プロローグ2
この姿になって5年ほど経過した。幸いにも意識がしっかりしているのもあってか、自ら考えて行動できるようになっている。
家族の人からはいつも驚いた表情で見られていたが。
ちなみに今、ここの世界は、私が眠りについたとされる時から5年ほど立っているらしい。
おかしい。私は眠りについたはずなのだが。私の技が原因ではなかったのか?
それにしても、今私は鏡の前にいる。幸いにも顔は整い色白だ。髪型はここの夫婦の趣味かわからないが、マニシュ系ショートレイヤーボブに切られている。髪色は紫色だ。
今までロングっぽい感じだったので短い髪型には、不思議な感じがある。
まさにそう、今まであったものがないって感覚だな。下に関してもそうだが。
今現在、私をかくまってくれている夫婦は裕福層だったみたいだ。食事は3食でるし、欲しいといったものは何でも届けてくれる。それが私にとってメリットの部分だ。
しかし、メリットがあるのだからデメリットの部分もある……。
「渚ちゃん~。今日はこのフリフリの衣装きましょうね~」
「いやいや、今日はこのワンピースだよ。ね、渚ちゃん!!」
私は毎日、朝昼晩と衣装を着せられて、写真を撮らされていた。
その時の私の目は死んだ魚のようだった。
私は仮に元魔王様だぞ。力が戻ったらお前らなんぞ……。
「笑顔を見せてね。渚ちゃん」
「笑顔、笑顔。天使だよ。渚ちゃん」
撮影用のカメラで夫婦は、衣装を着た私を撮る。私は不自然な笑顔を見せ。
「お母様、お父様、大ちゅき。」
この夫婦の魔法だ。強制魔法らしい。本当にストレスだ。力が戻ったら、まず一番にグーパンチだ。
私からしたらデメリットの方は非常に多い気がする。以前までの魔王様生活が懐かしく思えてくる。
しかし、その屈辱的な行為を受け入れているには理由がある。そう私は腐っていても元魔王様だ。このタダでは居座るつもりはない。
ここに居座るだけで情報が手に入るからだ。最初のうちは途方に暮れていた。
動くことも喋ることもできずに、ずっと寝ることしかできなかったのだから。
ある時、ここの夫婦が話していた内容を聞いてしまったのだ。いや、聞こえてしまった。
それは、赤ん坊になってから3日目の夜のことだ。
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「勇者様が魔王を打ち取ったらしいぞ」
「そうなの?これで安心して外に出られるわ」
ここにいるけどな。ってか私は勇者に負けたのか?知らぬ間に敗北だと、何たる屈辱。
「いや、それが魔王が眠りにつく前に、呪いをかけたらしい。その呪いで魔王の体と心を引き離したと王様は言っていた。勇者様自身、今詳細は不明らしいが、近々帰ってくるだろう。我々のヒーローなのだからな」
「うん。そうね。この世界を救ったのですもの。ヒーローですわ。王都の最上階に祀られている鏡も無事でよかったわ」
私に呪いだと?今まさに、体と心を引き離したとあの夫婦は言った。
もしかして禁句魔法である、入れ替わりの技を使ったのか?そんな高度な技術をもった奴などこの世界に存在していたとは。
私が最後に出した技が原因でないと知るとホッとため息が出た。
しかし、私は妙なことが頭によぎった。私の中に入っている者は一体誰なのだ?
まさか、この赤ん坊の持ち主ではないだろうな。いや、それはない。私の魔力は自分で言ってもなんだが、桁違いの魔力の量だ。赤ん坊の魂など入った瞬間、浄化してしまうだろう。
考えられるのは、誰も入ることが出来ず抜け殻状態になっている可能性がある。
「……、早く助けないとな」
ボソッと私は夫婦の見ていないところで喋った。
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しかし、それ以外の重要な情報は耳にしていない。
私は次の重要な情報を手に入れるために、耳を常に気にかけている。
すると今朝、起きた瞬間に不思議な体験をする。




