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authentic world online  作者: 江上 那智
広がる世界
34/51

本戦第四試合 ローズとシェイド

やっと主人公!

あまりに出てこなくて作者が主人公の人格を忘れそうになる(笑)

大会偏はあと数話で終わります。

どうかお付き合いくださいませ。

『なんぞアレ、ジーナ選手の肩から真っ赤な槍がブァーって!!』


『結界が反応しないって事はアーツなんだろうけど……』


『おい山田、お前解説だろう? なんで知らないんだよ!』


『いや、いくらオレでもわかんないもんはわかんない! アーツや魔術は特にあの人のお遊び含めたら膨大な数になる!』


『って事は私たちが知らないレアアーツってこと?』


『そうなるな』


『すっげ! 初回にしてレアの宝庫? ヤバいじゃん!!』


『その辺はあの人に後で聞いて公式サイトで公開しよう』


『それしかないね。っと、四回戦の選手が来たぞ! 小柄な身体のどこにその力が? ローズ選手だあああ! デカい! 小さいけどデカい! どこがと言わないけど観客席の一部は大盛り上がりだ!』


『アレは夢が詰まってますね』


『キモ! 対するシェイド選手……あれ? 姿が見えないぞ? もしや棄権か!?』


『そんなことするような選手じゃないでしょう……え? アレは一体……』


『な、な、な、なんだアレはぁぁぁ!!』











(これに勝てればジーナと対戦かぁ……一緒に修行してるけど戦ったことないんだよね)

そのためにはこの試合を勝たなくてはならない。

それは解っている。

故に公式の戦いの場でジーナと拳を交えられるように全力を尽くすと頬を叩く。

気合は十分、何が起きても大丈夫とローズは意気込むが……。


「へ?」

いつまでたっても現れないシェイドがどうなったのかキョロキョロと周囲を見ていたときにソレは降り立った。



――ズズン……!



地響きと共に武舞台に立つのは全長5Mはありそうな巨人。

そこから聞こえるのは紛れもないシェイドの声。


「えっと……ふぁんたじー?」


『世界観無視か!? いや、機械人は異色放った種族だけどこれはないだろぉぉ!!』

実況のサトーさんも思わずツッコんでいる。


『どう見ても巨大メカですね』


『落ち着いて解説してんな!』

そう、ローズの前に現れたのは正に巨大メカというべき存在。

剣と魔法のファンタジーの中でも異色を放っている機械人族の本領発揮といったところなのだろうか?


「本当はコレを使うつもりもお披露目するつもりもなかったんだ」


「ほえー……なんで?」

最初こそ面食らっていたが、今は打って変わってキラキラした目でシェイドを眺めているローズが問いかける。


「これは僕のパーティの奥の手「ポルピュリオン」。ギリシア神話の中の巨人戦争であるギガノマキアにおいて最もオリュンポスの神々を苦しめたとされる巨人だよ」

ちなみにこのポルピュリオン(長いので以下ポルさん)、ゼウスは勝てないと悟り、奸計を用いてヘラクレスと共にポルさん討伐に来ていたヘラに欲情させることに成功する。

辛抱堪らんくなったポルさんが無理やりヘラと致そうとしている最中、ヘラクレスと共に「致されそうになって助けを求めるヘラごと」やっつけるというとんでもない事をやってくれたりする。

ヘラさんには同情を禁じ得ない。


ついでになるが、シェイドがこれを大会で使うつもりが無かったのは単純に試作機だから。

耐久や連続戦闘時間についてもまだ思わしい結果が出ていないからだ。


「すっごいカッコいい!!」


「え? あ、どうも……」


「ねぇねぇ、どんな事が出来るの?」


「えっと……まず右アームが」

右のアームにはガットリングが搭載、M61A1と同じ電気モーター式(?)を採用し、毎分3000発の実弾が発射できる。

完成品ではGAU-8/A機関砲と同じ4000発を予定している。


左アームは高周波震動ブレードを装備。

両肩に装着しているグレネードランチャーからは二発のグレネードが、両肩合わせて四つ。

背中の開閉式コンテナには30発のミサイルが搭載されており、ロックオンした相手を追尾する。


さらに左アームの腕部分と頭部にはバルカン砲がついており、両足にはミサイルランチャー。

こっちのミサイルランチャーは背中とは異なりコロニーを射出、一定距離を進み敵をセンサーにて補足すると中に詰まっている9発のミサイルを放つ。

両足同時に撃てば18ものミサイルが敵に襲い掛かる。

レイド戦を意識した武装で、PVPのような個人相手に使う兵器ではない気がするのは気のせいか?


