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authentic world online  作者: 江上 那智
広がる世界
38/51

海の街と狭間

久しぶりの連日投稿。

筆の滑りが良いうちに話をすすめよう……。

読み返して間違いをセルフ発見し修正。

シュナイダー⇒シュタイナー。

誰だお前ってなりました。

「うみだー!」


「ローズは海は初めてか?」


「うん!」


「へー、ローズなら何処でも行きそうだけどな。っていうアタシも初めてなんだけどな」


『凄く澄んでて綺麗な海ですねぇ』


「ここはSUSI(スシ)がおいしいですお、あっちの世界に負けないですお」

一行は現在海に来ている。

正確には海洋都市シーパラディス。

ここにはある目的があって来たのだ。

その目的とは。


~ ~ ~ ~ ~

『水没したダンジョンって攻略者居るの?』


『ん? あそこはある魔術か魔道具を手に入れないといけないぜ』


『ってことは誰も攻略してないってわけか』


『ある魔道具ってなんですか?』


『ああ、確か「付けエラ」ってアイテムだったか? 二層の南にあるシーパラディスって街で手に入るって聞いたな』


『魔術だとどうなの?』


『ダンジョンがどれだけ深いか正確に不明なんだ、魔力が尽きたら溺れ死ぬ可能性があるから俺はお勧めしないぜ? ちなみに「サブマリン」だったか? 潜水艦とは身も蓋もないわな』


