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authentic world online  作者: 江上 那智
広がる世界
24/51

迷宮ほんのりと犯罪者プレイヤーとサルビア

すみません。

プライベートが忙しくて予定日を過ぎました。

グロ成分が割と強めな回です。

――迷宮都市ラビリント、「ランディJの迷宮」


「うおおお! ローズ何やってんだ! 触るなって言っただろ!!」


「ごめんなさい! 押すなって押せって事かと!」


「んなわけあるかよ! 走れええええ!!」

現在チュートを終えて次の迷宮の攻略に乗り出していた。

魔物の出現は少ないがトラップの豊富な洞窟型の「ランディJの迷宮」。

そこで、三人は巨岩のトラップを盛大に発動させて走っている。


「ジ、ジーナ!! あれ! あれ出来ないの!?」


「あれってなんだよ!」


「アレ! ミスリルゴーレムの攻撃を止めたの!!」


「あ、ああ!! 巨石砕きか! よ、よし!!」

ローズの要望を受け取ったジーナは足を止め、振り向く遠心力を足に乗せて一直線に岩に向けて突き出す。


「はああ! 「巨石砕き」!!」

ドゴン! という音と衝撃が洞窟内に響き、巨大な岩は動きを止める。


「や、やったの?」


「バカローズ! それを言ったら……」

ぴしぴしとヒビが入り、巨大な岩はそのまま崩れ去る。


「うええ! お代わり!?」

崩れ去った岩の向こうから即座にもう一つが転がってきているのが見えた。


「だから言っただろうが! 「やったか?」は駄目なんだよ!」


「知らないよそんなの!」


「なんでもいいから逃げろおおお!!」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



次の日。

「うう~、昨日は酷い目に遭ったよぉ……アレが初級ダンジョンなんて嘘だよぉ……」


「いや、実際罠は見え見えのばっかだから罠系スキルを育てるのに最適なんだよ……発動させなきゃいいんだからよ……」


「確実に命狩りに来てたからな……片っ端から発動させたローズが悪い」


「ごめんなさい……」

一応攻略は出来た。

それまでには冒頭の巨石トラップを始め、釣り天井、ガス、壁から飛び出る槍などなどのスイッチ系トラップを全て発動させていた。

よく生きて帰ってこれたものだ。


「はあ……まあいいけどよ。で? 今日なんだよな、知り合いが来るの」

今日は登紀子が初めてログインしてくる日。


「うん! アモーレの広場で待ち合わせの筈なんだけど……居ないね」

約束の場所にはまだ着いていないようだ。

一応周囲を見渡し、確認する。


「あ、いた!」

噴水の前ではなく少し離れた人気のない路地にそれらしい姿を見つけるローズ。

髪の色こそ淡い水色ではあるが、それ以外をまったく弄らなかったために(眼の色までは見える距離ではない)見慣れた登紀子の姿があった。


「なあ、なんかおかしくねえか?」

ジーナの指摘で登紀子の様子がオカシイことに気づく一行。

死角になり見難いが、どうやら金髪と坊主に刺青のガラの悪そうな人族二人組の漂流者に絡まれているようだ。


「っ!? 急ごう!」










「なあ、いいだろ? 俺らと来いよ。手取り足取り色々教えてやるからよ」


「それ以外も教えてあげちゃうよーん」


「……!!」

ぶんぶんと首を振り、否定の意を示す登紀子。

それで引き下がるようならこのような絡み方はしてこないだろう。


「さっきから一言も発してこないねぇ……ひょっとして?」


「喋れねえのか? ……こいつはいいな……おい、連れてくぞ!」


「へへ……大人しくしてなって」


「!! ……!!!」

無理やり腕を捕まえ、引きずって行こうとする坊主。

必死で引きずられないように抵抗するが、レベル差も相まって力負けしているのは歴然だ。


初めの頃に説明したように、この世界は一部を除いて犯罪行為が可能である。

それは殺しから盗みから詐欺行為と様々なモノがある。


「待ちなさい!」


「ああ!? なんだお前らは」


「二人がかりで一人の女性を攫うなんて最低だな」


「攫う? 俺たちの仲間にそんなことしないよーん」


「仲間だと? それだけ嫌がってるのに仲間? 笑わせるな」


