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伯父は物凄く何か言いたそうにしていたけれど、すでに由月の方がいろいろな意味で上になっていた。
そして僕はと言うと、教師を続けていた。
「約束違反だ、雅貴」
「人聞きの悪いこと、言わないでくれよ。若い教員が僕1人しかいないのに、いきなり辞めるわけにはいかないだろう」
由月の部屋で、僕は彼に恨めしげな顔をされていた。
「…分かった。なら他の所から若いのを引き抜いてくる。大金を積めばいくらでも来るだろう」
「由月、それ悪者のセリフ…」
由月は僕が教師を辞めないことに、不満を持っていた。
でも僕だって、25になって無職は嫌だった。
「まあ教師は辞めてもらうとして」
ぎくっ★
「逆転のことは、実現させてもらうぞ」
やっやっぱり話はそっちにいくのか。
ぐいっと手を引かれ、由月の腕の中に捕らわれた。
「ずっと待ってたんだからな」
「あはは…。執念深いね、由月」
「小学一年のオレに、一目惚れし続けたお前が言うことか?」
ああ、それを言われると…。
「あっ、ねぇ、ずっと聞きたかったことがあるんだけど」
「何だよ?」
「由月はいつから僕のこと、好きになってくれたの?」