対決! 海魔レヴィアタン
人数多いと大変です……。
『グルァアアアアアアア!!』
「く!」
「え?」
「きゃ!」
「すまん! 言うのが遅れた!」
ギースが咆哮を食らった味方に謝罪を言うが多分聞こえていない。
ちなみに食らったのはセオリーを知らないローズ、ジーナ、サルビアの三人組。
ローズとサルビアはゲーム馴れなんかしてないし、ジーナはここまで強大な相手と戦ったことなどない。
大概この手の魔物は戦闘開始時に示威行為として咆哮をかます。
咆哮は音の攻撃なので地上も水中もお構いなしで対策してない相手を一時的な行動不能に陥らせる。
とは言ってもソロでなければこれでおしまいな事にはならない。
その証拠に。
「行くぞリウ!」
「おう!!」
「「気導拳!!」」
「風よ、射線を確保して! ゲイルアロー!!」
「吹きすさぶ風よ、刃となり敵を斬り割け! ウィンドカッター!」
「闇よ、道を阻むモノを蹂躙する力を。付与:ダークウェポン! オーケーオーケーよしやれ、アヤ! ノゾミはダークランス!」
『『おぉおおおおぉん!』』
遠距離組が出来るだけ水中での威力減退しない技を選んでレヴィアタンに放つ。
だが、やはり地上とは比べることは出来ないほどやりにくそうだ。
大したダメージは当然見込めない。
『ぐぎゃおおおお!』
しかし、怒りは買ったようだ。
レヴィアタンが大きく息を吸うような動作を見せる。
ブレスの予兆だ。
サイドスローで振りかぶるような首の角度を見る限りは薙ぎ払うつもりらしい。
「そんな大技やらせる訳ねえだろが! おらぁ!!」
なんとか近寄ったゴドーが腹と思しき場所に斬撃を叩きこむ。
「うーん、水中は動きにくくて一撃がやっぱり浅いおね。モンフー、揚炮だお!!」
『阿!!』
地上であったなら地面が砕けてるであろうほどの踏み込みから斜め上に向けて拳が突き上げられる。
水中であることを忘れるような衝撃がレヴィアタンの身体を僅かにずらし、ブレスを中断させることに成功する。
だが、レヴィアタンもただではやられない。
うっとおしい蠅でも払うかのように近くに居たゴドー、モンフーに向けて尾を振り回す。
ゴドーは刀を盾にして衝撃に逆らわぬよう身体を水に預け、二回転程回ったが体勢を立て直す。
モンフーは吹き飛ばされたがもとより体力などない。
ヤヨイは即座に自分の側に召喚しなおす。
「戦いにくいが、戦えないほどじゃねえな」
攻撃を受けた感じからゴドーがつぶやく。
偶然近くに居たゲニスもそれに同意した。
「ええ、そうですねぇ。それと、やはり接近戦の方が攻撃の通りは良さそうですね」
「ごめんなさい……、弓だとどうしても牽制以上の効果は見込めないの……」
「オーケーオーケー、仕方ないよ。俺様のアヤの攻撃が通ってないよ」
近接組の距離が離れ、遠距離組と近づいたタイミングでアメリアが補助魔法を飛ばして来た。
「清廉なる水よ、我らを守る盾となれ、戦神よ、我らに力を貸し与えよ。水の衣、戦いの狼煙!」
「二重詠唱!? 魔人聖少女様はどんだけスキルレベル上げてんだぁ?」
シマが驚愕の声をあげる。
実際声に出していないだけでギースとローズとサルビア以外の面子は驚いている。
ギースはメギドの実力を知っている、あとの二人はどれだけ凄いのか純粋にわかってない。
――二重詠唱。
ダブルスペル、一節の初級魔術を二つ同時に行使できるスキル。
習得するには並列思考と高速詠唱の二つのスキルを習得していることが条件。
また、二つ同時に行使できるが消費魔力が単純に倍ではなく一割増しになるデメリットもある。
「ごめんなさい、初めにかけれれば良かったのですが」
アメリアは申し訳なさそうに言うが、咆哮で戦線が崩れそうな状況下では悠長にバフをかけてはいられない。
それをわかっているからこそ非難は聞こえない。
