サルビアと魔界〇とバトルイベント
ストックがほんのり貯まって来たので
忘れられないうちに少しだけ放出。
お待たせしてすみません。
なかなか執筆できない……。
――アモーレ喫茶店「きっさ・おぶ・ざ・でっど」
『はあ~……これは凄いわねぇ……』
「でしょ? 現実のお腹は満たされないけどね」
流石に無言での集会は異様だと察したのか、サルビアだけが念話で答えるようにしたようだ。
「なんか俺の周りがレア種族だらけで驚かなくなってきたんだが」
念話機能があるが、密会の雰囲気を楽しみたい客用の防音個室に現在はきている。
外に居る従業員が騒がし過ぎるから落ち着きたい人がお願いを重ねて作られた部屋といううわさもあるが。
「それで、その魚人? は人になってる間は喋れないのか」
『ええ、ほかにも魚人状態で陸には上がれるけど身体が乾いたら呼吸困難になるというのもあったわ』
「夜人族もそうだけど、種族フィールドから出したくないのかな?」
ローズの意見も尤もである。
「他には無いのか?」
『ええっと……ああ、なんか嵐を起こしたり海を割ったりできるみたいね。後未来予知?』
「嵐……未来予知……という事はハルフゥか?」
なんでこの男はこんなにも詳しいのだろうか?
『確かそれであってるわ』
「ギースは本当に何でも知ってるな……」
「そのハルフゥってなんなの? ギスペディアさん」
「なんだよそれ?」
「知っているのか! ライデン!? の方が良かった?」
「だからなんでお前はそう言ったネタを知っているんだ?」
「神が私にこう言えと……」
「と、兎に角、ハルフゥについて教えてくれないか?」
「……ハルフゥはノルウェーの伝承に出てくる人魚だ」
「ノルウェー? ってどこだ?」
「こっちの世界の国の名前だ」
「またそっちか……その、北欧とかいうのか?」
「ああ、ノルウェーなら北欧神話だ」
どうも北欧に因んだことに巻き込まれやすいようだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「とりあえずは戦力の底上げだな」
「蜘蛛マラソン?」
「それでもいいが他のモンスとも戦えた方がいいだろう」
「で、ここか……」
『寂しいとこねぇ』
四人はアモーレ西の廃墟に来ていた。
「ここの奥はアンデッドがわんさか出るんだったよね?」
「そうだ、熊退治の時に思ったがココは俺たちでも余裕だろう」
ボスがおらず、一定数のアンデッドを退治すれば抜けられるので熊の次に簡単な関所らしい。
「ん? なんか戦いの気配がするぞ?」
「先客か?」
『あそこで戦ってるわね』
「本当だ。……なにあれ」
廃墟の奥で鉄の鎧に身を包んだ人物が一人でアンデッドを相手に立ち回っている。
「ローズ、それ以上は行くな。ここが境界線だ」
境界線を越えるとボスフィールドになり、強制的に共闘という形になってしまう。
ソロで来ているのなら同意が無ければ参加するのは止めておいた方が無難だ。
「危なくなったら声かけてだな」
『変わった戦い方ねぇ』
「っ!?……まさか……いや……」
鎧の人物は一見して何も持っているようには見えない。
だが、掲げた手を振り下ろすたびにスピアが出現し、それを投擲してアンデッドを駆逐している。
「魔術?」
「魔力の流れは見えるが、妙な感じだぞ」
「俺はあまり関わりたくねえな……」
ギースは何かを察しているようだ。
「あ、あぶない!」
正面にばかり意識が向いていたのか、背後からの攻撃を鎧の人物が受けてしまう。
その瞬間鎧がはじけ飛び、中からトランクス一丁のおっさんが出てきた。
「鎧が弾けた!?」
「危険だ……危険すぎる……」
「助けに入るか?」
「そういう意味じゃねえ……」
やはりギースは何かを察して怯えている?
