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authentic world online  作者: 江上 那智
冒険の始まり
19/51

聖女と孤児院とメッコール

お待たせしました。

先日ご指摘がありました部分も修正してあります。

誤字、脱字。第四部分「聖女とローズ」のジーナのセリフ「肩書すてて」を修正。

第一部分「プロローグ」の最後、急に場面転化もなしにログインするのを修正。少し文字が増えてます。

第九部分「新たな称号と聖女の危機」に、指摘があった吸血を夜人族に使うとどうなるの? の説明をのせました。

なんでソコ? というのはスミマセン。そこが一番自然に繋げれそうだったので……。

ご指摘いただいた方々に深い感謝を!

――アモーレ、孤児院。


「こんにちは、アンデルさん」


「おや、これはローズさん。今日はどのようなご用向きで?」


「あー! ローズ姉ちゃんだ!」


「お姉ちゃんあそぼー!」


「あれ? この人誰だ?」


「? この人見てるとあったかい気持ちになるよ?」


「ちょっと待ってね、私の用事済ませたら遊ぼうね」


「「「「うん!!」」」」

子供たちは元気よくあたりで遊びだした。


「今日は私の用事じゃなくて……」


「そちらのローブの方が私に用ですか?」


「ええ、そんなとこです。ほら、前に来て」


「う……うん」

ローズに促され、おずおずと前に出る。


「そ……その声……まさか……ジーナ?」


「……はい……ご心配かけましたが、私は元気です」


「おお……モロック様に処刑されると聞いて……生きて……生きていたのですね……よかった」


「後は大丈夫だね? 私は皆と遊んでくるよ」


「あ、ああ」

そう言って駆けっこにまざるローズ、孤児院前にはアンデルとジーナが残された。


「そのフードを取ってはくれませんか? あなたの顔が見たい」


「その……私、色々あって夜人族になってしまって……このローブのおかげで今は平気ですが、日の下でフードを取ると火傷を負ってしまうのです」


「……そうでしたか……」


「屋内ならだいじょーぶ! ちょっと辛いけど日の光を避ければ平気ですよー!」

ローズからアンデルにアドバイスが飛んでくる。

それを聞いたアンデルはさっそくと扉を開けてジーナを中へと促した。


(余計な心配かけさせたくなかったのに……)

心の中でほんの少しだけローズに恨み節を投げかけるジーナ。

こうなってしまっては言われた通りにするしかないので中へと入る。


「……久しぶりにお顔を見せてください」


「……はい」

ばさりとフードを取ったジーナの顔を見たアンデルは驚愕し、そして涙を流した。


「なんと痛々しい……それにその腕……」

フードを取るときに軽く袖がめくれたのだろう、目ざとく腕も見咎められた。


「これは磔にされたときの名残です。吸血鬼に……夜人族になるときに負った傷はそのまま正常な身体と判断されるようで、治ることはありません……」


「先ほどから聞くに、あなたは死の淵に瀕していたところを夜人族になることで永らえた……そして、貴方を夜人族へと変えたのは……」

アンデルの視線が窓の外で子供たちと遊ぶローズに向けられる。


「はい、ですがローズを責めないでください。彼女がいなければ私は……」


「わかってます。彼女が理由もなく他者を作り変えるなどという行為をするはずがありません……あなたは素晴らしい友人を持ちましたね」


「……はい!」


「しかし、その目は……見えていないのですよね? あまりにも自然に歩くものですからそのようになっているとは思いませんでした」


「ええ、魔人族だった頃のようには見えていません」

ジーナの眼は物質的なモノの見え方をしていない。

魔力の流れや、物に宿る力を感知して脳内で朧気に映像として投影しているのだ。

なので一応障害物や人などにぶつかる心配はない。

ただ、あくまでも朧気にしか把握できないので詳細が知りたいときは触覚で確かめるしかないのだが。


「……見えているようにふるまわれるのに見えていない……不思議なものですね、痛みはないのですか?」


「この傷に関してはこれが正常なので痛みはありません」


「なるほど……どうやら取り越し苦労だったようですね。本当によかった……」


「アンデル先生……」

ふっとジーナの頭がアンデルの腕に包まれる。


「いいんですよ? 今ここには子供たちは居ません……ですから遠慮しなくても」


「……っ! お……お義父さん……お義父さん! 心配かけてごめんなさい! うう、うあああん!!」


「ええ、大丈夫です。たとえ種族が変わっても貴方は私の大切な子供です……元気な姿を見られるのが何よりですよ? ジーナ……今日は泊まって行かれるのですか? 部屋はいつでも使えますよ」


