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authentic world online  作者: 江上 那智
冒険の始まり
18/51

戦利品と防具依頼と

明日と明後日は更新できそうにないです。

申し訳ありません。

ふおおおおお! ブクマ500超えてる!?

読んでいただいている皆々様、本当にありがとうございます!!

――北の鉱山、ダンジョン「ボス部屋」


「ローズは大丈夫なのか!?」


「ああ、咄嗟にガントレットで受けたようだ。HPがドットで残ってる、これはただの気絶だ」


「ドット? よくわかんねえけど無事ならよかったぜ……あ、あれ? 足が……」

安心したせいかヘナヘナと座り込み、立てなくなるジーナ。


「おいおい、どっちかって言うとお前の方がやばいんじゃねえのか?」

Bポーションをローズにふりかけながらギースは問う。


「問題ねえよ、ちょっと衰弱の状態異常が付いてるだけだ」


「問題しかねえよ! ほっといたらヤベエじゃねえか! ったく、ライフポーションはデメリットで効きにくいんだったか? ……なあ……ひとつ聞くがデメリットはライフポーションだけか?」


「あん? ……たしかそうだったはずだよ」


「そうか……(確か人族の血はLP回復するんだよな? ……よし)」

おもむろにギースは自分の腕を斬りつける。


「お、おい! なにしてんだ!?」


「ほれ、黙ってコイツを飲め! 嫌だとか抜かすなよ?」

ずい! と口元に腕を差し出すギース。

初めは難色を示していたジーナだったが目の前に新鮮な血液がある以上その誘惑に抗う事は難しく……。


「くっ、ああ! ちくしょう! はむっ」


「い! たくねえ? なんで牙つきたてんだよ」


ほんはほほいっはっへ(そんなこと言ったって)……はっへは(勝手が)はははへぇんはほ(わからねえんだよ)……(すげぇ……どんどん回復してくのがわかる……)」


「ちっ……まあ、痛くねえしポーションも使ってねえから別にいい。ライフポーションだって俺が使えばデメリットもないしな」


「む……ちゅ……んぐ……ぷは! ……さんきゅな」


「ん? もういいのか? まだ全快じゃないだろ」


「いや、衰弱が抜ければ問題ねえ。(それに……なんか恥ずかしい)」


「なんか言ったか?」


「いや、なにも」


「おわった?」


「ああ、ジーナも回復したし後はローズ待ちだぜ? ローズ……え?」


「そうだなローズ、後はお前が起きれば問題ないぞ……え?」

二人は恐る恐るローズが倒れていた方に視線を向ける。

そこにはニヨニヨと笑みを浮かべて座っているローズの姿。


「「起きてるうううう!!」」


「い、いいい、いつから!?」


「『黙ってコイツを飲め! 嫌だとか抜かすなよ?(キリッ!)』あたり?」


「殆ど最初じゃねえか!! ってかそんな「キリッ!」なんかしてねえよ!」


「いやー、回復のために有無を言わさず血を吸わせる……漢だねぇ」


「止めて! 言わないで! 俺恥ずかしい!」


「顔を真っ赤にしながら懸命に吸うジーナもドキドキしちゃったよ」


「忘れろ! 忘れてくれ! アタシ死んじゃう!」

ぎゃあぎゃあと散々喚き合った三人は一度落ち着きを取り戻す。

一端落ち着いた事でギースは先ほどのローズの行動を思い出し、だんだんと腹が立ってきた。


「なあ、ローズよう……」


「なあにギーすっ!! いったぁい!!」

ローズの脳天にギースの鉄拳がさく裂した。

ローズは頭を抑えて涙目になりながら上目遣いで恨めしそうにギースを睨む。


「お前、自分が何やったかわかってんのか?」


「それはアタシも一言いいたかった」


「え? え? 私怒られてる!?」


「怒るに決まってんだろが! なんであんなことした!」


「ふえ! ……だってぇ……」


「だってじゃないよ! アタシは動けないし……本当に心配したんだからな!」


「で、なんで俺の代わりに攻撃を受けた」


「な、なんか身体が勝手に動いちゃいました!」


「……はあ……」


「いったぁぁ!! ジーナも酷い!」

腕か使いにくいのでかなーり手加減した踵落とし。


「それじゃ納得がいかねえんだよ、俺もジーナも」


「自己犠牲は美徳だぜ? でもな……お前が傷ついてアタシらが思うとことが無いと思うのか?」


「う……それは……ごめんなさい……」

身体が勝手に動いてしまったのは本当だろう。

これはローズの……いや、陽子の心がそうさせるのだから。

事故で大切な両親を失った彼女は「死」というものに過剰に反応する。

病によって徐々に親しいものが離れて行った彼女は「友」を過剰に大切にする。


自由に動け、好きな事が出来る世界。

ジーナやギース、マクスウェルなど新しく出来たかけがえのない人たちと気のすむまで話が出来る世界。

そんな素晴らしい世界で彼女が忌避する「死と別離」、それを許すことは出来なかった。

目の前の大切だと思っている人が居なくなる。

