機械人の王カイゼルギアと大苦戦
お待たせしました!
忙しくてなかなか筆が進みません!
本当にごめんなさい。
フギンとムニンの役割変えました。
説明は次回。
「つっかれたぁ!」
最上階、ボス部屋の手前のセーフゾーンでギースは手足を投げ出して大の字に寝ころがる。
「なんなんですお……殺意高すぎですお……」
隣ではへたり込んだヤヨイがモンフーによしよしされていた。
「嫌らしい罠ばっかりでホント嫌になったぜ」
流石のジーナも堪えたらしく胡坐をかいて両手を後ろにつけ、天を仰ぐ。
『お疲れ様ねぇ』
「水あるよー」
ローズとサルビアは比較的元気である。
理由は単純で人型形態での機動力に難があるサルビアは基本的にモンフーが担いでいた。
ローズに至っては落とし穴も奈落フロアもすべて無視できるので戦闘に集中していればいい。
サルビア以外の全員が本気でズルいと思ったとか思わなかったとか。
「二層の通路はマジでヤバかった……」
「三層の振り子ゾーンも鬼畜でしたお……」
「アタシはあの無限湧きの四層がしんどかったぜ……」
二層はほぼほぼ直線通路なのは変わらないのだが誰かが通ると作動するモーションセンサー式の罠がひどい。
通路の床、天井、左右の壁あらゆるところから槍が飛び出てくるのだ。
「二層は二度とやりたくねぇ……」
作動した罠は数秒のクールタイムで再び作動するようになるのでモンフーに突撃させてからだとよほど早く駆け抜けないといけない。
ヤヨイはモンフーが突撃していった後をジーナにしがみついて攻略。
サルビアもヤヨイが到達した後モンフーとジーナを引き返させて同じく攻略。
ローズはメタモルフォーゼ「霧」の物理無効を使って難なく通過。
問題はギースだった。
ギースの重量ではジーナも最高速を維持することができないため漢解除が使えない。
当然霧になったりもできない。
ではどうやって潜り抜けたか。
実はこのギミックには安全地帯がある。
だが決まったポーズしか隙間がないので槍が飛び出る前に安全なポーズを取り、槍が引っ込んだすきに次の安全地帯ポーズの場所まで走るを繰り返すのだ。
「自分は三層には二度と脚を踏み入れたくないですお……」
三層は巨大な振り子の上にのって先に進むフロア。
ココではギースの鞭が大活躍してまるでインディ・なんちゃらのようにサルビアを抱えたままギースは次々に突破していった。
しかも振り子じゃないところを。
ジーナも一層の歯車ゾーンで分かったと思うがこの手の不安定な足場は苦手ではない。
ローズはフリットで問題なしだ、やはりズルい。
問題はヤヨイだ。
モンフーは狭い足場では十全に力を発揮することができない弱点があった。
モンフーに乗り移って本体を抱える方法をとったのだが、歯車よりも不安定で弱い振り子はなんとモンフーの踏み込みにたえることが出来なかったのだ。
ギース&サルビアの重量ですら耐えられた振り子だが、モンフー&ヤヨイの重量と踏み込みには耐えれなかった様子。
次の振り子に移る際、いつもの癖で強く踏み込んだのが仇となり、振り子が折れて奈落に落ちかけたのだ。
一層でも同じような状況はあったが今回は本体ごとだ。
幸い最後だったので他のメンバーに迷惑は掛からなかった。
乗り移ろうとするたびに次々と振り子が壊れ、最後の最後で跳躍に失敗。
本体を全力でぶん投げてギースが鞭で縛り上げるという荒業を使い何とかクリアしたが、ギースが居なければ死に戻っていたのは間違いない。
彼女は「足場の弱いところは嫌いですお」、と嘆いた。
ちなみになぜヤヨイがサルビアと同じ方法を取らなかったかというと、このフロアは一度突破した人間は戻れないようになっている。
戻れないだけで先ほど言ったような鞭などの武器を使ったサポートは出来る。
