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「キレイだな」
「うん」
思わず彼の方を向いてしまって、…僕はその姿に眼を見開いた。
キラキラと輝く瞳に、まだ幼さの残る顔。
群青色の浴衣から出ている細い手足、首から胸元に視線を向けてしまう。
「っ!?」
花火が上がるたびに、彼にもたくさんの色がふりかかる。
花火よりも、彼の方が幻想的に見えて、とてもキレイだった。
だからか視線が彼から外せなかった。
「…ん? どうかしたか?」
僕の視線に気付き、由月はこっちを見た。
「いやっ、あの…」
何か言い訳をしないといけないのに、僕の眼は彼から動かせない。
すると由月まで、僕を見つめてきた。
時が…止まった気がした。
そっと、由月が顔を寄せる。
だけど僕は少し後ろに引いた。
けれど腕を捕まれ、体が固まった。
そのまま彼は再び顔を寄せてきたので、僕は眼を閉じた。
「んっ…」
唇に、柔らかな感触。
見なくても分かる。
彼の…由月の唇だ。
花火の音より、心臓の鼓動がうるさいぐらいに体の中で響いた。
由月の熱くて甘い唇は、しばらくして離れた。
「…ゴメン」
「何で雅貴が謝るんだよ?」
「何となく…」