決着化け鯨! そして異常事態。
気分転換していたら他の作家さんの作品にのめり込むという無限ループ。
月一更新みたいになっています。
もっと更新速度上げないとと感じつつ筆が進まない。
というか書いては納得いかず消しての繰り返し。
お待たせしました。
尋常ではない衝撃が船全体を襲い、船内に逃げ込んだ面々は各々が何かに掴まって振動が治まるのを待つしかない。
『頭! 船の損傷が8割を超えやした!!』
『野郎ども、修理を急げ! 姐さん! あと一撃食らえばおしまいですぜ!』
船員の骸骨から被害状況を聞いたキャプテンが支持を飛ばし、ローズに伝える。
「みんな、総力戦だよ!」
「「「「「おー!!」」」」」
『皆さん、急いでぇ! 迎撃しないと沈むわぁ!』
一人海の中に避難したサルビアからフレンド通話が届く。
仕留めきれなかったモビーディックはそのまま体当たりをするべく接近をしてきているようだ。
外にでるともはや激突まで幾ばくも時間は無い。
どんな攻撃だろうと一撃で沈む。
ここまで追い詰めておきながら敗北&やり直しは悔しいというよりも面倒だ。
「やらせるかよ!!」
ギースのバリスタがモビーディックの目に突き刺さる。
それでひるむ相手ではない。
「手の空いてる奴は残った拘束バリスタをありったけぶち込め!」
当たれば最大で約1分は拘束状態になるアイテム。
一本では役に立たなくても残った弾をすべて打ち込めば最大拘束はギリギリ可能だろう。
「ほっほー! いくでおじゃるよー、麻呂分身かーらーのー麻呂連打でおじゃ!」
10人に分裂した麻呂が一斉にモビーディックに飛び乗り、高速で拳を繰り出す。
「麻ー呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂麻呂!!
DE・おじゃぁぁぁぁぁぁぁぁる!!」
モンフーの乱打とまではいかないがかなりの速度で放たれる拳撃。
その最後の一撃まで余すことなく打ち込んだ麻呂は分身がすべて掻き消え、残心なのかビタリと静止した。
「……硬いでおじゃるっぅぅうう!!」
わけではなかった……。
「ばっかお前、無理すんな! 大人しくこっちでバリスタ撃ってろボケ!」
ギースのあきれにも似た叱責が飛ぶ。
「だって、憧れでおじゃる! 男の子ならジョ〇ョとか北〇の拳みたくやってみたいでおじゃる!」
「今やんなくてもいいだろが! お前どっちかってーと俺よりのトリックスタータイプじゃねぇか!!」
「左様!!」
「威張んな! バリスタ撃てコノヤロウ!」
ギースは自分を良く知っている。
攻撃スキルを取ったり攻撃力を強化すればトップに食い込めるのも知っている。
だが、それでは空しかった。
以前の廃人だったころに発揮していた強力すぎるPSは周りとの隔絶を生んだ。
周りの人間はもう此奴一人でいいんじゃねぇの? と距離を置く。
昔はそれでもよかった。
孤独から始めたゲームを突き詰めて孤独に磨きをかけていたことに気づき、彼は最前線を去った。
今はその無駄に高いPSをすべてサポートにつぎ込んでいる。
ソロでやる道もあった。
でも彼は誰かと協力する道を選んだのだ。
「あーさん!!」
「わかってるよ。ほれ、一撃一撃は弱くとも合わされば最強に見える。
食らうがよい、疾風怒濤のナイフ連打!!」
たとえ1ダメージでも1000発当てれば1000ダメージ。
子供でもわかる単純計算。
もはや投げている手先が見えないほどの高速ナイフ投げ。
ボタンに擦れて爪が薄くなるほどに連打した懐かしの0距離ナイフ。
件のゲームにおいて、攻略をみれば全武器中最速をマークするこの技はRTAを主とするプレイヤーたちにとって必須の技術だった……かどうかは定かではない。
バリスタ一発が約500ダメージと仮定する。
次弾を装填し、二発目を発射するまでに大体10秒のロスが発生するのだが、あーさんのナイフ連打はその10秒でゆうに1000発を超える数を放つことができるのだ。
「相変わらず馬鹿みてえな連射だなそれ……どうやってんだ?」
「それは企業秘密じゃ! そーれそれそれそれー! モビーディックよ、おぬしは確かに強い! だが圧倒的に足りてないものがある、お前に足りないものは、それは! 速度・小回り・器用さ・防御・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!! ロマンが足りない!!」
「ロマンはいらねぇ! てかあの図体に速度や小回りなんか求めんな! クジラに気品とかマジでいらんわ!」
「いーや、ロマンは大事だぜ!」
軽快にナイフを投げ続けるあーさんの頭上から声がかかる。
「何奴!」
「へ、なんだかんだと聞かれたら……」
「答えてやるのが世の情けですお!」
「ジーナ殿、それにヤヨイ殿まで」
「ロマンというか信念だな、こだわりっていうのか? それは何よりも力になる!」
「一撃必殺に勝るロマンは無しですお!」
「その通りだぜ。いくぜ、ヤヨイ!」
「ガッテン承知の助ですお!」
ヤヨイはモンフーに転身するために安全な場所まで後退する。
ジーナは普通に助走距離だ。
「てかお前らふざけ過ぎだ!」
突っ込みつつもバリスタの手を止めない辺りはさすがギースである。
「「知ったことか! (ですお!)」」
体術を使う上にどちらかというと一撃の重さに比重を置いているヤヨイ。
力こそが正義という脳筋元聖女のジーナ。
この二人がこうなることは半ば決まっていたのかもしれない。
