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authentic world online  作者: 江上 那智
冒険の始まり
20/51

万端準備と一層のボス

お待たせしました。

どうぞよろしくお願いします。

後半ちょっと危険なモノが登場します。

やりたかったその3です。

前回の出来事より三日後。


――ネフィルの鍛冶屋「琴月」


「おう、待ってたぜ」


「本当に三日で出来たんですか?」


「フルセットじゃなくても流石に……」


「出来てるさ、久々に張り切ったよ」

よくよく見れば目の下にクマのようなものが。


「徹夜したんですか!?」


「うん? なぁに、こういうのは興が乗ってるうちに終わらせるのが吉だからな。さあ、早くつけて見せてくれよ」


「す、すげぇ……」


――ミスリルグリーブ「疾風」

ネフィルが徹夜で仕上げたローズ用の具足。

速度が上がる刻印が付与されている。

ドラクロワのガントレットのような失われた刻印ではないが、効果は十分に見込める。

魔力を流すことで足裏に風の爆発を起こすことが出来、空中で再度跳躍が可能。

慣れないとエライ目にあう。


――ミスリルガントレット「障壁」

ネフィルが徹夜で仕上げたジーナ用の手甲。

腕の穴を覆わないように気を付けて作成されている。

手も完全に覆わないように工夫が凝らされていて、指と手の平が露出したデザインになっている。

握力が低いジーナの為を思って作られているのがよくわかる。

防御が上がる刻印が付与され、小盾スキルのパリングを使用することが出来る。


――ミスリルグリーブ「金剛」

ネフィルが徹夜で仕上げたジーナ用の具足。

硬度が上がる刻印が付与されている。

また、魔力を流すことでわずかな時間だが重量を増加させることも出来る。

攻撃のインパクトの瞬間に使えば威力を倍加させることも出来るがタイミングは頑張ってなれるしかない。



「足が……軽い? 何もつけてないみたい……」


「おお、このデザインなら指を曲げても問題ないぞ!」


「うんうん、一端の冒険者になったね。二人とも鎧を付けない方が良さそうだから手と足だけにしたけど、問題はないかい?」


「うん! ありがとうございます!」


「わざわざ徹夜で仕上げてくれてサンキュな、ネフィルさん!」


「これが仕事だからな、またいつでも寄ってくれ。もちろん冷やかしでも問題ないからな」


「うん、行ってきます」


「なんか珍しい鉱石があったらもってくるさ」


「期待してるよ」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



さらに数日後。

――スラヴァード城「訓練場」


「「衝打」! 「嵐旋打」! はあああ! 「激昇打」!!」


「それです! ……ローズ様、よく頑張りましたね」

遂にローズはたった一つとは言え、終技までを習得した。


相手の懐へ飛込み、ボディへ強烈な寸勁を浴びせる始技「衝打」。

下がった頭に向けて身体全体のバネを使って左右合わせて5発のフックを浴びせる連技「嵐旋打」。

言ってしまうとこれはデンプシーロールである。

そして、無防備になった顎への渾身のアッパーカットである終技「激昇打」。

地上戦における一つのコンボ技だ。


「……ついに旅立ってしまうのですね」


