21/56
21
そう言って由月はゆっくり起き上がった。
「来年の夏休み、絶対にウチに来る?」
不安げに揺れる眼で、僕を見る。
「もっもちろんだよ! 両親を説得してでも、必ず来るから」
「そっか…。なら良い」
そう言った彼は、少し微笑んでいた。
「あっ、そうだ。ケータイ持ってる?」
「うっうん」
両親が共働きで側にいてくれることが少ないので、携帯電話は持たされていた。
「ちょっと貸して」
「うん、どうぞ」
由月は僕の携帯電話を受け取ると、素早く操作した。
「―よし。オレのケータイ番号とメアド、それにパソコンのメアドも入れといたから」
「あっありがとう」
手馴れているなぁ。
パソコンもそうだけど、彼は機械に強いみたいだ。
「オレは基本的にヒマだから、いつでも連絡して」
「うん! 必ずするよ!」
「じゃあ、約束」
由月は小指を立てて出した。
「うん、約束。必ず連絡するよ」
僕は自分の小指を絡ませた。
そして彼を部屋に残して、僕は邸を出た。
絶対に来年も彼に会いに来ようと、心に決めて。




