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約束の夏休み
そうして一年はあっと言う間に過ぎて、僕は高校二年の夏を迎えた。
そろそろ進路のことを、本格的に決めなきゃいけない。
だけど1つ大きな悩みがあった。
教師になる為に行きたい大学が、近くにはなかった。
電車で片道2時間、それだったら家を出た方が良いのではと両親に言われた。
幸いにも父方の実家が大学の側にあったので、下宿しないかと祖父母が誘ってくれた。
下宿するのは良い。祖父母は僕を可愛がってくれるし、大学も家から歩いて10分と理想的な距離だ。
でも…彼の、由月の家からは遠ざかってしまう。
それに教員免許を取る為には、必死に勉強をしなければならない。
あとバイトもしなければ…。いつまでも両親に甘えてはいられない。
結局、その大学に進むしかないのだけど、それは彼と少なくとも4年間は会えないことを意味していた。
「由月…」
由月の写メを見ながら、ため息をついた。
進路のことは、由月にも相談できない。
自分自身で決めなくてはいけないことだ。
それに…由月は僕と会えなくなることを、どう思うだろう?
寂しく、思ってくれるのだろうか?