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「別にいいよ。まだここへ来たばかりの頃は、母さんと伯父さんの方がやり合っていたから」
血気盛んな一族だ。
気まずそうに俯いている彼に、そろそろ言わなくちゃいけない。
4年間、会いに来れないことを…。
「あの、さ。由月に改まって言わなくちゃいけないことがあるんだ」
「ん?」
何も分かっていない顔をされると、胸が痛む。
「えっと…夜に話したい。ちょっと重くなると思うから」
「あっああ、分かった」
「うん、ありがとう」
その時、僕は彼の顔を見れなくなっていた。
「…あっ、母さんだ」
由月が襖の方を向いた。
「由月、雅貴くん、いる?」
「いる」
「あっ、いるよ」
伯母は襖を開き、不安そうな顔を見せた。
「雅貴くん、来てくれたのに嫌な場面を見せてゴメンなさいね」
「いっいや、母さんと伯父さんの方が激しかったから」
「ふふっ、そうね。あと由月」
由月は伯母に呼ばれ、びくっと肩を揺らしたけれど、顔は背けたままだった。
そんな様子を見て、伯母は仕方無いというように困り顔でため息をついた。
「父さんにはわたしから言っておくわ。でもあなたも少しは反省してね」
「…分かった」