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ぐっと歯を噛み締め、僕は言い続けた。
「教師になれば、赴任先をこの土地の学校に選ぶよ。何が何でもここへ来る。だから四年間は…我慢するしかないんだ」
「そんなっ…! 勝手過ぎる。オレに何1つ相談せずに、一人で勝手に決めて…」
「うん、勝手なのは分かってる。でも由月に相談しても、反対されるのは分かってたから」
由月が息を飲む。
「会えなくなるのはたった四年間だ。大学を卒業すれば、必ず僕はここへ来る。待ってて…くれないか?」
「じゃあ四年間、オレはずっと1人かよ?」
「…僕の両親はここへ来るよ。後継者問題に対して、発言力は低いだろうけど、由月の味方をしてくれる」
「でもっ…」
「電話やメールで話もできる。だから、待っててくれないか?」
由月が何か言いそうになっても、僕は遮り意志を伝えた。
しばらく、重い沈黙が続く。
由月は顔を伏せたまま、唇を噛み締め、両手をきつく握っていた。
必死に耐えているのが、伝わってくる。
「…オレが…そっちへ行っちゃダメか?」
やがて吐き出された言葉は、とても現実味を帯びていなかった。
「それはムリだと、由月自身が分かっているだろう?」