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「まっまあ男の子にしては、少し伸びているわよ。だから夏休み前に、髪を切りましょうって言ったのに」
伯母がフォローのつもりで言った。
「それに名前だって何だか女の子っぽいし、ウチの両親もちゃん付けで呼んでたし…」
「えっ、だって…」
「幼い甥っ子ですもの。小さい子にはちゃん付けしてしまうのが、大人の悪いクセと言うか…」
さすがの両親も、どこか視線が虚ろだ。
フォローする言葉を、必死に探しているのがバレバレ!
「名前は親父が勝手に名付けたんだ! 浴衣はおふくろが作った!」
あっああ、ご両親の愛情だったんだ…。
でもどっちの要素も、女の子のイメージしか浮かびません(涙)!
「まっまあまあ。落ち着きなさい、由月。子供のうちは性別が分かりにくいことなんて、いくらでもある。現に雅子だってお前ぐらいの歳の頃には、しょっちゅう男の子に間違えられてたんだぞ?」
「そう言う雅月兄さんは、高校生になるまで女の子に間違えられていたわね」
「おまっ、それを今ここで言うか!?」
…ああ、嫌な血の受け継ぎ方だなぁ。
どうやら由月は物の見事に、伯父の血を濃く受け継いだらしい。