「う、うう……ど、どうしよう……」

泊まっていきたい。

久しぶりに家族で過ごしたい。

でも……とジーナは悩んだ。

外に居るローズを見ると視線が合った。

彼女は笑顔で首を縦に振る。


「……どうやらお見通しのようですね」


「……うん! 私の最高の親友だよ!!」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



ジーナを孤児院に残したローズはまだまだ日は高いので狩りに行く時間でもないので手持ち無沙汰になった。


(どうしよう……よくよく考えたらジーナとギースを除いたらマクスウェル様しか居ないから行くとこ限られるなぁ……)

うんうんと悩んで、マクスウェルの下に遊びに行くと間違いなく修行が始まるのでギースの所を冷やかしに行くことにした。








「おう、ローズ。ジーナは?」


「孤児院で家族水入らず」


「あー、ならしゃあねえな」


「ギースはもう店じまい?」


「いや? っと言いたいところだが、最近は二層に行く奴も増えたからココじゃあんまり売れなくなってきたんだよなぁ」


「そっかぁ……じゃあ五本頂戴」


「お? まいど。ほれ、五本だ……あ、そうだ。ローズ今暇か?」


「ありがと……あむ……暇ふぁお? もぐもぐ……」


「暇か。これは俺にとって大事な話なんだが」


「??」


「俺と付き合ってくれ」


「!! んぐ!? んぐぐぐ……」


「お、おい大丈夫か? ほれ水」


「ング……ぷは!! い、いいいいいきなりなに言い出すの!? びっくりして喉に詰まらせたよ!」


「俺変な事言ったか? いや、前にロザリンに教えてもらったDrメッコールの所に行きたかったんだが一人だとなんか不安でよ?」


「あー、なんだ……それか……」


「それ以外で何かあるのか?」


(「俺()」なんて言うから告白かと思ったなんて言えない……少し残念だったけど……あれ? 私なんでこんな事考えてるの?)


「?? で、どうなんだ?」


「い、いくよ!」


「本当か!? いやー、恩に着るぜ。ちょっと待ってな、今店たたむから」


(ギースは友達だよね? 年も離れてるし……なんで残念に思ったんだろう……)



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――夜人族の街逢魔、三番通り奥「Drメッコールのラボ前」


