54/56
7
「まあな。でも大学を卒業するまでは探してみようかと思ってる。だからそれまでは待っててくれよ」
「あっあのねぇ」
いろいろと言いたいことはあったけど、自信ありげな彼の顔を見ていると、何にも言えなくなってしまう。
良い笑顔するようになったな。
僕はため息をついた。
「じゃあそれまでは、半人前だね」
だから僕も笑って見せる。
「まっ、それはしょうがないな。見つかるまでは、何を言っても半人前だし」
「物分りが良くなって嬉しいよ」
「抜かせ」
僕は由月を畳の上に押し倒した。
「すぐに逆転してやるからな」
「ははっ、楽しみにしているよ」
僕はファイルを置いて、由月の頭を撫でた。
…見つからない…とは思う。
けど、もしかしたらという思いもある。
由月なら、成し遂げそうなのが怖い。
そしてその時、逆転されるのも…いろんな意味で怖かった。
けれどそれから3年後、由月は本当に見つけてしまった。
温泉と金を。
おかげで村は大変賑わい、由月は有名人となった。
そして温泉と金を発見したことを盾にして、二番目のお姉さんに後継者の座を本当に譲り渡してしまった。