「まあ、まだまだ覚えたいこともありますから、ちょくちょく帰ってきますけどね」

封印の関係上逢魔への移動はアモーレからしか出来ないようになっている。

ギースによれば転移ポータルは無いとのことだが、代わりに転送屋なるものがある。

これは二層にたどり着いた段階でロックが解除され、スラムの奥でローブ姿の怪しい人物が一回3000Nで請け負ってくれる。

二層につけばいつの間にかアモーレにも出現するので一度行った街には金さえ払えばいつでも行き来が可能になるようだ。

値段が少々お高く感じるが、移動時間なしで街から街にとなればかなり便利だ。

徒歩や馬車移動なら魔物素材も取れるので、移動時間を取るか素材を取るかはその人しだいになる。


ちなみにこの3000N、高いは確かに高いのだが、二層で安定して狩りが出来るなら往復分くらいは直ぐに貯まったりもするので人によっては安い。

あくまで「安定して狩りが出来るなら」だ。

二層についてすぐのパーティでは頑張って三戦ほどで危険区域に足を踏み入れるので、回復アイテムや宿の出費なんかでなかなか3000は貯まらない。

転送屋が安定して使用できるほどの腕前が二層の中堅冒険者たりえる目安みたいになってたりする。


「では、餞別として奥義を一つお見せいたしましょう」


「奥義なんてものもあるんですか?」


「ええ、一度でも見ておけばいずれは使えるようになりますよ。ローズ様ならきっと」


「お、お願いします!」


「すう……はあ……行きますよ? 奥義! 「魔透暗拳殺」!!」

モーションは衝打と同じ寸勁。

しかし、その威力は……。


「え、え? ええええ!!」

拳を打ち込まれた木人は数秒後に全体に亀裂が入り、破裂するように砕け散ってしまった。

これがもし生物に打ち込まれたモノならば間違いなく辺りは惨殺現場と化しているだろう。


「これは相手の魔力回路を断ち、自らの魔力をも流し込むことで相手の身体の内部に魔力爆破を引き起こす奥義です」

今回は木人故、相手の魔力は無く私の魔力のみでしたが。

と笑顔で言われて寒気が走らない人は居ないだろう。

技の使用者の魔力のみでもこの結果である。

条件が万全だったなら一体どうなっていた事か。


「ちょっと……それは怖い……かもしれません」

決まれば間違いなく相手は「死ぬ」。

もし今使えたとしても、「ソレ」を相手に使うことが果たしてローズに出来るだろうか。


「大丈夫ですよ、ローズ様ならこの「殺す」事に特化した技もきっと正しい使い方が出来ると信じておりますから」

まるでローズの考えを見透かしたようなランハク。


「正しい……」


「武器も、技術もそこに意思はありません……あるのは使い手の意思。たとえ包丁でも他者を害せば凶器に成り下がり、料理を作れば名器になる。そういう事ですよ」

ローズはハッとした。

そう、全ては使い手の心がけしだいなのだ。

悪意を以って技を振るえばそれは殺人拳となる。

逆を言えば、たとえ暗殺の技だとしても人を活かす使い方だって出来るはずなのだ。


「……はい!」


「あちらも一段落ついたようですね」


「え? あ、ほんとだ」

視線を移せばジーナが何やら一つ技を習得したと思われ、ランオウにお辞儀をしていたところだった。

これで準備は整った、後は二層に向けてボス戦を残すのみだ。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――アモーレ「噴水広場」。