『そんなら道具がいいな』


『んじゃいっちょ行ってみるか?』


『『『さんせー』』』


~ ~ ~ ~ ~


という訳だ。

行きたい場所があるからそのためのアイテムを探す。

これぞ正にRPG。

ちなみにヤヨイだが、折角だから暇なら来ないかとローズが誘ったら来た。

普段は兄と二人だから都合が付けやすいかと思った、それだけである。


「最近兄貴は色々と現実(あっちの世界)が忙しくてちーともログインしてないから構いませんお」

どうもゴタゴタしているらしい。

詳しくは濁されたが、トLOVE(ラブ)ってるようだ。

爆発するべきだろう。


――海洋都市シーパラディス。

人工70万ほどの人々が暮らす大型都市。

漂流者を除いた数でコレなので結構な規模だ。

基本は漁業で成り立っている。

最近は沖合に不気味な大陸が姿を現したと騒ぎになっているが、漁業的には損害がそこまでない。

遠洋にでる船は基本的に魔物魚狙いなので屈強な海の男たちが船乗り。

近場の漁場は強力な魔物が出ないので護衛の人が数名で事足りる。

様々な新鮮な魚介に加えてこの街ではなんと海塩が買える。

他の街では売っていない。

売っててもプレイヤーの露店か行商人。

もしくは商会にでも行かなければ滅多に手に入らず、しかも高いのだ。

当然そのようなモノをこの人が逃すわけもなく。


「いやー、やっぱこの街に来たら買いだめしとかなきゃな」

βの時は来たことあったらしいが、製品版では初めてだとか。


「岩塩じゃだめなのか?」


「あれはあれで悪くはないんだが、やはりな。ローズ、クランハウス開けてくれ」


「うーん、ウチの台所はギースに任せてるからいいんじゃない? ああ、はいはい」


「料理人が居るってだけでうらやましいですお」


『女性として何か悔しい気がしますが』

クランハウスの倉庫に大量の塩と海鮮、その他様々な食材を買い込んで放り込んでいく。

アモーレの街から色々あって出なかった料理人ギースはホクホク顔だ。

クランハウスの倉庫に時間凍結機能があって本当に良かったと思う。


「さて、ギルドに来たわけだが?」


「なんか不穏だね」


「なんだ? 問題でもあんのか?」


「漁業組合がギルドに抗議してるっぽいですお」


『どうしたんでしょうね』

付けエラがどこで手に入るのか情報を得るにはギルドか酒場と古き良きハクスラ系RPGをやっている人なら思いつく。

街の人に聞いても良かったが折角だから依頼も何かあれば見ておこうとギルドに来たわけだが……。


「ねえお兄さん、何かあったの?」


「ん? なんだお嬢ちゃん達、見ない顔だな」


「今日ここに着いたばかりでな、情報が欲しくて来たんだが……」


「ああ、これじゃ入れんわな」


「そうですお、何が起きてるか聞いてもいいですかお?」


「今までこんな事なかったんだが、海が荒れて船が出せないんだ」

海が荒れて船が出せない、それが一過性ならいつもの事なのだが今回は異常。

商品はまだ在庫があるから大丈夫らしいが、このままだと一か月ほどで底をついてしまい商売が出来なくなる。

商人も困ったものだが一番困るのは漁業で生計を立てている者たちだ。

なんとか異変を収めねばいけないのだが如何せん原因が分からないと来たもんだ。


「かれこれ一週間は嵐でもないのに大荒れのままなんだよ」


「それは……」


「明らかにおかしいな」


「噂では海の王が倒れただのなんだのと言われているが、そんなの見たこともないしな……近々街をでるかなぁ……」


「「「「『海の王?』」」」」


「ってなんですお?」


「ん? なんでも海の底には邪龍が封じられてるだとかいうおとぎ話があってな、それを封じて海の平和を守っている王が居るんだとか……まあ伝説だわな」

これは有力な情報である。


「ありがとーお兄さん」


「あ、ああ。こんな情報で良ければ」


「助かったぜ」

そういって一行は宿屋へと向かう。


「なんで宿屋だ?」


「密会と言えば宿!」


「ローズ……それは何処情報だ?」


「さあ」


「それはさておき、皆さんは何か心当たりあるんですかお?」

ヤヨイは本当にわかっていない様子だ。


「狭間だよ」

ローズはどや顔で言い切る。


「狭間って、拠点の街ですかお?」


「あ、そういう認識なんだ」

一応種族事に狭間は用意されているが、あまり関わろうとしなければその認識は仕方ないだろう。

ローズの運とプレイの仕方が少々斜め上を向いているだけだ。


「ほうほう、では魚人族の街があるという事ですおね?」


「そういう事だね」


「んで、入る方法だが……」


『私……ですよね』


「サルビアさんしか居ねえよなぁ」

サルビアはほとんど狭間に行った事がない。

最初に直接跳んだあと、人化して直ぐにアモーレに行ったから。


当然の事ながら他種族を連れて行くにはそこの主に許可をもらう必要がある。


これは余談だが、正規ルートでこのイベントをこなすならお使いイベントを消化する必要が出てくる。

まず機械都市に行って渦潮に負けない魔導船を手に入れるために迷宮都市のダンジョンから高性能エンジンを回収、それを使って手に入れた船で今度は新しく出現した島に上陸し、さらにそこで起こるイベントをこなす必要がある。

その工程を経て初めて海底都市ポセイダンに入る資格を得ることが出来るという面倒極まりないもの。

それをモロモロすっ飛ばすことが出来るのがサルビアの存在だ。

というか普通にパーティに魚人族が居るなんて奇跡は早々起こる筈もないのだ。

要するに運がいい、いいかえればズルい。


ついでに言うなら逢魔もこの類に入る。

本来であれば各都市でイベントを消化して情報を集め、色んな苦労をして資格を手に入れてやっと入れる街なのだ。

ローズのおかげでそこの王はちょこちょこ出張ってきているが。

正規の方法でないためにワールドクエスト(運営が用意したシナリオ)に殆ど触れていないからイレギュラー中のイレギュラーだったりする。

ちなみに運営はこの状況を面白いから放置している。

なにせレア種族で普通にプレイしていること自体が珍しいからだ。


「なんでフレンド通信で会話してるのかと思ったけど喋れなかったんだおね」


『そういうことね。うん、とりあえずみんなの為に頑張るわね』

そういうわけで今日はとりあえず休むことにした。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


次の日。

――シーパラディス海辺の洞窟。


「こんなとこあったんだね」


「宿のおばちゃんに聞いたらこの洞窟の泉には人魚伝説があるんだお」


「なんかもうお約束過ぎるな」


「お約束?」


「こっちの世界の童話さ。昨今では海岸の洞窟で人魚と逢引するなんてサブシナリオがあるゲームなんかも珍しくねえ。要するにありきたりな展開だって事だ」


「ふーん」


『じゃあ人化を解きますね』

そう言うとサルビアはトコトコと泉に近寄って躊躇い無く飛び込む。

一瞬輝きを放つと、ザバリと水面に顔を出した。


「わあ……」


「人魚姫ですお……」


「運営こだわりすぎだろ……」


「伝説の種族か……初めて見たな」

そういうジーナも現在は伝説の一つだという事をお忘れなく。


「行ってくるわぁ」


「行ってらっしゃい」


「気をつけてな」


「吉報を期待してるお」


「なんかあればすぐに通信しろよな」


――海底都市ポセイダン

様々な魚人族が暮らす狭間の街。


(えーっと、とりあえずギルドかしらねぇ?)