「食らえ、ついさっき考えて相談すること10秒で編み出した合体技!」
「転身!」『いきますお、ジーナ!! 紫電掌』
紫電掌とは、その場でぐるぐると腕を高速回転させ、その中心にできた静電気を掌打で打ち込む技である。
「螺旋猛進脚!!」
本来なら助走を使って貫通力を上げる螺旋猛進脚。
だが、彼女は紫電掌の中心に身体を預け、ヤヨイの手によってその場で高速回転する。
「『おおおおおおおお!!』」
バチバチと静電気とは思えないほどの音を立て、大気を震わせる勢いで回転するジーナ。
「やれー! ヤヨイいいいい!!」
『はいいいいいい!!』
「『螺旋紫電脚!!』」
チュイン! という音が聞こえた瞬間にジーナの身体はモビーディックに到達していた。
夜人族で初めて生身での音速を超えた瞬間だ。
吸血鬼の丈夫な身体でなくては実現しなかったこの技は再現しようにもできない。
何故ならヤヨイとジーナの二人が持つオリジナルアーツがあってこそ可能だったからだ。
ついでに言うなら日が傾いてジーナのステータスが変わっていたのも条件の一つである。
「つーらーぬーけぇぇぇぇぇ!!」
ギャリギャリと硬い外皮を削りながら、みじんも回転がおさまらない。
やがて、爪先が僅かに内側に食い込むと、それを皮切りに――ぎゃぼぉ! という音を響かせてあの巨体を反対側まで突き抜けた。
「なんて威力……ですわ……」
あの巨大なモビーディックに文字通り穴を空けた。
これが思いついてから10秒で完成した技でとは到底理解できないだろう。
もし正直に答えても「はぁ?」という答えが返ってくるはずだ。
実際に見ていたメンバーですら信じられないのだから。
「ですが、これはチャンスですわ! ワタクシもバリスタでは少々物足りなかったですもの」
反対が見える穴はダンジョンではないようだ。
普通の生物の身体かどうかは分からないが、あの謎空間でないのならパルミラもやりようはある。
「さあ、蹂躙なさい!」
蛇腹剣の刃全てを穴の中に飛び込ませる。
細かい制御なんて必要は無い。
ただ只管に内側から食い破るだけだ。
『ギャオオオオオオオオン!!』
身体に穴をあけられ、内部から蹂躙され、未だにバリスタによって串刺しにされ続けるモビーディック。
拘束がとけたモビーディックはたまらず海中へと逃げ出そうとするが。
「行かせないわよぉ! メイルシュトローム!!」
直接のダメージはモビーディックにとって微々たるもの。
だが、瀕死の身体で大渦に巻き込まれた奴は身動きが取れなくなる。
「今よぉ!」
「やれ!」
「いくでおじゃる!」
「止めはまかせたお!」
「一番おいしいところを譲って差し上げるのです、外したら承知しませんわ!」
「容赦するな!」
「決めろ、ローズ!!」
渦に飲まれて頭が持ち上がっているモビーディック。
その鼻先に奴からすれば羽虫の如きサイズの人物がとびかかってくる。
いつの間にかチェインを稼ぎ、最大まで攻撃力を上げたローズだ。
「今なら出来る気がする! いくよ、「魔透暗拳殺」!!」
それはいつかのランハクが見せてくれた内部破壊の奥義。
以前に放ったのは未完成品であった。
だが、今放つこの奥義は。
――キャド!!
拳が頭に突き刺さる。
一瞬の静寂。
やがて訪れる衝撃、そして破壊。
頭部が内側から破裂し、連鎖するように尾の方まで伝わる。
ドラクロワ流のなかでも破壊に特化した奥義がついに表舞台によみがえった。
『グギャァァァァァァァァアアアア!!』
キラキラと輝く光に変わっていくモビーディック。
その巨体が徐々に崩れて消えていくその様は壮大で儚く、そして美しかった。
全員がその光景に見とれている。
いつしか空の雲は晴れ、おだやかな海原へと変わっていた。
「……や……やったわぁ!!」
「うおおおお、マジでレイド級をこのメンバーでやっちまったよ!」
ギースの言い分も尤も。
どちらかと言えば遊撃要因しかいないようなメンバーだ。
回復役もタンクもいないこのメンツでよく勝てたと思う。
「夢ではおじゃらんか!?」
「安心なさい、ちゃんとドロップアイテムも入ってますわ!」
「わしもまさか勝てるとはおもわなんだ」
「ひゃっほーだおー!」
「やったぜローズ! ……ローズ?」
ジーナが止めを刺したローズに声をかけて彼女を見る。
そこには倒れ伏すローズの姿があった。
「おい、どうしたローズ!」
その声を聴き、サルビアが異常を感じ取って即座に人化して近づいてくる。
『……呼吸が荒い……いけない!』
突如痙攣したかと思うとそのままぐったりと力が抜けてしまった。
気絶したのかと勘違いするがそうではない。
『強制的にログアウトしたわ……急いで町に向かってください!』
その表情は人魚のサルビアではなく看護師の登紀子だった。
以前瀕死だったローズの時を覚えているだろうか。
この世界はログアウトしても体は残る。
その間に殺されることもあるのでPKできないエリアに設定されている宿や、野営中なら結界付きのテントでログアウトが推奨されている。
「なあ、ローズは……ローズはどうなってんだよ! サルビア!!」
『今はまだわからないわ、町に着いたら私とローズさんを運んでください。私も今から向こうの様子を見てきます』
そういってサルビアも糸の切れた人形のように倒れ込む。
残された面々はただただローズの安否を気遣う事しかできなかった……。
次回で第二部が終わります。
やっとだよ。
お読みくださった皆様に感謝!