「ザ・研究所だね……」


「清々しいくらいにな……」

何処からどう見ても怪しげな機械を開発してます!! という雰囲気のラボが目の前にある。


「と、とりあえずインターフォン押してみようか」


「インターフォンとかここだけ時代を無視してるな……押すぞ?」

機械人族の街は大体こうだが、この辺の街並みからすれば浮いているなんてものでは無い。


「う、うん」


――キンコーン。


……。


…………。


………………。


「でない……?」


「聞こえてねえのか?」


「ギハ! 聞こえてるっさ!」


「「うわあ!!」」

いつの間にか背後にボサボサのオールバックなピンク髪をして、ゴーグルを掛けた白衣の男性が立って……微かに浮いていた。

細かい事は聞いていなかったために吸血鬼だと思っていたが、幽鬼のようだ。

彼が立っている場所はエレベータのようになっている。

どうやら地面が開いてそのようになるらしい。


「んん? んんんん? 人族さ? あー、ロザリンが言ってたのはお前さ?」


「ええっと……アンタがDrメッコールでいいんだよな?」


「質問したのはこっちっさ! しかし、答えるさ! ギハ!! そう、我こそは稀代の機械工学士メッツィ・コールサワー!! 人呼んでDrメッコールさああああ!!」

濃い、かなり濃い。


「お、おう。俺はギース、ロザリンの紹介でアンタを訪ねて来た」


「料理人さ? この天才錬金術師Drメッコールに菓子作りを教授しに来たっさ?」


「肩書変わってるし……」


「言ってやるな……」


「ふむふむ、ここで立ち話もアレさ。研究所に入るっさ」

そう言ってエレベーターを促してくる。


「あ、あの……こっちじゃないんですか?」


「そっちは全部ダミーさ。入り口はここっさ」

表に見える家全てがダミー。

本当の家はダミーの地下に広がっているらしい。

なんと無駄で意味の分からない事をするんだろうか。


「なんて無駄で意味の分からない事を……」


「だから言ってやるなって……」


「さあさ、さあさ、早く入るっさ」


「「あ、はい」」


「では閉じるっさ」

パシュっという空気が抜けるような音と共に地面へと沈んでいく。

着いた先は真っ暗闇。


「な、なんも見えない」


「慌てるなさ、「ライトアップ」さ」

Drメッコールの言葉に反応し、通路に明かりがともされる。

照らされた目の前には長く続く廊下。

ここをどこまで歩けばよいのか考えただけでウンザリする。


「ちっちっちーさ。歩く必要なんてないさ「マリー、料理研究棟まで」さ」


『YES、マスター』


「ななな!?」


「世界が全然違いすぎる……」

ガゴン! という音と共に床が動き始める。


「これに乗れば目的地まで勝手にいくさ、さっそく乗るさ」

浮いているのに彼は乗る必要があるのだろうか?


「ええっと……もう」


「どうにでもなぁれってか……」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――Drメッコールの屋敷、料理研究棟


「しかし君たちも酔狂さ、我に料理を聞くなんてさ」


「科学でしたっけ?」


「そうさ。……ただ、これには理由があるんさ……」


「(なんか厄介ごとの匂いがするぜ?)」


「(同感)」


「なにひそひそやってるさ? まあいいさ。理由をいまから見せるさ」

そう言って着々と準備を進めるメッコール。

用意されたのは普通の材料……。


「ねえギース……私目がおかしいのかな? どう見てもお菓子関係ない材料が見えるんだけど……」


「安心しろ、俺もだから……ん? それはまさか……」


「これさ? 我が開発した調味料さ」


「これは醤油……こっちは……オイスターか! カタクリっぽいのもある……」


「欲しいなら譲るさ、我のお願いを聞いてくれたらさ」


「よし、引き受けよう!」


「え? いいの? 内容聞かなくて……」


「俺が何故焼き鳥をやってるか……それは辛うじて現実のタレと似た材料を発見したからに外ならん! ほかの調味料があるならもっとレシピを増やせる!」


「ア、ハイ」


【クエスト発生:Drメッコールの悩み】


【協力して引き受けますか?】


(おおう……久々に見た気がする……どうしようかな)