当然ながらローズたちと一緒に居るといってもRPGにおける情報収集のセオリーなんぞ知らないサルビアは習うしかない。

酒場かギルドかといったことは覚えているのでそれに従う。


「ん? 見ない顔だな……冒険者登録か?」

ギルドの受付に居た歴戦の戦士と言った感じの隻眼のマーマンがサルビアに語り掛ける。

というか狭間は屈強な人が受付をやるルールがあるのだろうか?


「あ、いえ。登録はしてありますよ」


「ほう? どれ、見せて見ろ……珍しいな、表で登録したのか……もしかして漂流者か?」

以前もどこかでやり取りされたような光景。


「はい」


「魚人の漂流者。100年ぶりか……」

何か遠い日を懐かしむような顔をして物思いにふけっている。


「あのー……」


「ああ、すまん。何の用だ?」


「えっと、シーパラディスの海が荒れているのですが何とか出来ないものかと思いまして……」

それを聞いて受付は目を見開いて驚く。


「なんだと!? 表の街がそんなことになっているのか!」


「ええ!? 知らなかったんですか?」


「スマンが上に来てもらうが……構わないか?」


「あ、はい」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ギルド長、少々お耳に入れたいことが」


「ああ、入ってきな」


「失礼します」

二階にあるギルド長室に通されたサルビア。

中に入るとそこには水中だというのに煙管を加えているローレライが居た。

この魚人がギルド長らしい。


「あん? このハルフゥは? って、ハルフゥ!?」

魚人族的にもハルフゥは珍しい部類に入るようだ。


「此方は漂流者です」


「しかも漂流者か……で? なんの用だい?」


「実は……かくかくしかじか」


「なんだって? 表の海が荒れてる!? まさか王の身に何かあったんじゃ……何が大丈夫だよあの馬鹿……」

やはり予兆が……とかブツブツ言っている。


「あのー」


「あ”? ああ、すまないね……考え事してたよ」


「いえ、コチラにとっても一大事だという事は分かりましたから平気ですよ」


「そう言ってくれるなら助かる。それで、それを伝える為だけに来た……てわけじゃないんだろ?」


「はい、表の人も困ってますし、もしよかったら私たちに何か出来ないかと」

その発言を聞いてギルド長の目がきらりと光る。


「ほう? 私たちか……他にも魚人族が?」


「あ、いえ……私の仲間がえっと……もし解決の糸口があるならこの街に入りたいと」


「って事は他種族かい……ちなみに種族は?」


「人族と魔人族、それと夜人族二人です」

今さらだがヤヨイは魔人族である。


「!? 全員漂流者なのかい?」


「いえ、お一人だけネルソディラの方が……」


「まさか……」

何か思い当たる節でもあるのかワナワナと肩を震わせるギルド長。

頭を抱えるように一頻り悩んだ後顔をあげる。

そこには決意の光のようなものが宿っていた。


「わかった、本来なら王に申請しなきゃならないが、今回はアタイの権限でその者たちの狭間入りを許可しよう。コレが通行証代わりの付けエラだ」

欲しかったアイテムがこんな形で手に入るとは思ってもみなかった。


「そのエラは問題が解決したらくれてやる、だから……王を……アノスを助けてくれ」


「わ、わかりました。どこまで出来るかわかりませんが精一杯やらせてもらいます」

その答えに満足いったのかサルビアの手を両手でひったくるように掴み、シェイクする。


「ありがとう、アタイはこのギルドの長のレイラだ」


「あ、私はサルビアと言います」


「わかった、サルビア。本来漂流者のアンタに頼むモノじゃないかもしれないし他種族に委ねる問題じゃないかもしれない……でも、アノス王が姿を現さなくなり、表の世界に異変が現れている以上アタイらだけじゃ解決できる範疇を越えている気がするんだよ……だから、たのむ……」


「はい、詳しくは仲間を連れてきてからでもいいですか?」


「ああ、待ってるよ」

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