『凄い動きねぇ』
「な!? 空中でもう一度跳んだ?」
「ああ、でもそっちは……ええええ!!?」
もう一撃食らってしまった鎧の人物改め半裸の人物は再びアンデッドの攻撃をその身に受けて骨になってしまった。
「骨えええ!? ナンデ?」
「やっぱりアイツか……」
「なんか知ってるのか? ギース」
「説明したくねぇ」
そうこうしているうちに骨は光になって消滅したと思ったら背後に鎧の人物が立っていた。
「かー、やられちまったかぁ」
「へ? わあああ!!」
「ひょえ!?」
『不思議ねぇ』
「……よう、あーさん」
「ん? おおおお、ギースか。久しぶりだな、何気に正式サービス版で会うのは初めてか?」
あーさんと呼ばれた人物はギースと知古であるらしい。
「知り合いなの?」
「ああ、こいつの名はあーさん。……とある昔のゲームのロールをしている変わり者だ」
「魔術スキルが手に入っちまったんだからやるしかねえべ?」
「手に入ったっつーか無理やり創ったんじゃねえか!」
オリジナル魔術が作れるこの世界は、システムが許す範囲ならイメージ次第でなんでも可能。
「どんな魔術さ?」
『私も聞きたいわぁ?』
「私もサルビアさんも知りたい」
「一応マナー違反になるんだがなぁ……あーさん、いいか?」
「儂のスキルか? ほら」
あーさんは快くスキル欄を可視化してくれた。
――何処からともなく無限に現れる武器
錬金術で一度でも作成したことのある武器を一瞬で生成することが出来る魔術スキル。
使用する魔力も微々たるもので使い勝手は良さそうだが、耐久度はほぼ0で、一回使えば必ず壊れる。
登録は3つまで可能。
熟練すれば最大で5つまで瞬間的に生成出来る。
登録武器「スピア」
「短剣」
「斧」
――九つの命を持つ者
最低三回までマーカーを設置した場所に復活することが出来る魔術。
HPを犠牲にしてマーカーを設置する為、一撃でも食らうと戦闘不能。
死なずに百体倒せばリスポーン回数が一回増える。
最大九回。
――全てを受け止める魔法の鎧
LPを代償に全てのダメージを一度だけ肩代わりしてくれる不思議な鎧を生成する魔術。
致死だろうと呪いだろうと魔術だろうと一度だけなら全て無効化するが、発動すれば鎧は砕け散る。
生成する際は一度宝箱という形で地面から生え、壊すことで手に入る。
また、五十体敵を倒すごとに鎧がパワーアップする。
最高で二段階上がる。
鉄⇒青銅⇒金の順で鎧が変わり、金の鎧になると武器を破壊して潜在能力を引き出すウェポンクラッシュが使えるようになる。
使用する際は集中しなければいけない。
「これはまた……」
「メリットとデメリットがクッキリしてるっつーか酷いピーキーだな」
『?』
サルビアは当たり前だがよくわかっていない様子だ。
「……相変わらず危険過ぎんだろうが……」
「あんでよ! いいじゃん魔〇村!」
「伏字入ってる段階で危険だろが! ……ったく……そういやあナイツオブラウンドは創れたのか?」
「ん? それな、条件変わってるのかまだクランの話すらギルドもしてこないな」
「クラン?」
「ギルドとは別に漂流者だけで派閥が作れる制度だっけか?」
「ジーナのいう通りだ。こいつは前にそれを作っていたことがあるんだが……」
「まじか……あんた幾つだよ……」
『「え?」』
あーさんとこの世界の事情にまだ疎いサルビアが疑問符を浮かべる。
「え? アタシなんか変な事言ったか?」
「あー……それな」
ギースはしまった! という顔をした。
別に秘匿していたわけではない、ネルソディラ人にこの手の話はこんがらがるから避けていただけなのだが。
「クラン制度があったのはアモーレのギルド長モロック様がまだ一冒険者だった若いころの制度だから100年以上前だったはずだぞ? アタシはそう聞いてる」
ローズがゲームを始めたころを思い出して欲しい。
昔は加護無しがいた事があるとモロックが言っていたことを。
そう、時間軸としてはβから100年以上は後の世界という状況なのだ。
「……なんでもありだな、漂流者……ギースもか?」
「ジーナたちの視点から見ればそうだな」