「んで、どこに向かうかなんだけどよ」

アモーレから東西南北の狩場の奥にはそれぞれボスが存在する。

これを倒さねば二層にはたどり着けない。

また、全てのボスを倒さねば二層の街を全て回ることは出来ない。

という事にはなっていないのでそこは安心だ。


この世界は以前説明したように円形状になっているので、どこか一か所でも潜り抜ければ二層の街は廻ることが出来る。

恐ろしく歩くが。


「俺らの戦力を鑑みて、俺は南の森の奥を目指すのがいいと思う」


「先生、それはどうしてですか?」

北にある鉱山を登山道で登ると立ちはだかるボスはロックバード。

巨大な鳥だ、足場の悪さに加えて人が苦手とする頭上にいるのが厄介。


東の平原を越えるとそこにはグラスハウンドの長。

群れのボスなので周囲には当然取り巻きが居る集団戦になる。


西の廃墟に進めばそこに居るのはアンデッドの群れ。

こっちも集団戦になる上に明確なボスがおらず一定数倒す系のめんどくささ。

ジーナが今でも神聖魔術を使えたならココが選択肢に入ったらしい。


そして最後、蜘蛛の縄張りがある森の奥。

ここで出るのはアンガーベア。

怒れる熊だそうだ。

常にバーサークに掛かっていて攻撃力は高いが、ほとんどが通常攻撃しかしてこず、また一体で襲ってくるので斥候1、前衛2のローズたちにはピッタリのボス。

だったら戦力増やせよ……と言いたいが、今のタイミングでいきなり新しい人を入れて連携が取れるほど柔軟性はない。

特に割と突撃思考なジーナ()と、パーティというものに若干のトラウマを残したギース(人間不信)には酷な話だろう。

いきなりシェイド達と合わせれたローズは割と問題ないのだが。


「なるほどな、力圧しで来るならギースのジャミングとアタシらの火力でどうにでもなるってか」


「そういう事だな……ただ……いや、これは直接見た方が早いか」


「?? まあいいや、じゃあ熊退治だ!」


「「おう」」









「はい、やってきました熊退治! ただ……これ拙くない?」


「だよなぁ……」


「何が拙いんだ?」

確かに現れた熊は熊だった。

何を言っているかわからないと思う。

確かにクマ、茶色い身体をしている。

だが頭がオカシイ。

イカレてるという意味ではない。

筋張っていて緑色しているのだ。

どうしてこれを設置したのだろうかと小一時間運営を問い詰めたくなる。


「あれ……夕〇市の……」


「言うな! まだ黄色くて赤い服着てないだけマシだ!」

決して批判したいわけではない。

だが言わせてほしい、一度見たら忘れられないくらいインパクトがあるのだ。

ぶっちゃけて言うと怖い。

なまらゆるくない(とてもキツイ)マスコットキャラである。


「あんなんでも攻撃力は序盤ぴか一だ! ……ミスリルゴーレムは除いてな」

あれはイレギュラーだ。

なにせ出現は本来三層からなのだから。


「来るぜ」

熊が両手を大きく広げて万歳ポーズをとる。

左右の手による乱打が開始される合図だ。


ミスリルゴーレム(アレ)体験しちゃうとなんか弱く感じるね」


「そうだなぁ……攻撃も鋭さがあるけどアレほど重くないし、よっと!」

ミスリルゴーレム戦でもやった足で攻撃を相殺するアレ。

むしろ相手の手がダメージを負った。


「実際こいつはソロでも勝てるくらい単調だからな」

全員が落ち着き払っている。

ミスリル戦が無ければ結構驚異的なものなのだろうが、ギリギリでも三層の魔物を倒した三人は既に二層の中堅に足を踏み入れる可能性がある程の実力を備えていた。

程なくして熊はLPを全損させ、光になって消えて行く。


「あれ? きえちゃったよ?」


「邪神の眷属は皆こうだぜ。三時間後にはまたここに現れるが、そん時は別に逃げても構わねえ」

一度倒したボスは何度でも再戦が可能らしい。

ローズは消える前にはぎ取った素材を眺めて溜息をついた。


「これ、どうしよう……」


――〇ロン熊のミソ

ジューシーな果肉の部分。

生食可能で食べると甘い。



「経験値的には美味しいらしいがあまり周回したくないボスなんだよコイツ。取れるアイテムも微妙だし」


「けど、なかなかウマイな。こんど子供たちに持って行ってやろうかな」


「食べてるし……一応ドコの部分かは伏せておこうね」


「まあ……ソコは……な」


「取りあえずとっとと抜けちまおうぜ。この先はラビリントだ」


「おお、迷宮都市だね」


「ひさしぶりだなぁ……折角だから潜ってみようぜ、ローズ」


「うん!」


「初心者向けのダンジョンもあるから鍛錬施設としても人気あるんだよな」

ギースは在りし日の情景を思い浮かべて苦い顔をした。


こうして一行は第二層へと無事にたどり着く。

ローズは新たな冒険の気配と、新しい出会いに胸を膨らませて意気揚々と森を抜けて行った。


ボス弱い!

というか三層に出てくるミスリルゴーレム倒したパーティが今さら一層のボスに苦戦する筈がない。

レベルがハッキリ見えたなら適性レベルを大幅に超えているでしょう。

次回で一章が終わります。

ちなみに何故熊があのマスコットだったのか。

運営スタッフの魔物担当の一人が夕〇出身だったという事で納得してください。

今回はシリアスに戦闘させる気は全くない!

うん、私が好きで出したかった!

気になった方は調べて見てくださいね。

結構怖い。

お目汚し失礼しました。

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