そう考えただけで勝手に涙がこぼれそうになるほど、現実の陽子の心は打ちのめされていたのだ。

頭ではない、本能に近い心の奥底の出来事が彼女の捨て身の行動の理由であり、全てである。


「……ま、全員無事だったからいいけどよ」

それはギースのトラウマを払拭するか否かのレベルの出来事。

仲間の裏切りによって死に戻った事がある彼は、再び似たような状況で仲間の献身で救われた。

それは、どこまでもお人よしでトラブルを持ち込む、この小柄な彼女の側にいて守ろうと思うには充分なことだった。


「あ……」

ぽふっとギースが頭に手を乗せる。


「……もうやめてくれよな……あんなこと」

少し哀し気な顔でローズの顔を覗き込み、懇願するように伝えるギース。

純粋に心配してくれているというのがハッキリわかった。


(この人は私をちゃんと見てくれてる? ……もしそうなら……)

現実でも会いたい、ほんの少しだけそう思ってしまった。


「ギース……あのね?」


「ん? どうした?」


「……もし……もし私が……私がね……」

病院で寝た切りだったらどう思う? 満足に喋ることも出来ず、今みたいな身体じゃなくて枯れ木見たいな見た目でも友達でいてくれる?

ローズはその言葉を言いかけて、飲み込んだ。

万が一、ギースが親友だった人たちと同じく離れて行ってしまったら?

現実の私を知って嫌になり、この世界でも離れてしまったら?

そう考えると二の句が継げなくなった。


「……? なんか言いにくい事なんだな……言える時が来たら教えてくれ」


「……うん……」


「あー! 湿っぽい!! ローズ、ギース! 動けるようになったなら探索するよ!」


「お、おお? あ、ローズ。ミスリル拾ってかなくて平気なのか?」


「あ! そうだった……え? 拾うってどういうこと?」


「あのゴーレムの残骸だな、一応拾いやすいように集めといたぜ」


「うわ……スゴイ量」


「やっぱここダンジョンみたいだけどダンジョンじゃねえな」


「どういう事?」


「ダンジョンはダンジョンコアの魔力で維持されるんだがな」

ダンジョンの魔物はこのダンジョンコアが魔力を使って生成する。

倒された魔物は一定時間たつとダンジョンに食われて魔力に還元され、再び生成される。

この繰り返しで成り立っているのだ。

勿論ダンジョンで力尽きた冒険者は遺体をダンジョンに食われるので装備品以外は見つからない。

漂流者は例外だが、概ねこのシステムでダンジョンは成り立っている。


「随分時間立ってるのに消えないもんな」


「道中のゴーレムも復活する兆しが無かったからな……本当にここは防衛施設なんだな」


「持ち切れないよー」


「ああ、待て。俺のストレージに入れてやるから」


「ありがとう!」


「んで、この奥なんだけどよ」


「調べたの?」


「お前らがしんみりしてる間にな」


「ごめんなさい」


「いや、それはいいよ。で、奥には扉があった。入って来たのとは違って凄い質素で普通の扉が」

ジーナが言う通り奥には入って来た扉とは明らかに違う取って付けたような扉があった。

眼が見えないのにどうやって? 触ったに決まっておろう。


「この場所を守ってたにしては豪勢なボスだったが……」


「とりあえず行ってみよう」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――北の鉱山、ダンジョン最奥「???」


「なにここ」


「研究施設……とは何か違うな」


「ギース、ローズ。宝箱みたいなものがあるぞ」


「それは宝箱だね、見て見ようか」


「罠は……ねえ……か? 専門じゃねえから自信ねえな」


「大丈夫だろ、一撃で粉微塵とかになるような爆破トラップでもなければアタシらをやれねえって」


「それ、お前ら無事でも俺がヤバイっつの」


「ローブが入ってたよ、あと手帳」


「「しれっと開けるなよ!」」


「ふえ!? ご、ごめんなさい……」


「ったく……どれ、ローブは……なんだ? 試作宵闇のローブ? 製作者が読めねえ……どんだけ高レベルなんだよこれ」


「手帳に何か書いてないかな、一緒に入ってたし」


「読んでみようぜ。あ、出来れば朗読で」


「ろ、朗読!? 音読じゃだめ?」


「ちっ」


~ ~ ~ ~ ~


宝を取得せし者へ。

願わくばそれが悪用されぬように祈る。

それは夜人族の者が昼間でも活動できるように作られた夜の力を閉じ込めたもの。

私が創り上げた幻想魔術は確かに強力だ。

だが、強力であるがゆえに打ち破られた時には窮地に追いやられるだろう。

そのローブはその時の保険だ。


しかし、幻想魔術が強力すぎたのか夜の力の一部分のみしか籠める事が出来なかった。

太陽のダメージこそ受けなくなるものの、力は依然半分のまま。

これは完成とは呼べぬ代物だ。

それでも太陽のダメージが無いだけでも違うと思う。


もし、このローブが悪人の手に渡り、術式を解析されれば幻想魔術を無効化する術を見つけられる可能性があるために私は守護を置き、ミスリルの枯渇した鉱山の奥であるここに隠した。

