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「いいよ。どのぐらい、宿題出た?」
後は他愛の無い話に移った。
どうも…彼と恋愛話はしたくなかった。
由月は田舎にいる人としては珍しく、キレイな顔立ちをしていた。
このまま成長すれば、男女関係なく人気が出るだろう。
中学に入ると、少し友人が出来たらしい。
メールでそれを知った時、胸が痛んだ。
でも夏休みに会いに行けば、彼は僕を歓迎してくれる。
変わらない接し方が嬉しくも、どこか悲しいと感じるのは何でだろう?
疑問を胸に抱きながらも、由月とは笑顔で話をする。
彼も笑ってくれる。
この瞬間は確かに幸せなハズなのに…。
「…ん?」
「どうかした? 由月」
「母さんだ」
そう言って立ち上がり、由月は襖を開けた。
「由月、雅貴くん、お夕飯ができたわよ」
「分かった」
「今行くよ」
2人で台所へ行き、お膳を持って部屋に戻る。
これは6年間、変わらなかった。
「相変わらず家族とは一緒にご飯食べないの?」
「気が向いたら食べる」
お姉さん達や伯父とはまだ少し、問題があるらしい。
けれど伯母や弟妹の手前、気を使い、できるだけ一緒にいるようにしているみたいだ。