「ちっ。おい、俺たちは仲間だよな、なあ?」


「……! ……!!」

掴まれている腕をふりほどこうと暴れながら否定する登紀子、うっすら涙を浮かべているようにも見える。


「……お前ら見たことがあると思ったが……「奴隷商」か?」


「奴隷商?」


「犯罪者プレイヤーの二人組でネルソディラ人を捕まえて売り払うクズだ」


「……だったらどうなんだ?」


「残念だったな。その女性はプレイヤーだ」


「ああ? コイツのどこがプレイヤーだ? 初心者装備すら着てねえじゃねえか。適当抜かすな」

このゲームは住人とプレイヤーを見分けるのは装備でしか判断しにくい。

一応登紀子も初期装備はあるのだが、魚人専用の装備となっているために人化時の初期装備は住人と同じ服装になってしまう。

故に勘違いをされたのだろう。

ちなみにプレイヤーは同意が無ければ無理やり奴隷にすることは出来ない。

同意がある場合? それは勿論そう言ったロールをしたい人用だ。


「……その人を離して」


「正義の味方気取りかーい? NPCなんだからほっとけよなー」


「欲しけりゃ力づくで来たらどうだ? 出来るんならな」

それなりに腕はあるのだろう。

ローズやギース、ジーナの見た目の相まって侮っていると見える。


「ギース、ジーナ……確認したいんだけど」


「ああ、俺も同じ気持ちだ」


「いつでもいいぜ」


「はは、おもしれえ! やれるもんならやってみろよ、これでも出来るか? おい!」

坊主が捕まえていた登紀子の腕を捻り上げて首を締め、ナイフを首筋に向ける。


「そんなにこの女が大事ならこうしたら手出しできないっしょー?」


「……馬鹿だなオマエら……相手の力量を推し量るのも実力のうちだぜ?」


「馬鹿はそっちだろ? この状況で何が出来るってんだ、ああ?」

自分たちの優位は動かないと信じ、悠々と剣を抜く金髪。


「妙な真似をしたら大事な女が死ぬからな? 動くなよ」


「動く必要なんかないさ……「ランス」」

唐突に地面から槍が飛び出した。

ひっそりと地面に浸透させて隠しておいたようだ。


「げべ!」

登紀子を抑え付けていた坊主が気の抜ける声を上げた。

それに反応して振り返った金髪がみた光景は、股間から口に掛けて真っ赤な槍に貫かれている相方の姿だった。


「な!?」

一瞬何が起きたかまったくわからなかった。

何かの魔術なのだろうか、似たようなもので土魔術のアースピックというものがあるが発動した様子はない。

ビクビクと数回痙攣を繰り返した坊主男はそのまま光に変わって消えてゆく。


自らの優位が無くなった事に気づいた金髪は即座に剣を構え、ブツブツと何かを口ずさんでいる近くに居たローズに斬りかかる。


「いい判断だが、言ったろう? 相手の力量を推し量るのも実力だと」

手の甲に何かうずきのような感覚がある。

振り下ろした手には何も握られておらず、少し遅れて壁にものが当たる音が聞こえる。

何事かと自らの腕を見ると手の甲からナイフが生えており、持っていた剣が壁に刺さっていた。


「は、はあ? なんで、俺の手にナイフが!?」

痛覚設定を低くするとこのような事がおこるようだ。

高すぎず低すぎずがゲームとして楽しむ秘訣だろう。


「やっぱりそのサポート力は反則だよね……「月千一夜」、これでもう逃げられない」

幻想魔術の結界が発動し、辺りを闇に変える。

範囲は路地一帯なので以前よりかは少ない消費でまかなえた。

結界魔術の応用で創られたこの魔術は逢魔のように直接中に転移でもしない限り簡単に出入りは出来ない。

誰かに気づかれたとしても中で何が起きているかは見られることも無い。

最も、犯罪者相手なのだから殺しても罪にはならないのだが。


「あ、え? なんだよコレ! なんなんだよお!!」

慌てふためく金髪の顔面をローズの手が摑まえる。


「……ねえ? 大根おろしは好き?」

生気のない、物を見るような目で男を見つめながら質問をするローズ。


「だ、大根?」


「そ、大根おろし……こんなやつ」

二コリと笑顔を向けるも目は一切笑っていない。


「ひぎ!?」

掴んだ頭を地面に叩き付け、そのまま力任せに引きずりながら走り出す。


「やべ、やべで!」

痛みが低いのがここでも災いする。

ローズが走りぬけるたびに押し付けられた顔の皮膚は摩擦でめくれ上がり、地面に赤い線を付けて行く。