単純に動けるやつが何度も往復という二層のような事が出来ないのだ。
「四層の無限湧きはローズが気づかなかったら終わってたなぁ」
三層とは逆に四層は武力押し。
只管雑魚敵が湧いてくるが、その数が尋常ではない。
一度モビーディックのシークレットイベントで似たような経験をしていたローズは途中で仕掛けを解除するか破壊しないと終わらないのでは? という事に気づき、一人フロア内を駆けずり回っていたのだ。
ここではやっとお荷物だったサルビアも活躍出来てご満悦であったが、ローズが抜けた為に戦闘狂と名高いジーナが一人前衛として戦っていた。
モンフーは本体とサルビアの護衛だ。
ギース? 嫌がらせ特化の彼が大ぜいを相手取るのは難しいだろう。
殆どダメージが通らないのだから。
そういうわけでローズがギミックを壊すまで一人最前線を張っていたジーナは流石にうんざりしてしまったというわけだ。
「何にせよ全員無事で突破できたからよかったよ」
「回復アイテムはほとんどなくなったけどな」
「私とジーナは使わないからなぁ」
「太陽も効かないからたまに吸血鬼って忘れるお」
「効かないわけじゃないんだけどね」
「アタシはこのローブがないと普通に痛いぞ?」
『私が回復に回りましょうか?』
「いや、サルビアさんは攻撃の方に魔力消費することが多いからそれもなぁ……」
夜人族以外の面々は純粋なヒーラーが欲しいと思い始めた。
ギース:デバッファー(?)
サルビア:メイジ兼ヒーラー
ジーナ:ヘビィファイター
ローズ:ライトファイター
ヤヨイ:バッファー兼ファイター(モンフー)
改めて考えてみると物凄く攻撃に特化したパーティだ。
折角クランを持っているのだからこの機会に純粋ヒーラーを入れてみるのも良いかもしれない。
戻ったら知り合いに声をかけてみようとギースとヤヨイは思った。
そも聖女たるジーナが前衛というのがおかしな話なのだが皆それに慣れてしまって疑問にすら思っていない。
実際夜人族になった時点で回復魔術は失われているからどっちみち無理だが。
閑話休題。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
一通り回復を終え、大休憩を取った一行は豪奢な扉の前に立っていた。
「何故ボス部屋はこう豪華な扉なのだろうか」
「ここからボス! ってわかりやすくするためですかお?」
「昔やったゲームだと質素な扉を開けたらいきなりボスってのあったな」
「それはえぐいお」
「普通に通路だと思ったから回復も何もしてなくて死に戻ったなぁ」
「なんでもいいから行こうぜ」
ギースとヤヨイが良くわからない話で盛り上がりかけたのをジーナが止める。
「すまんすまん」
「いつでもいいお」
「じゃあ開けるよー」
ゴゴン! と音を立てて扉が開く。
中は謁見の間と言った風の造りになっており、奥の方では甲冑に身を包んだものが剣を杖にして椅子に座っていた。
「あれが……」
「機械人の王カイゼルギア……」
シェイドとは違い、いかにも武人と言った風体のカイゼルギア。
中に入り込むとお約束のごとく扉が閉まった。
【ギ、ギギ、ハイジョ、スル】
なにやら得体のしれないうめき声のようなものを上げてカイゼルギアがゆらりと立ち上がる。
「ああ、完全にいかれてやがるな」
「早く治してあげないと可哀そうだお」
「先ずは倒す事だったな、行くぜローズ」
「うん!」
『私も頑張るわぁ』
カイゼルギアが完全に構える。
それが合図になった。
「来るぜ!」
奴から何かが駆動する高音域の音がする。
「甲冑かと思ったらあれもギミックアーマーか!」
「流石機械人族だねっ! あぶな!!」
カイゼルギアの背中から赤い光が見えたかと思うと爆音を轟かせて突進してくる。