「ローズもか?」
「私は違うよ」
「そ、そうか」
何故か少しだけホッとした表情をした。
「まあ、この話はここで終わりにしておこうか。あーさんはこれからどうすんだ?」
「儂か? そうさな……とりあえずここでもう少し地力を上げてからラビリントにでもいくさ」
「そうか」
「まあ、今日は残機も心許ないから帰るがな」
「残機って……」
「コイツだけ世界が違うんだ、あきらめろ」
「酷い言い草だな」
「なんでリアルファンタジーアクションの世界で一人だけ残機制の横スクロールのシューティングしてるんだよ」
「儂が満足していればよい!」
ローズとサルビアはうんうんと頷いている。
「……漂流者ってすげえな……」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あーさんと別れてから四人は当初の予定通りサルビアの地力上げをすることにした。
「サルビアのスキルは今どうなってる?」
『こんな感じで取得したわ。全部教えてもらったことだけど』
サルビアのスキルはこうなっていた。
――槍術
槍の扱いが上手くなる。
他にも銛や戟といった刺突系の長物の扱いに補正が掛かる。
――水魔術
水の魔術を扱うためのスキル。
初級「アクアボール」「アクアヒール」
――天変地異
ハルフゥの固有スキル。
その力は天候を自在に操ることが出来る。
使用するには体内の水分(HP)と魔力、それに命(LP)を対価として捧げる必要がある。
陸上で使うときは一気に干からびるので注意が必要。
――未来予知
直前に起こることを察知することが出来る。
熟練度が低いうちは直前に命の危険があるときしか発動出来ない。
熟練度が上がれば自分の意思で5秒先まで予知することが出来るようになる。
使いすぎれば眼や鼻の弱い血管が切れ、状態異常「出血」を引き起こす。
『戦うのはこんなところねぇ』
「今日始めたのに二つも持ってるのか……」
「下二つが凄いけど天変地異は地上で使えないね」
「アタシも思った、間違いなく使ったら死ぬな」
『チュートリアルでしごかれたから手に入ったのよ』
「「はい?」」
「チュートリアル? ってなんだ?」
「それは後で説明するね」
「チュートでスキルが手に入るとか初めて聞いたぞ……」
『リリィさんが頑張ってくれてねぇ……有り難かったわぁ』
「……詳しく聞こうか」
サルビアはチュートリアルであったことを包み隠さずにギースに伝える。
「……肩入れし過ぎだろう……」
「やっぱりいい妖精さんだよね、リリィさん」
『あら? ローズさんも何かあったのかしら』
「あー、あれな」
「……もう俺は何を聞いても驚かんぞ」
ローズも折角なので加護の話をギースに伝えた。
それを聞いたギースはというと。
「……よし、ボスエリア行くか」
現実から逃げ出した。
「サルビア右だ!」
『はい!』
ギースの指示に従って右のゾンビに銛を突き出すサルビア、胸に刺さるが倒すことは叶わない。
「ゾンビ系は頭を潰さねえと倒れねえ! しっかり狙え!」
『は、はい! きゃあ』
銛を抜くのに手間取っている隙に横から別のゾンビが噛みつこうと迫ってくる。
「おっと、させねえよ! 「頭蓋割り」! ……うへぇ、気持ちわりい……」
ジーナのかかと落としがサルビアを狙ったゾンビの頭を粉砕する。
正直肉弾戦を挑みたい相手ではないのだが。
「ブラッドスミス使っちゃだめか?」
「多少ならいいが、それだと連携の練習にすらならんだろ」
一網打尽にするにはもってこいの技だが、連携という事を考えればワンマンショーになりやすいのでNGだとギースは言う。
「私も出来れば殴りたくないなぁ……噛みつく気も起きないし、スケルトン系は血が無いし……」
ローズ的にも色んな意味であまり美味しいと言えない相手のようだ。
「まあそういうな、ここで経験しておけばまたこんな状況に陥った時には必ず生きるから。っと、「バインドウィップ」からの「フィッシングスロー」」
ギースも鞭のアーツの練習をしているようだ。
今のは相手を捕縛する鞭のアーツから派生できるアーツ。