HPは少しずつ減っていき、路地を往復するたびに地面に押し付けられた顔は削れ、中身を露わにしていく。


急激にHPが減れば状態異常「気絶」が出来たのかもしれない。

強烈な痛みが来れば現実に影響が出ないようシステムに強制的に意識が落と(ログアウト)されたかもしれない。

そのどちらも出来ない彼はHPが無くなるまでは決して意識を失うことは無く、削り取られていく自分の頭を低い痛覚設定のうっすらとした感覚の中で感じ取る事しか出来ない。


頭蓋の保護を失い、地面にピンク色の柔らかい塊が付着するようになった時にHPの減りは加速し、LPも減り始めた。

急所攻撃の判定に切り替わったようだ。


HPはあと3割もある。

もはやどこを見ているのか分からない虚ろな目をした彼は一体何を考えるのか。

後悔だろうか。

ガリガリと頭を削られ、脳漿をまき散らし、中身が半分無くなったところで完全に戦闘不能になった。

LPも残り一割を切り、放って置いても減少は止まらない(死に戻りは確定)だろう。

だが、ローズは男の頭を削るのを止めようとはしなかった。


「……!! ……!!!」

それを止めたのは登紀子だった。

方向転換のために勢いを落としたときに登紀子はローズにしがみつく。


「っ!? 秋霧さん?」

そこで初めてローズは冷静になる。

凄惨な現場を登紀子に見せてしまったことに気づき、青ざめた。


「わ、わたし……」


「……」

フルフルと首を振り、抱きしめることで肯定を示す登紀子。


「ごめんなさい……」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



結界を解いて噴水広場に戻ったは良いが、一言も言葉を発さない登紀子にどうしたものかと三人は頭を捻る。


「喋れないデメリットってなんだろうな……」


「会話にならないのは辛いよ」

登紀子は何かを伝えようと一生懸命にボディランゲージをしてくるのだが、如何せん的を得た答えを出すことが出来ずにいた。


「……会話しなくても会話になればいいのにな……フレンド通信みたいによ」


「おいジーナ、今なんてった?」


「え? 会話しなくても会話になればいいって」


「その後」


「フレンド通信?」


「それだよ! でかしたジーナ! ローズ、さっそく申請を!」


「う、うん! ……うん?」


「どうした?」


「名前聞けてないから周辺サーチしたんだけど……近くに居る人何人かも一緒に引っかかってどれかわからないんだけど……」


「あちゃ……」


「一端ログアウトして確認してくる?」


「それはそれで面倒だなぁ……他人にも見せれれば……見せれるじゃねえか!」


「忘れてた! 秋霧さん、この中で貴方の名前ある?」

可視化されたメニューを見て一つの名を指さす登紀子。


「サルビアさんね……申請、どう?」

無事申請が届いたらしく、彼女は承認する。

ローズはフレンドリストにサルビアの名が追加されたのを確認してフレンド通信機能を使用した。


『サルビアさん、どうですか?』

敢えて口に出さないように念話で話しかける。

突然頭に声が響いたので一瞬ビクっとしたがすぐに反応して返事を返してくれた。


『大丈夫よぉ……喋れないってこんなに不便なのねぇ』


「どうだ、ローズ?」

不安そうにジーナが聞いてくる。


「バッチリ!」


「おお、やったな!」

無駄に謎の感動が三人に走った。












「ほえ~……そうなんだ」


「なんて言ってんだ?」


「もう面倒だから全員で申請すれば? いいよねサルビアさん」

コクリと頷く。


「おっしゃ、飛ばすぜ」


「あ、アタシもいいかな?」

サルビアはジーナに向かってニッコリ微笑む。

こうして無言の集会が始まった。

はた目から見ればかなり怪しい。


『なあ、折角だから「きっさ・おぶ・ざ・でっど」に移動しねえか?』


『そうだね』


『あ、そこアタシまだ行ってないんだよな』


『喫茶店ですか? 素敵ですねぇ』

かなり和気あいあいと会話しているのだが……見ている人たちからは無言の集会。

そんな事は一切気にせずに四人は喫茶店へと移動していったのだった。

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