咄嗟に霧になって回避するローズ。
「フリットだったらかすってたかも……」
身体ごと来るので面積が大きい。
故にメタモルフォーゼと同じ発動速度のフリットであったなら躱しきれない可能性があった。
突進を躱されたカイゼルギアはギャリギャリと足元から音を立てながら地面を滑り、こちらに向き直りつつ速度を殺す。
同時に再び突進前の音が聞こえてきた。
「かなり厄介な王様だぜこりゃ」
眼で追えなくは無いが、ローズ以外の面子が発動してから動けば間違いなく食らうだろう。
音が聞こえ始めた段階で回避動作に移るギース。
幸いなのは予備動作がそれなりに大きく、発動が容易に察知できる点だ。
「こっちに誘い込め! アタシが止める!」
ジーナが全員にそう通達する。
「手伝いますお!」
「そんならうまくジーナが止めたらサルビアは今打てる最大の水魔術を背中にぶっかけてやれ! 機械なら水でショートするかもしれん!」
『了解よぉ!』
三度駆動音が聞こえ始める。
狙われているのはサルビアだ。
「マズイ! サルビアの機動力だと躱しきれんぞ!」
「ちっ! 間に合えええ! 巨石砕きぃぃ!」
「モンフー!!! 爆打豪掌拳!」
『阿!!!』
ジーナの脚とモンフーの拳がギリギリでカイゼルギアを止めることに成功した。
彼の持つ剣の切っ先がサルビアの心臓部にわずかに触れそうになっている。
「よっしゃ、バインドウィップからの独楽回し!」
ギースは相手に巻き付けた鞭を独楽回しの要領で勢いよく引っ張る。
この技は回転させることで平衡感覚を麻痺させ、強制的に背後を向かせる技だ。
カイゼルギアは間抜けにもその場でクルクルと回転し、サルビアに背中を向ける形で停止した。
「今だ!」
『っ!! あ、アクアバースト!』
あわや即死寸前のところだったサルビアはギースの叫びで我を取り戻し、魔術を発動させる。
これまでの経験が生きた形だ。
ジェット水流のごとく激しい水の奔流がカイゼルギアの背中に当たると狙い通り漏電が起きたようで煙を吹き出し、行動不能の判定が出た。
「おっしゃ!」
「ヤヨイ! ローズ! 畳みかけんぞ!」
「りょーかいだお!」
アタッカー三人組が全力で攻撃をしかけ、カイゼルギアの体力が4分の1ほど削れる。
その段階で行動不能の状態異常が無くなったので三人は距離を取る。
「あの背中じゃブーストダッシュは出来ないよね?」
「たぶん?」
「待て、様子がおかしいぞ」
いつぞやのシェイドのように使えなくなった部分を切り離すカイゼルギア。
使えない装備を外すことでわずかに通常の速度も向上したようだがあのブーストを見た後では大した違いは感じない。
しかし、闘いやすくなったというには早計である。
「剣も捨てた?」
カランと音を立てて剣が床に落ちる。
その両の手は筒状の部分が付いたガントレットに変化していた。
「これって?」
「来るぞ!!」
よくよく見ればグリーブ部分も微妙に変化しており、今度は足元が爆発した。
その爆発を推進力に変え、見た目にそぐわない速度でサルビアへと近づく。
「マズイ! ヘイトがまだサルビアに残ってる!」
「任せろ! うらぁぁぁ!!」
繰り出してきた拳をジーナの脚が受け止める。
だが、その瞬間カイゼルギアの拳が爆発する。
「うぐぁ!」
「ジーナ!?」
勢いが完全に死んだ足に直接爆撃を食らった形だ。
LPこそまったく減っていないがHPはかなり持っていかれた。
部位欠損していないのが奇跡と言える。
「そういう武器かよっ! させねぇ!!」
さらに執拗にサルビアを攻撃しようとしたところを大体のタイミングを掴んだギースが投げナイフでジャミングする。
『助かったわぁ』
「ナイスですお! モンフー」