一本釣りのように相手を地面に叩き付ける技だ。
「それ、派手でいいな」
「俺は嫌いじゃないんだが……如何せん鞭の評価は低いな。鞭自体が扱いにくいからなぁ」
現実でもスポーツウィップなどで軽々使用しているように見えるが、アレはけっこう熟練が必要だったりする。
「破! あ、やば!」
頭を狙ったつもりが肩に当たってしまい、ゾンビを倒しきることが出来なかったローズ。
『ローズさん! えい!!』
ダメージをモノともせずに噛みつきに来たゾンビを横合いから側頭部目掛け、サルビアの銛が貫いた。
それが致命となり、ゾンビは倒れて動かなくなる。
「ありがとう、サルビアさん」
それが最後の敵だったのか、廃墟を覆っていた瘴気が晴れて先へ進む道が見えていた。
「いい一撃だった、あとローズは馴れから来る油断だな」
「ランハクさんには黙っててほしいな……」
「俺は死んでも問題ないから良いが、お前らはそうじゃないからな。ソコは厳しく行かせてもらう」
「そんなぁ……」
「ま、しょうがないな。アタシも一緒に扱かれてやるからさ」
「ジーナぁ……」
「しかし、サルビアは初心者とは思えねえ思い切りだったな……普通は魔物に相対した初心者ってのは足が竦んで動けないもんなんだが、何かやってたのか?」
それに関してはローズもジーナも疑問に思っていた。
『リリィさんがチュートリアルで色んな魔物を出して教えてくれたのよ』
「……そんな事細かにチュートリアルでやるもんなのか?」
『ええ……辛かったわぁ……ふふ……いくらあの空間では死なないからって……ねえ……』
サルビアの眼のハイライトが消えている。
一体何が行われたというのか。
「おーい、サルビアさーん」
『うふふ……リリィさん……そんな大蛇私には無理よ? ああ……丸ごと食べられて……溶け……』
おぞましい事を口走っている。
確かにそのような体験をしてしまえばこの辺の魔物は怖くないだろう。
「サルビアさん、帰って来て!」
パシリといい音がなるくらいの軽さで顔を挟むように両手でサルビアを叩くローズ。
『は!? ご、ごめんなさい……と、ところでギースさん、この先は何があるの?』
「ん? あ、ああ……この先は闘技都市エデンがある」
人間触れて欲しくないモノはある。
この話題はもうしないでおこうと三人は心に誓った。
闘技都市エデンは週一でバトルコロシアムが開催されている都市。
数多くの屈強な戦士たちが互いに鎬を削る街。
「コロシアムかぁ」
「観戦するもよし、戦士に賭けるもよし、出場するもよしだ」
「へえ……出て見たいけどアタシらは昼間だと人族以下だからなぁ……」
コイツを聖女に祭り上げたのは一体誰なんだろうか……。
『凄いわねぇ……』
「コロシアムと言えば、ローズは公式の情報は見たか?」
「? 見てない」
「第二層にたどり着いた漂流者が2/3を超えたからバトルイベントを開催するんだとさ」
「バトルイベント?」
「開催地はアモーレ。新しく入ってくる漂流者へのPRも兼ねてるらしいな」
「アタシも出れるのか?」
「レア種族のデメリットをその時だけは無くしてくれる結界を張るみたいでな、こぞって参加してくださいとさ。もちろん現地の人も参加可能だ」
「良いなそれ」
『私は観戦ねぇ』
「賭けも出来るからサルビアはそれで楽しむのも在りだな」
『そうするわね』
「何時から?」
「こっちの世界で一週間後だとさ、申し込みは……もうやってるわ」
「行こう! ローズすぐ行こう!」
「待って、エデン行ってから転送屋で行こうよ」
「あー……うん、往復は出来ねえが片道分なら間に合うな」
「よし、それで行こう!」
もう一度いう、コイツを聖女にしたのは誰だ。
「登録したら逢魔で稽古つけてもらおうか」
ローズは提案する。
「げ! ランオウさん以外にスパルタなんだよなぁ……仕方ないか」
「ランハクさんと交代してみる?」
「それだけは絶対にNO!」
まだ手心が見えるランオウの方がいいらしい。
慣れればランハクでも大丈夫そうなのになぁ、とローズが言っていたのが印象的だ。
大分染まっているようだ。
「んじゃこの後はその予定で」
「うん」