『なんか懇切丁寧に武装の説明をしているぞ!?』


『あんな子にあんな目で説明を求められたら俺もしゃべる、ぜったい喋る!』

会場の一部はウンウンと頷いている。


『このロ○コンどもが! ああ、もう! とっとと始めろ!』


――カァン!


思い出したかのようにゴングが鳴った。


「悪いけど、早めに終わらせてもらうよ」

突き出した右アームの銃身がキュララララ! と音を立てて高速回転を開始する。


「そう簡単に負けないんだから!」

来るべき銃撃に備え、ローズは距離を取った。



――ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!


けたたましい連続発射音を轟かせ、一分間に3000発の弾丸の嵐が飛来する。


「うわっと!」

立ち止まる事すなわち敗北を意味する無数の弾丸を時計回りに走り回避する。


「くく、くあははは!! どうだいこのグルーヴィなサウンド! 思わずハイになるだろう!?」


「はえ?」

シェイドの態度の変わりようにローズは面食らうも足は止めない。


「踊れ踊れ! お次はコイツだ、FIRE!」

弾帯全て撃ち切り、即座に頭部バルカンに切り替える。

同時に両脚部のミサイルポッドから二つのコロニーを射出。


「ひいいいいい!!」

バルカンに気を取られている隙にローズを補足したミサイルコロニーから計18発の弾頭が飛来する。

その全てを無傷で回避できるのはランハクの訓練の賜物か。


「げほ、げほ……爆風が……」

直撃こそなかったものの、足元や壁で爆破したミサイルは舞台を削り土煙を巻き上げる。

やっとのことで視界が確保できたローズは再び恐怖に晒された。


「くあーはっはっは! 思った通りすばしこい、でもこれは躱せないだろう? ロックオン……FIRE!!」

四つん這いになったシェイドの背中のコンテナ部分がガパリと開き、中から大量のミサイルが顔を覗かせる。

ギラリと怪しく光を反射する鈍色の輝きが右上から順次発射され、30の弾頭全てがローズに襲い掛かって来た。


「うええ!? ついてくるぅ!!」


「ロックオンしたといっただろう? さあ、綺麗な花火をみせてくれ!!」


「ふりっとおおおお!」

巨大メカの攻撃を見て見たいと思って使わなかった歩法を出した。

しかし、どんなセンサーを積んでいるのかミサイルたちは旋回して確実にローズに向かっていく。


「へっへーん、こっちだよー」

そう言って移動したのはシェイドの目の前、しかし誘導系のモノを放った時に相手がとるであろう行動は大体決まっている。

予測済みの行動に対しての迎撃態勢が整っていた。


「くは! そう来ると思ってたよ、ミンチになっちまいな!」

振るわれる高周波震動ブレード。

これは受ける事が出来ない。


「狙いどーりっ!!」

これはローズも狙っていたらしく、再びフリットで懐深くに飛び込んだローズは驚くべき行動に出る。


「何をする気だ……うそおおおおお!?」

ふわりとシェイドの巨体が宙を舞う。

ブレードを躱し、わずかに前に出た重心を崩すために体重が乗っている足に「透」の技を打ち込む。

バランスを崩して踏ん張ろうと出した足の()にわざと入り込み、今度は「打」の技で自分の後方、つまりミサイルが飛んできている方向に突き飛ばしたのだ。


「うがああああ!!」

ズドドドドン! と連続でシェイドの背中に着弾するミサイルたち。

その威力は背中のコンテナを破壊するに至った。







『何だこれはあああ! まさに巨人VS人間の構図! ギガース対ヘラクレス! リ〇ァイさんお願いします?』


『巨人というか機械兵対人間ですねぇ、眼福眼福』


『……どこ見て言ってる?』


『いやだなあ、ローズ選手のバス……へぶら!』


『死ねヘンタイ』






「どんなもんだ!」