『阿!』
怯んだタイミングですかさず水面蹴りを放つモンフー。
転がったところで足を踏みつけ、固定するとモビーディック戦でも見せた乱打が繰り出される。
「移動し始めるととんでもないですお、でもこうなったらこっちのもんですお!」
だが、初見の上にモビーディックの時のように護衛がいるわけでもないヤヨイは簡易指示での発動で保険をかけている。
これなら思わぬ反撃でもフィードバックは少なめで済むからだ。
「すまねぇ待たせた! そりゃあ!」
LPを犠牲に治癒力を高め、足を治したジーナが参戦する。
モンフーのフィニッシュに合わせて大跳躍からの急降下キックだ。
ボスとはいえこれで大ダメージを負わない相手はそうそういない。
それこそモビーディッククラスでない限りは。
ズズンと衝撃が走り、床がクレーター状に陥没する。
普通に考えたら階下に落ちてしまいそうだがそうならない。
ボスフィールドという特殊空間万歳だ。
カイゼルギアのHPは。
「4分の2! あと半分!!」
「硬ぇなオイ! さっきと同じと考えるとまたパターンが変わるかもしれん、みんな離れて警戒しろ!」
ギースの指示で攻撃組が距離を取る。
するとやはりというべきかカイゼルギアは両手足のパーツをパージして起き上がった。
【ギ、ギギ……ハイジョ、スル! カアアアア!!】
カイゼルギアの身体が発光し、その鎧が金色へと染まっていく。
その背中には青いマントをはためかせて。
「金の鎧に青マント? まさか……」
【フギンユニット、ムギンユニットテンカイ!!】
両肩部分がガチャリと開き、そこから一対のビットが飛び出してきた。
いつの間にか先ほど落とした剣を握りしめ、こちらに対して悠然と構える。
「フギンとムニン!? こいつは……こいつの鎧は!」
【シンキヘイソウ「オーディン」ノチカラ、トクトミヨ!!】
先ほどのようなバーニアを使ったダッシュとは違う。
単純な膂力によるもの。
その速度はそれよりもやや劣る程度。
だが、推進力を使った移動とは自由度が違う。
地面が抉れるほどの膂力でカイゼルギアが突っ込んできた。
「ぐあ!」
「ギース!!」
完全に回避したと思ったギースの胸に深々と剣が突き刺さる。
ギリギリで致命傷は避けたものの物凄い勢いでLPが減っていき、状態異常気絶になりながら壁際へと吹き飛ばされた。
「じょ、じょーだんじゃねーお!! モンフー、捕まえて動きを止めるお!!」
『阿!!』
「ローズ! 援護を!」
「うん! サルビアさんは魔術でけん制をお願い!」
『了解よぉ!』
「自分はギースの回復に回るお!」
「頼んだ!」
各々が自分に出来る最大の行動をとる。
ローズは細かく攻撃を重ね、相手を自由に攻撃させないように。
ジーナはモンフーと共にカイゼルギアの脚を止めにかかる。
サルビアはいつでも魔術が放てるように詠唱を開始した。
【ムダダ!】
カイゼルギアのそばをじっと漂っていたフギンユニットが動き出す。
ローズの攻撃に合わせて障壁を張り、一手分の防御を稼ぐとそのまま持っていた剣を薙ぎ払うように振りぬく。
それをローズは再び霧になって躱すと即座に実体化して足止めに戻る。
だが。
【イマノデオボエタ】
カイゼルギアは不穏な言葉を放った。
「ヤヨイ、まだ!?」
「気絶がぬけねーお! あとちょっと待つお!」
この状況下においてボスですら怯ませるギースのアクションジャミングは間違いなく必要だ。
システムの穴をつくコレはたとえ邪龍であろうと決まるだろう。
それをこなせるのは彼のみ。
この戦いはギースが戦線復帰するか否かに命運がかけられた。
王様強すぎね?
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