試験官の正体
しかし、当然ながら周りの不合格者から批判の嵐だ。次第に人だかりが出来てきた。
「なぜよ。なぜホウキを浮かせられなかった彼女が合格で、浮かせた私が不合格なのよ」
「はー。おかしいじゃない。私の方が優れているわよ。ほら見て、ホウキを浮かせて飛ぶぐらい出来るわ。あの子は浮きもしなかったじゃない」
「あの子が合格なら私も合格よ。試験をやり直しなさい」
不合格者の女の子たちは涙ながら抗議していた。すると私に合格を出した試験官が口を開いた。
「ふん。これだからあなたたちは不合格なのよ。全く、これが持つ者持たざる者の違いね。全く。あの子は私を満足させた唯一人物。他のあなたたちには感じることがなかった可能性を持っているわ」
シーンと周りは黙る。すると一人の不合格者の女の子から抗議の声があがる。
「なによ。偉そうに、ただの試験官じゃない。なにを感じたというのよ。私はなにも感じなかったわ。これ以上偉そうな態度をとるようだと私のお父様に言いつけてやる。王都で軍を率いている偉い人よ。それが嫌なら試験をやり直しなさい」
周りも同調して声があがる。しかし、その試験官は微動だにしていない。
「あたしのお母様も立派な王都の魔女だわ。言いつけてやる」
声も大きくなり、収集がつかなくなるその瞬間、試験官が口を開いた。
「うっさいわね。このあまちゃんちびっこどもが。いちいち聞いてりゃ、試験やり直せやお父様、お母様に言ってやるなど、それだからお前らは選ばれないんだよ。
この試験は己の試験だろが。そんなことも理解してないのかよ。クソガキが」
とんがり帽子を机に置き、試験官の口調も荒くなる。そして、みるみるうちに試験官の整った顔が鬼の表情になってくる。
「ふん、分かったわ。もう合否が決定したから言うけど、私はただの試験官じゃないの。数多ある地位のうち、魔女界の中でもトップの地位を持つここの校長、ジャル・ダルクよ」
周りの批判は止み、次は今までとは違うさわざわとした声が周辺から聞こえてくる。
「クソガキどもめ。これだからガキは嫌いなのよ」
校長と名乗ったダルクは一息吐いた。すると周辺の木や屋根がざわめき始めた。
「あれよ、あれよ。我がもとに集いたまえ。言霊の魂よ。精神なる幼い心に集え。万里万象の時きたれ、弱きものは去れ。この終焉の時が今始まる。この時を私は待ち望んでいたのだ。大地よ、海よ、聖霊よ、今この試験を閉幕する。アンダーコントロール!!!!」
ダルクが唱えた瞬間、ざわめきは一瞬に収まりかえった。そして、今まで感情をあらわにしていた女の子たちは無気力になっている。
「そうよ。貴方たちは私のお人形さん。さあ、元居た場所にお帰りなさい」
そうダルクが告げると城内の試験会場にいた女の子たちはぞろぞろと帰っていった。
ただ者ではないようだ。このような者が王都、いや人間の味方をしているとはな。ふん、魔王(私)の手には及ばないがな。
「さあ、行きましょう。貴方には今からやってもらいたいことがあるの。合格者はみんな待っているから。私があなたを案内するのだから光栄に思いなさい」
ダルクは私の手を握り、合格者がいる室内まで案内してくれた。