「断ってもいいぜ? 必要なのは俺だからな」


「……うける」


【受注しました。期限はありません】


「いいのか?」


「乗りかかった舟だしね、二人分もらえたら予備としてあげるよ」


「……恩に着る」


「引き受けてくれるならこれを見てほしいさ」

そう言いながら手際よく調理を開始するメッコール。

ボウルに卵、塩、酒、醤油、胡椒を入れ、切った豚っぽい何かのローススライスに味を入れる。

そこへ片栗粉を入れて混ぜ、油を入れてさらに混ぜる。


別のボウルに砂糖、酒、オイスターソース、醤油、胡椒、鶏がらスープ、水で溶いた片栗粉を合わせた調味料を入れて、混ぜておく。


鍋に油を入れて馴染ませ、中火で豚っぽい何かのローススライスをほぐすように炒める。

肉に火が通ったら、たけのこもどき、ピーマンのような野菜の順に入れて、炒める。


「ねえ……これ……」


「ああ……」

たけのこもどき、ピーマンのような野菜がしんなりしてきたら、長ネギと思われる野菜を入れて炒める。

長ネギ(?)に少し火が入ったら、合わせ調味料を入れて強火で一気にからめる。


皿に盛り付けてベイクドチーズケーキの完成。


「待てやこら! 今どこにお菓子の要素があったよ!! 行程はどう見ても青椒肉絲じゃねえか!! なんでそれが盛り付けたらチーズケーキになってんだよ!」


「普通にチーズケーキだ……美味しいよギース!」


「違和感なく食ってんなよ!! オカシイだろ!?」


「これが我の悩みさ……」


「……聞こうか」


「最初は普通に料理が出来てた……と思うさ? もう覚えてないさ……でもいつしか……」

昔の彼は普通に料理人だった。

未だ見ぬ食材を求めて旅をする放浪料理人、それが昔の彼。

それが何時からかどんな料理を作っても毒料理になってしまう変な状況になっていた。

錬金術を用いても、薬草学と調合を用いても、覚えたスキル全て駆使しても何をしても必ず毒の入った料理になる。

これは料理人として致命的だった。


途方に暮れていたとき、旅先である機械人と知り合う。

その人は機械人でありながら料理をたしなむ変人だった。

二人は意気投合、そしてメッコールは彼の出した調理器具に目を奪われた。

当時は外で調理するにも石を組み立て、簡易的な竈を造って調理するのが一般的。

だが、彼が持っていた携帯用のコンロなるものはそんな手間を必要とせず、置けば即座に火が使える優れもの。


メッコールは自身の体質を忘れ、その器具を使って料理がしたくなった。

お願いして使わせてもらい、もうすぐ完成というところで料理が毒になってしまう体質を思い出したがもう後には引けない。

仕方ない、事情を説明してとりあえず完成させよう。

そう思ってフライパンから皿に移したとき、皿の上にはホットケーキがおかれていた。

甘くておいしいホットケーキ、毒なんて微塵も入っていない。

機械人は不思議そうにしながらも美味しいと完食。


「……それから我は家にある全ての調理器具を機械人の国から取り寄せたものに変え、お菓子職人として名を連ねることになったさ……」


「色々突っ込みどころしかねえな……」


「お願いさ! 我は普通の料理がしたいんさ! 何を作ってもお菓子になるなんてもう真っ平さ! でも、この調理器具以外を使うと途端に毒が混じるさ……もし叶うなら名声なんてどこかに放り投げるさ!」


「……なんかこう……そうなった原因に心当たりって無いかな?」


「原因さ? あればとっくに……? いや、待つさ……そういえば旅の途中でおかしな獣に付きまとわれたさ……」


「それはどんな?」


「真っ白い大きな狼のような獣さ……我の料理を狙ってたさ……でも、その時は材料が心もとなくて追い払ったさ」


「真っ白な……狼? ギース……心当たり……」


「フェンリルじゃねえか! 神に災いをもたらす狼だよソイツ!」


「「へ?」」


「それだよ原因! お前呪われたんだよ!」


「な……なんてことさ……我は神獣を蔑ろにしたさ……ただでさえ夜人は神に受けが悪いにも関わらずさ……」

がっくりとうなだれるメッコール。

流石に間抜けすぎて声がかけにくい。

むしろ神に受けが悪いからこそ、神々に災いをもたらす狼に一時的でも気に入られた可能性もある。


「一応聞くが、どこに居た?」


「あ……あれは確かアモーレから東に向かってひたすら進んだ先、第三層の東にあるイアールンの森さ」


「さ、三層!?」


「俺たちにはまだ荷が重いか……」


「た、頼むさ! 時間はかかっても良いからフェンリルを探してほしいさ! 見つけたら教えてくれれば我は謝罪にいくさ!」


「……どうする?」


「どうするっても……受けちまったからにはやるしかねえだろ」


「恩に着るさ!」


「ところで、どんな料理してもお菓子になるならこの調味料は?」


『私がデータをもとに調合いたしました』


「うわ! 急に喋んなよ!」


『sorry、申し訳ありません』


「今本人が言った通り我が配合や作成法を考えてマリーが実践して出来たものさ」

もう普通の料理はマリーにやらせればいいんじゃないか?


「ねえ、それって普通の料理をしたいならマり……モガ!!」


「(言ってやるな、自分で作り出してこそなんだよ料理人てのは)」


「(……うん……)」


「約束通りフェンリルを見つけ出したら調味料を差し上げるさ。気長にまつさ、なにせ諦めていたことが改善するかもしれないからさ。いつまででも待つさ」


「おう、時間はかかるかもしれねえが必ず吉報を届けてやるからな」


「お願いするさ」

こうして奇妙なクエストが開始されたのだった。

補足。

幽鬼は日中出歩いても問題は無いです。

実体化するのに消耗が激しいだけでデイウォークは特に無くても問題はありません。

夜は常に実体化状態でその間は微妙に地に足が付いていない事を除けば普通の人族と殆ど見分けがつきません。

五感もしっかりあるので普通に食事もかのうですが、夜人族的には酔狂な輩にはいりますね。

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