思う。希少価値も保てるし」
翌朝、アレクサンデルがやってきた。
「君たちの商売、大成功だったらしいな」
「はい。おかげさまで」
「うちのギルドとしても誇らしいよ。世界初の異世界商人だからね」
アレクサンデルが笑った。
「それで、58階層攻略の件だが...」
「はい、参加させていただきます」
光が即答した。
「商売も軌道に乗ったし、今度は冒険者としても成長したいです」
「頼もしいことだ。明日から準備に入る」
その日の午後、光は一人で考えていた。
『1億円のスキルストーン、10倍の利益を生む宝石取引...まるで夢のようだ』
しかし、これは現実だった。異世界と現実世界を結ぶビジネスが、想像以上の成功を収めていた。
『両親を楽にしてあげることもできるかもしれない』
光の心に、深い感謝の気持ちが湧いてきた。
「ミコシさんのおかげだ。あの配信がなければ、こんなことは実現しなかった」
窓の外を見ると、御輿が庭で【鳳凰】の練習をしていた。美しいフェニックスの姿で空を舞う彼女を見て、光は改めて思った。
『この世界に来て、本当に良かった』
夕食の時間、バシレウスギルドのメンバーが集まった。
「異世界商人として有名人になってるじゃない」
「照れますね」
光が苦笑いした。
「でも、これで終わりじゃない」
イルヴァが真剣な表情で言った。
「58階層攻略も、商売も、両方頑張る」
「はい。どちらも大切ですから」
光が決意を込めて答えた。
その夜、光は星空を見上げながら考えていた。
『異世界に来て、思いもよらない人生が始まった。魔法、冒険、商売、そして...』
御輿の姿が頭に浮かんだ。
『大切な仲間たち』
明日からまた新しい挑戦が始まる。58階層攻略という危険な冒険と、両世界を結ぶ商売の拡大。
『頑張ろう。みんなのために、そして自分のために』
光は新たな決意とともに、眠りについた。




