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強気な試験官

 私は次第に焦ってきた。あと2人か。大丈夫だろう。しかし、まだ列は半分以上ある。まだ……。


 私の希望をよそに、横の列から歓声が起こった。合格者が出たようだ。

なんだと、なぜこの列は前に進まん。なぜ。なぜだ。


私は額に脂汗を垂らす。手には汗でびっしょりだ。その時、一つのアナウンスが流れてくる。



『あ、あ、マイクテスト。マイクテスト。よし。報告があります。もうすでに4つの席が埋まってしまったようです。意外と優秀な方が多かったようですねぇ。えーと、あと一人が決まったらもう締め切りますので頑張ってください。運も実力のうちだぴょう』



くそがぁぁぁぁああ。なぜ進まない。私はチラリと横を見て確認すると、トイレの看板が見えた。

私は絶望した。唇を噛み、拳をぎゅっと握ってしまった。なぜここに別の違う列が出来ている。くそ、並びなおしだ。頼むから間に合ってくれ。

 偶然にも周りに比べたら、比較的開いている列を見かけた。しかも列が空くのも早い。


私は即座にその列に並んだ。手は汗でびっしょりだ。私の悪運ラックに期待するしかない。



 私の番があと3人ほどになった。するとなぜ列が早く空くのか、その理由が即座にわかった。



「あなた全然ダメね。センス無いわ。不合格よ」



「な、ホウキならば浮いているじゃない。この合否は無効よ」



「ただ浮いただけじゃない。それにあなたには私が目を輝かすような魔力は持ってないわ」



 その強気な試験官は見るからに魔女の姿をしている。黒いローブに黒系のつばの広い三角帽子(とんがり帽子)を着ている。見た目は16~18歳前後だ。

とんがり帽子を取ると、襟足を見せるように髪の毛を束ね、後頭部で髪をまとめているスタイルをしていた。結構顔も整い、何もしなくても男が寄ってきそうな雰囲気を出している。



「次の人どうぞ。……。はい、不合格。次、不合格。……」



 私の番になった。試験官の顔を見るとため息を吐いているのがわかる。



「次、あなた名前は?」



「私の名前は渚だ。」



「ふーん、そう。あなたも私を失望させないでほしいものね。期待はしてないけど」



その試験官は肘掛けに腕を置いて手で頭を支えていた。そして足を組んで座っていた。

試験官はもうすでにこの試験に飽きているようだ。



「一応先に言っておくけど、ホウキを浮かしただけじゃダメだからね。私が満足するほどの魔力を持っていないと合格は出さないから」



 私は、ホウキの前に立つ。そして唱えた。「ミステリアスチャーム」

すると一瞬、空が暗くなり木が震えだした。そう一瞬だけ。しかしホウキは浮くことはなく、私は突っ立ったままだ。



「あれ、おかしいな。ちょっと待ってくれ。もう一回チャンスを……」



 試験官は立ち上がった。そして、腕組みをしながら私のところに向かい、私に話しかけた。



「チャンス?なんであんたにそんなものあげないといけないの。だって時間の無駄だもの。」



私は、ゴクリと唾を飲んだ。やっぱり不合格か。くそったれ、あの勇者を恨むしかない。



「合格よ。喜びなさい。あなたは私を満足させてくれた唯一の人物よ。誇りを持ちなさい。人数?もし先に合格者がいるのならばそれを取り消してあなたを採用するわ」



私は唖然とした。口が開いている。一見見たら魔王らしからぬ表情だっただろう。

まさかの一言に私は笑みを浮かべた。

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