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それを分かっている由月は、僕よりよっぽど大人だ。
「雅貴が側にいてくれれば良いのに…」
「ごほっ!」
ご飯が変なところに入った!
慌ててお茶を飲んで流すも、僕は別の意味で驚いていた。
由月が弱音を吐いた。
今まで頼ることをほとんどしなかった由月が…。
それは嬉しいけれど、同時に罪悪感もあった。
だって僕は側にいるどころか、離れようとしている。
「なあ、雅貴はこっちに来れないのか?」
「ぼっ僕はまだ高校生だし…。それに進路のこともあるから、今動くわけにはいかないんだ」
「そっか…。ゴメン、変なこと言った」
「ううん」
彼が言い出した原因は、何となく分かる。
後継者問題について、彼には身内に味方がいない。
伯父は後継者にしたい派だし、伯母もきっと心の中ではそう思っている。
従姉達は自分が引き継ぎたい気持ちを持つ人がいれば、伯父が由月を特別扱いすることを良く思っていない人もいる。
幼い2人の弟妹には、まだ難し過ぎる。
味方と断言できる存在がいないからこそ、まだ小学1年生の時から家族と距離を取ってしまっているのだ。
そのことを聞いて、僕の両親が動いたわけだけど…。