大会予選決勝とそれぞれの戦い②
予選終了です。
次回は本戦開始。
予選なのに出し切ってる感w
予選Cブロック決勝
ジーナVSシュタイナー
(あれ、絶対ランハクさんだ!)
ちらっとシェイドの戦いで感知した気配によって、対戦相手が誰なのかを理解したジーナは怯えていた。
「ねえ、大丈夫?」
対戦相手であるシュタイナーという女性が声をかけてくる。
普段はローブのようなものを着ていた上に名前で男性だと思っていたのだが、いざ試合になってローブ(本人曰くリング用のガウン)を脱いだ中から現れたのは顔立ちの整ったレオタード姿の女性。
細身に見えるが芸術品のような理想的な筋肉に覆われており、グラップスタイルと思われる戦闘方法にはやや不利に感じるロングヘアーが美しい。
「あ? だいじょ? 大丈夫って事か? ならいつでもいいぜ!」
金剛の構えで警戒はしていたので攻められても対応は出来たのだが、ジーナの相手は真正面から向かってくる気持ちのイイ奴らが多い。
「よし、行っぞー!!」
シュタイナーの戦闘スタイルは見た目通りレスリング。
腰をかがめて地面すれすれを滑るようにジーナに向かっていく。
「ふん!」
両足を刈り取るように抱き着いてきたが、ジーナはまるで大地に根を張ったかのように動かない。
「おお、凄ぜなぁ。あたいのタックル止められたんは久しかぶいだ!」
止められたというのにとても楽しそうなシュタイナー。
所々聞きなれない言葉が耳に入るが、それよりも……。
「嫌いじゃないぜ? そういうの! おらあ!!」
戦闘狂は戦闘狂を呼ぶのだろう。
「ふっ!!」
「何!?」
ジーナの鋭いミドルキックを抱えるように受け止めるシュタイナー。
勢いを殺しきれずに苦悶の表情を一瞬見せたが、そのままジーナの方を見て、精一杯の強がりでニヒッと歯を見せて笑う。
刹那、ジーナの背中に言いようのない悪寒が走る。
「おりゃあ!」
抱えた足を巻き込むようにして回転しながら地に伏せる。
――ドラゴンスクリュー。
相手の片足を両腕で取り、足首を脇腹に押し付けるようにクラッチする。
その体勢から自ら素早く内側にきりもみ状態で倒れこむことで、相手を回転力で投げ飛ばす技である。
一見すると単純な崩し技だが、足首を固定し捻ることでヒールホールドを極めるプロセスを含んでおり、無理に堪えれば膝関節を負傷する可能性がある恐ろしい技。
適切に受身を取らなければ頭部や腰などを強打する技でもあるため素人は真似しちゃだめだぞ?
「くぬ! なめるなぁ!!」
ジーナは回転に逆らわず、その勢いを利用して同じ方向に回転。
そのまま空いてる足で顔面を踏みつけるように蹴りを食らわせてクラッチを切り、脱出に成功する。
「強えなぁ……おはん、凄ぜ強えなぁ……楽すなぁ……」
鼻から血を流しながらも目から戦意は失われていない。
むしろ輝きが強くなっている。
「たぶん背中向けててもわかるくらいに気合が膨れ上がってる……いいぜ、受けて立つ!」
小技の応酬では埒が明かないと2人は大技勝負をすることにする。
言葉を交わしたわけではない。
何故かわからないがお互いがお互いにそんな気がしたのだ。
「あたいから行っぞ! |耐えて見せっ!!」
最初と同じように地面すれすれを滑るようにかけてくるシュタイナー。
懲りずにまたタックルか!? と警戒を向けた瞬間気配が背後に回る。
手を使って勢いと慣性を殺しきらないように回り込んだのだ。
「なに!?」
背後からのタックルを警戒したジーナはさらに意表を突かれてしまう。
シュタイナーは屈みこんだ姿勢から全身のバネを使い、跳躍。
その両足をジーナの首に挟み込む。
「こっかあだよ!」
そのままぐるりと首をねじ切る勢いで正面に回転、黙って立っていれば首の骨が折れてしまう。
「くあああ!!」
「ヤー、ハー!!」
おられては堪らないと身体を回転に逆らわずに捻ったが、それも織り込み済みだった。
シュタイナーはそのまま投げに移行する。
――ヘッドシザーズ・ホイップ
立っている状態の相手に跳び付き、相手の頭を両足で挟み込み、下半身の力や自分の体が旋回する勢いで両足を使って相手を投げ飛ばす技の総称。
多くのルチャドーラが使用している技である。
「まだ終らんよー!」
うつ伏せに倒れたジーナの腰をガッチリクラッチしてそのままジャーマンスープレックス、続けざまにパワーボムを連携していく。
「こいで最後!!」
ジャイアントスイングで遠心力を利用して上に投げ飛ばし、自らも跳躍。
空中でリバース・ファイヤーマンズ・キャリーで掴むとそのままジーナの頭が下になるように落下する。
「スカイハイ・バーニング・ハンマー!!」
現実では絶対に出来ない超危険なデスバレーボム。
ドドン! と会場を揺るがすほどの衝撃が走る。
「こいでどうだ!」
仰向けに倒れるジーナを見て油断することなく距離を取る。