もうもうと立ち込める煙が晴れたとき、目の前には横たわる巨人の姿があった。

背中のコンテナは見るも無残になっているが、本体は無事のようだ。


「……もっとも警戒するのは君の速度ではなく機転だったか」

先ほどまでのトリガーハッピー状態は落ち着いたようだ。


「まだやる?」


「もちろん、幸い破損したのはコンテナだけだしね……「パージ」」

バシュ! っという音がして背中に背負っていたコンテナが外れた。

少し身軽になったのか割と軽快にシェイドは立ち上がる。


「弾薬の補給は出来ないの?」


「出来るよ、でもお金がかかるんだ」

実弾系兵装装着時の特殊アーツ「リロード」

これはHPやMPではなくN、つまりお金を消費する。

かなり変わったアーツのようだ。


「しないの?」


「したところで君には通用しないだろう? だからこれを使う。ポルピュリオン、モード「ヘカトンケイル」」

パージした背中の部分が可変し、無数のマニピュレータが出現する。

その先端は全て震動ブレードになっていた。


「百腕巨人の攻撃、しのぎ切れるかい?」


「やってみないと」


「じゃあやってみなよ」

シェイドの両足底部から強烈な風が吹き、ふくらはぎの部分からが火を出た。

地面を滑るように高速で移動してきたシェイドはそのまま左のブレードを振る。


「はや! こなくそ!」


「女の子がそんな言葉つかうんじゃありません」

オカンかお前は。


(と軽口叩いたはいいけど、よく躱すよ本当に……)

時間差で回避しにくい場所を狙って攻撃しているはずなのに未だ一撃の被弾すらしないローズ。

実はジーナのように受け技を持っておらず、夜人族の耐久値に頼った戦い方が主なためにシェイドの武器のように当たれば大ダメージ必死なモノは死に物狂いで躱すしかないだけだったりする。


(うー、反撃の隙がないよう)

攻めあぐねいているのは此方も同じだった。

兎に角一撃を当てるには近寄らなくてはならない。

だが、巨体故のリーチの長さが超至近戦を得意とするローズには遠かった。

フリットを使えばと思ってみたが、先のように二本腕であったなら対処は容易かった。

今は無数の触腕が蠢いている。

よしんば近づいたとしてもあの触腕が確実に妨害してくるのは確定的に明らかだった。


戦況は千日手になると誰もが予測した。

それを覆したのはシェイドだった。


「そこぉ!!」

攻撃と攻撃の僅かな隙間に差し込んだ左腕部バルカン。

そう、彼はこの瞬間の為に左腕部バルカンを使わず、意識の外に追いやったのだった。


「あぐっ!」





『うおおおおお!! ローズ選手今大会初のクリーンヒットおおお!! 腹部から流れる血が痛々しい!』


『苦しむ姿もまた嗜虐心を刺激すぶぁ!』


『もうお前黙れや』






「いたたた……すっかり忘れてたよぉ……」

それこそがシェイドの狙いだったのだ。

だが、シェイドは賭けに勝ったがそこで終わりだった。


「……降参だ」


「へ? な、なんで? まだ戦えるよ!?」


「だから降参なんだよ。あのバルカンで致命傷を与えるつもりだったんだ、もうポルピュリオンのENが無いんだ」

試作機故の活動限界。

ポルピュリオンの強大なパワーを無制限に動かす動力炉の開発が間に合っていなかったのだ。


「じゃあ降りて戦えばいいよ!」


「そうなったら僕は盾が無いからね。素手でパリングは出来なくはないけど、君の内部破壊の技は受けられそうにない」

彼の受け流しの技術はまだまだ盾ありき。

だからこその降参。

ローズも会場も納得いかなかったが、選手がその決断を下したならば決着とするほかない。

ローズの本戦一試合目はそんな幕引きだった。

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