「いや、俺はダメージソース無いけどさ。嫌がらせに留めれば頑張れるけどさ、早く援護してくんねえか?」
ギースが悲痛な声をあげる。
見ればお荷物が咆哮から立ち直ってすぐの状態だ。
立ち位置的にはレヴィアタンが誰よりも近い。
それに故にタゲが行かないように一人前に出て嫌がらせをしているのだ。
「す、すまん!」
シェイドが慌てて援護に向かおうというところをヤヨイが止める。
「ギースさんもうちょい粘れるかお?」
「ああ!? まあ、今ならやろうと思えば30分は行けるが」
「そんなに要らないお! 皆聞くお!」
この状況下で何があったのか。
ギースは出来る子なので多分凌げるが、長く掛かっては彼が怒る。
「ゴドーさんとウチのモンフーが一当てしたときの感想なんだお」
あの二発で何か気づいたという。
「水の抵抗で思うように技の威力が乗らないのはゴドーさん達も実感したおね」
「ああ」
ヤヨイはあの時ダメージ量を見ていたらしい。
ゴドーの攻撃が普段どれだけ当たるかは知らないが。
バ火力と言われている男の一撃だ、弱い筈が無い。
それが大したダメージにならなかった。
対してモンフーの一撃は若干の減退はあったが防御力などの乱数と考えれば許容範囲。
つまり。
「近接、それも内部破壊系の技が効果的だお! 魔術は威力がデカければ多分大丈夫だお」
「なるほどね、ウチはナタリエが主力か」
「うぬ、それならば我らは……」
「俺と蒙鬼だな」
「わ、私たちも大丈夫だよ」
やっと復活したローズたちが会話に参加する。
「ギース、待たせたお!! 方針が決まったお!!」
まず盾職たちがナタリエを守る。
内部破壊が使えないアタッカーは出来るだけ魔術職の囮になる為に前に出るがあくまで囮。
魔法職は本命を悟らせないための弾幕作り。
出来た道を使って本命のメンバーが全力で内部破壊技をかますというものだ。
「わかった、ちょっと休ませてもらっていいか?」
「助かったお」
ギースを戦線から離脱させて準備に入る。
「ナタリエ! 行けるか!?」
「バッチリよ、弱点も補ったしね」
弱点、それはいつぞやの記憶。
アメリアとシェイドが全力でガードを張ってやっと凌げたあの悪夢。
何のことかわかってる一部の人間は少しだけ苦い顔をした。
それを知ってか知らずか「いくわよー」と軽い感じで詠唱に入るナタリエ。
「鉄壁さんよ、がんばろうや」
「同じ機械人、絶対守りましょう」
機械人の二人がこつんと拳を合わせた時、背後に居たナタリエが歌うように詠唱を開始する。
『風は火に力を与え、水は土に活力を与え、光は歓喜の朝を産み、闇は静寂の夜を創る。廻る廻る、命は廻る。恵む自然の歓喜を抱いて。廻る廻る、因果は廻る。夜の帳の静寂聞いて』
「せ、積層魔法陣? システムではあるのは知ってましたが使える人初めて見ましたよ……」
ゲニスが牽制の手を緩めてまでその幻想的な陣の輝きを見てしまう。
『天の理日と風を唱和せよ、地の理土と月を唱和せよ、人の理火と水を唱和せよ』
三つめの魔法陣が重なった時、それを補佐するようにさらに三つの小型魔法陣が出現する。
『四属陰陽死と再生! おお神よ、我らに加護と祝福を!!』
たった一言。
たった一言の言葉が全員を守る障壁を作り出す。
いろいろ詠唱をいじくっていたらしいが、結局これが一番安定したらしい。
全く以て皮肉だ。
『熾天使の歌声!!』
頭上から破滅の光が襲い掛かる。
屈折率だのなんだのお構いなしでターゲットとなったレヴィアタンを無数の光線が引き裂いて行く。
小型のレーザーのような光は前哨戦にすぎず、本命はこの後。
蜘蛛の森を焼き払った悪夢の一撃が降りそそぎ、祭壇内の水を一瞬とは言え蒸発させてしまう。
だが、何かの効果が働いているのか直ぐに水没した。
((((もうこいつだけでいいんじゃないかな?))))
