日常のゆううつ
金曜日、午後六時二十分。
相変わらず池袋駅は人でごった返している。
スマートフォンを片手に難しい顔をしながら改札を抜けるサラリーマン、他者にぶつかっても何事もなかったかのように彼氏に甘える女の子、ゆっくりとベビーカーを押す女性、そのどれもが別次元に存在しているようだ。
これだけ大勢の人で溢れているのにもかかわらず、孤立している。
一人ひとりが余りにも周囲との関係を断絶しているからだろう。
やはり都会は苦手だ。人間らしさがない。
向かって来る人を、すれ違う人を、透明人間のように扱い、上手くすり抜け、自分の世界だけを守っている。
そんな日常に苛立ちを覚える自分だって、結局はしっかりその中の一人だ。
やりきれない思いを抱える私は多感なだけなのだろうか。
勢いよくパスケースを取り出し改札をくぐり抜けると一段飛ばしで階段を上がった。
電車に駆け込んだ瞬間にタイミングよくドアが閉まる。
右端の座席に座っていた男子高校生がOLの肩にもたれて眠っている。
OLは、まるで一週間洗っていない雑巾を見るような目で少年を見ては、肩を数回上下に揺らし不機嫌そうにした。
何でもない顔をして、車内のこもった空気を小さく吸っては吐いた。
嫌なことに目がついてしまうのは、きっと自分が嫌な奴だからだ。
私、疲れてるなぁ。電車の窓に浮かび上がった自分の顔に思わずぎょっとする。
くたびれた輪郭、黒いクマ、力のない目。
きっとこれから、素晴らしい出来事が起きるから。
根拠の無い確信をほのかに抱き、口元を締める。
いつまでも引きずっていてはいけない。
ここで生きるには他人への関心を捨てなければならない。
ほつれてきた髪をかきあげ、自宅へ全力で自転車を走らせた。
大丈夫、まだやっていける。