これは誰もが決まったと思い、審判もシュタイナーの勝利を告げようと手を上げた瞬間シュタイナー本人ががそれを止める。
「……待てよ審判……まだ終わっちゃいないぜ……」
果たして、シュタイナーの思った通り耐えきったジーナが起き上がった。
「耐ゆったかぁ……やっぱいおはん凄ぜなぁ……あたいのフィニッシュホールドじゃったのに」
「今度はアタシの番だな……?」
「来い! あたやレスラーじゃ、どげな攻撃も耐えて見すい!!」
「気持ちいいな、アンタ……お望み通りアタシの今の最高の技を食らわせてやる!」
ジーナは覚悟を決めた。
もとよりこれで決まらなければ戦う力は残っていない。
ならば全力で答えなければ失礼になる。
ジーナはギリギリまでシュタイナーから距離を取った。
「行くぜ……耐えて見な! 「螺旋猛進脚」!!」
長い助走から錐揉み回転の蹴り。
この技の特徴は移動する距離が長ければ長いほど威力が上がる。
さらにインパクトの瞬間魔力を乗せて威力を倍加させることで外部に強烈な一撃を食らわせる技。
現在の彼女が使用できる最大の大技だ。
「くううううらええええええ!!」
ギャド! というおよそ人体に食らわせた音ではない音が会場内に響き渡る。
「ぐぬうううあああああ!!」
なんの小細工もなく、宣言通り体一つで受け止め、武舞台の端まで滑っていくシュタイナー。
彼女が後退した後には二本の線が残っていた。
「はあ……はあ……どうだ、くそったれが」
「ああ……いいなぁ……実にいい勝負じゃった……」
ガクリと膝をつき、そのままうつ伏せに倒れるシュタイナー。
勝負は決まった。
【シュタイナー選手戦闘不能! ジーナ選手の勝利!!】
コレ、予選だよね?
予選Dブロック決勝
もょもとVS蒙鬼
「……」
「……」
静かなにらみ合いが続いていた。
かたや盾と剣を構えたオーソドックスな剣士スタイル。
かたやボロボロの黒い道着を纏った格闘家。
二人とも近接戦闘が主だった戦いかと思われた。
先に仕掛けたのは蒙鬼。
離れた位置にも関わらず空手の正拳突きの構えを取る。
「ぬぅん! 「気導拳」!!」
振りぬかれた拳からは青白い波動が迸る。
「……む!」
もょもとはそれに対して盾ではなく剣を構えた。
「しっ!」
振るわれた剣は気導拳の中心を切り裂き、左右に分かれてもょもとには当たらない。
観戦していた者たちは唖然とした。
――「剣で魔術を斬れる」
掲示板で囁かれている噂の一つ。
それが事実だと証明した上に、魔術だけではなくアーツですら同じことが出来ると。
実際にシステム上は可能になっている。
しかし、それを行うには自分に向けて飛来する魔術やアーツを避けずに剣を振るえる度胸が必要。
さらに、この技術はクリティカルが乗らねば成功しないのだ。
達人のみが出来る究極の技術。
またの名を開発のお遊び。
そう、システムに組み込みはしたが、偶然の産物として発動するだけで意図的に再現されるとは夢にも思っていない。
それを一人のストイックな廃人が実現させたのだ。
「……やるな、うぬの名を聞こう」
いや、対戦表とかに書いてあるし審判とか何回も名前言ってるじゃん! という観客の心の叫びは独自の世界を作り上げている二人には届かない。
「……もょもと……破壊神を……いずれ破壊するものだ」
そこは邪神じゃねえの? とは口が裂けても言えない。
「我が名は蒙鬼、拳を極めたい者也! 推して参る!! 「気導拳」!」
あ、まだ極めてないんだ。
大会のレベルは予選にしては高すぎる。
だが、本人が極めたと納得してないならそうなのだろう。
再び気なのか魔力なのかわからないエネルギーの塊がもょもとに襲い掛かる。
「……無駄だ」
そこは先ほどの再現よろしく、たやすく切り裂かれる。
だが、いつの間にかもょもとの視線の先に蒙鬼はいない。
「……上か」
気導拳を囮に跳躍していた蒙鬼。
腕をクロスしたユパ様ジャンプから蹴りのモーションに入る。
「……不用意に跳ぶとは……」
一瞬期待した目から落胆した表情に切り替わるもょもと。
落下のタイミングに合わせるなど、彼には造作もないのだ。
「かかった! ぬん!! 「嵐旋脚」」
足を水平に構え、その場で回転。
その壮絶な勢いは浮力を生み出し、空中で軌道が変わる。
「……なんだと? だが無駄だ」
突然変わった軌道に合わせるのは難しい。
いや、彼ほどの技量をもつならば合わせる事自体は容易いであろう。
事実、即座に振り向きクリティカルを狙うもょもと。
――だが。
「ぬぅりゃあ! 「楔」!!」
確かに斬りつけた筈の蒙鬼の姿がぶれる。
剣に手ごたえは無く、幻であったかのように掻き消え、同時に脳天を強烈な衝撃が襲う。
「な……なにが……」
もょもとが最後に見た光景。
それは油断なく残心する蒙鬼の姿だった。
【もょもと選手戦闘不能! 蒙鬼選手の勝利!!】