何人かはそう思った。
事実この魔術は実装されても居ない段階でレイドを想定して作られているのでその威力もお墨付き。
当然使用魔力もお墨付きであって。
「ちょっと離脱するわよ……」
前回のように気絶まではいかないが魔力は枯渇寸前だ、一時的に下げて回復させなくてはならない。
そして。
「大魔術で怯んでる今だお! モンフー、崩拳!!」
『阿!!』
「絶・閃獄掌!!」
「烈・昇漸拳!!」
「魔透暗拳殺(未完成)!!」
何故未完成かというと相手の魔力を乱せずに通すだけという、ちょっと強力な技なので奥義と呼べない。
それぞれが最大威力と思しき内部破壊技をレヴィアタンに叩き込む。
『グギャァアアアアア』
視覚でもはっきりわかる程にダメージを受けている。
だが、それで倒れるほどレヴィアタンは甘くない。
ギラギラと赤い輝きを宿した眼は怒りに満ち溢れ、なんとしてでも殺してやると訴えてくる。
とぐろを巻くように身体を丸めたレヴィアタン。
はた目には苛烈な攻撃によって防御姿勢に入ったようにも見えるが?
「硬直切れてるならはなれろおおおお!」
遠目で見ていた為にその行動の意図を理解したギースが叫ぶ。
その声を聞いて攻撃組は離れようと行動を開始するが、僅かに相手の方が早い。
まるで自身が大渦になったかのように高速で回転。
勢いの付いた尾びれや刃のように鋭い背びれが近接組を蹂躙していく。
それは徐々に範囲を広げていき、後衛組をも範囲に収める。
カバーに入った盾組はなんとか魔術師たちを守るが、強烈な一撃は甚大な被害をもたらした。
加速がつき始めた段階の前衛たちは最大威力ではないにしろ少なくないダメージを負い。
加速が十分に着いた段階で受けた後衛組は魔術師を除いて全員が一時的な行動不能。
つまり昏倒してしまった。
戦線が崩壊する。
防御する術を持たない魔術組は狙われればひとたまりもない。
一瞬敗北がちらついた。
倒れ伏す敵を見据え、勝ち誇ったような唸りをあげるレヴィアタン。
もはや邪魔するものは居ない。
悠々と気兼ねなくブレスをチャージする。
だが、それは悪手。
強者が故の傲慢。
油断するという思考が果たして組まれているかは不明だが、ここにきて姿の見えない二人が動き出した。
「正直水がなければもっとスマートにやれたんだゼ、スラッシュネイル!!」
今の今まで気配を消して潜んでいたガロウがレヴィアタンの目に爪を突き立て、一気に横に引き裂く。
「尤もである。しかし、ここで大技に頼るのは馬鹿であるな、食らうである」
唐突に訪れた激痛に文字通り大口を開けているレヴィアタン。
そこへファンブルが何やら投げ入れた。
「さて、そのままでは意味が無いであるからな……ゴト師のサイコロ……」
呟いたファンブルの手の中に10面ダイスが2つ出現した。
ざわ・・・ざわ・・・という効果音付きで。
「貴様の運はどれほどであるかな? 『3以下は抵抗失敗で効果が凶悪になる』」
ひょいとかるい感じで放り投げる。
彼の持つスキル詐欺師のサイコロ。
これは投げる前に条件を決めて彼の持つ薬の効果をいじくる技である。
普段彼が使うのは2d6。
目の数が少ないので条件が比較的緩く設定可能だが効果もそれなりにしか無い。
だが、今回使ったのは2d10。
こっちは出目が多い分自分に不利な条件を掲示すればするほど効果が爆上げされるもの。
そして今回の条件は10面ダイス2個で3以下の出目であれば抵抗失敗。
レヴィアタンに投与したのは毒。
本来ボスに毒などは効かないのだが、これを使えば……。
「0-3で3であるな、致命的な失敗である。毒は猛毒になり、確率麻痺の異常が追加されて確定で侵される……くく……3%を引くとは運が悪いであるなぁ……吾輩の運が強かったようである」
ものスゴク邪悪な笑みを浮かべている。
狂乱は伊達ではないというところだろうか。
ちなみに確率麻痺とは攻撃の際に必ず一回判定が起き、抵抗に失敗すると攻撃を行えないという代物。
継続麻痺と比べれば効果時間は長いが、抵抗に成功するとそのまま攻撃が来るので過信できない状態異常の一つ。
「こ、このタイミングでギャンブルするとは……だが、助かった。ファンブル」
いち早く立ち上がったゴドーが礼を言う。
そうこうして居る間にガロウがせっせと周囲をめぐり昏倒を回復させ、アメリアが必死に魔術で体力回復させている。
普段のファンブルはスピードを生かして戦場を駆け抜け、衝撃で爆発する薬と毒をまき散らす。
彼が暴れた後にはペンペン草一本生えないと言われるほどだ。
だが、これは雑魚戦や大群相手の戦い方。
ボス戦ではアサシンスタイルに切り替えることがある。
狩猟を主とする獣人族という設定が気配を殺す術を容易くしているのだ。
今回のような足が使えないフィールドなんかはその典型であり、彼の持つスキルは運の要素にかなり依存するが本来状態異常にかからない、かかりにくいボスに破格の効果をもたらすときがある。
今のレヴィアタンを見れば効果は自ずと理解できるだろう。
正にイカサマというにふさわしい程の効果。
博打であることには変わりないので失敗したら目も当てられないのだが、彼はここ一番で外したことが無い。
何かしらのゴト行為をしているらしいが本人曰く「ばれなきゃイカサマじゃないのである」だそうだ。
相手の体力は後半分、かかった事のない状態異常はレヴィアタンの挙動に焦りを生み出した。
そして戦いは後半戦を迎える。
ちょっとした追記。
付けエラの取得方法あれこれ。
付けエラは本編のようなイベント以外では二つの方法で手に入れられる。
一つはシーパラディスの闇屋に行って30万Nで購入、超ぼったくり価格。
一つはサブイベントをこなす。
本編で語る気は無いのでサブイベの解説
ローズたちが行った洞窟の湖で陸上の生活にあこがれた人魚と遭遇し、お願いを叶える。
人化が苦手なので人化の方法を見つけるのだが、最も簡単な方法はあやしい露店の人化薬を買う。
ただし、これは偽物で劇薬の為、人魚は死んでしまう。⇒特殊素材「人魚のエラ」入手。⇒加工して付けエラに。
若干難易度が高いがシーパラディスのとある場所に居る錬金術師から材料を聞き出し、素材を集めて人化試薬を作る⇒試薬故に人化して戻れなくなる⇒代わりにサブマリンの魔術を習得した元人魚の(戻れなくした責任を取れと強制的に)フレンド登録、以後仲間として同行可能。
難易度が一番高いが、錬金術師から聞いたレア素材を集めて人化の術を補助するアクセサリーを作る⇒王城には行けないが魚人の街に自由に入れるようになるのでそこで格安で購入。
一人分なら後味最悪だが偽の薬が一番楽。
複数欲しいなら闇屋に大量に金を積むか頑張ってアクセを作るのが正道。
仲間枠を圧迫するが、結構可愛いので人化試薬を用意する人が大半だったりするのは余談。
ちなみにサブマリンの魔術は一度の使用で30分水中呼吸が出来る。