他の資源は取れるが、重要なミスリルが取れない鉱山には誰も足を踏み入れたくはないと思ったからだ。


マクスウェルはそのような事がないと言うが、初代のように種族を憂いて邪神の誘いに乗ってしまうものもいる。

当然私利私欲で他種族にこれを売り払うやつが出ないとも言い切れない。

だから私はここに隠した。


物はコレ一つ。

いつまでも隠せるものとは思っていない。

いつかは見つかるだろう。

故に願う。

このローブを手にしたものが、夜人族にとって協力的であることを。


                             ロア・スラヴァード

~ ~ ~ ~ ~


「スラヴァードって……これ……」


「結構……」


「厄介な代物だなぁオイ……」

三人は溜息をつく。


「ま、まあ私たちが見つけたのは何かの運命だと思って使わせてもらおうよ」


「だ……な。そいつはジーナのだな」


「いいのか? マクスウェル様に渡さなくて」


「いいんじゃない? マクスウェル様ならきっと「手帳で十分」とか言いそうだし」


「言いそうだな、あのおっさんなら」


「じゃあ遠慮なく……装備っと……なんかしっくりくるな」


「これで昼間に孤児院行けるね」


「あ……ああ……そうだな……」


「もう腹くくれって……あの事件から結構経ってんだしよ」


「……うん」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――夜人族の街逢魔、ネフィルの鍛冶屋「琴月」


「こんにちはー!!」


「こ、こんにちは」


「お? 久しぶりだな。そっちは初めてか? 調子はどうだ? こっちはやっと店の名前が出て気分がいいぞ」


「メタい!? っと、こっちはジーナ。私の親友」


「ジーナです、初めまして」


「ああ、聖女さまだろ? 知ってるぜ、宜しくな。アタイはネフィル、しがない鍛冶師さ。んで、今日来たって事は?」


「職業につきました! 戦技も二つ!!」


「おー、頑張ってるじゃねえか。見せてみ?」


「はい」

メニューを可視化させ、証拠をみせる。


「……ドラクロワ流格闘術とか……また渋いな……それになんだコレ、連鎖闘士? 珍しい職についてるじゃねえか」


「へへ~、頑張ったもん!」


「そうかそうか……しかし、ドラクロワ流格闘術か……なら余計な装備を造れねえな」


「そうなんですか?」


「ああ。あれは身軽さがモノを言う格闘術だから鎧との相性はそんなに良くないんだ」

言われてみれば確かに「受け流し」やカウンター系の技はランハクに見せてもらったが、純粋に「受け」となる防御技は見たことが無い。


「となると……作るのは具足だけかな。それ以外は余分になるから基本的な装備は全てロザリンに頼むといいぞ」


「そうなると鉱石余っちゃいますね」


「ん? どんだけ持ってきたんだよ」


「えっと……こんだけ」


「おいおい、どっからこんなに調達してきたんだ?」

この辺りではもう二度と手に入らないので入手経路をネフィルに伝える。


「はああ!? ば、馬鹿なのかお前! ミスリルゴーレムって言ったら三層の魔物じゃねえか! ……よく死ななかったよ……本当に……」

この世界はアモーレを中心にバームクーヘンのような輪っか状の積層構造。

アモーレと周辺の狩場が一層。

それを超えると第二の街があり、そのさらに奥には第二の狩場、これが二層。

と、このように街、狩場、街、狩場の繰り返しとなる。

外側に行けば行くほどフィールドが広がっていく形だ。

また、一層から二層に抜けるには邪神の眷属を倒す必要があり、ある程度の力量が無いと行くことが出来ない様になっている。


「強いわけだよ……」


「三層なんてアタシも行った事ないぞ……」

そんなに深い層の魔物とは知らなかったので今になって身震いする。

知らぬが仏とはまさにこの事だ。


「ジーナはそっちが素か? 敬語が面倒ならそっちで構わないぜ? ……こんだけあるならついでにジーナの装備も作って後は買取でもいいぞ」


「本当?」


「ああ、結構上質なミスリルだから需要は結構あるしな。ジーナのスタイルを見せてもらっていいか?」


「ぬ、脱ぐ必要はあるのか!?」


「ば! ちげーよ! 戦闘スタイルだ! 戦闘スタイル! いや、まあサイズ調整に軽い採寸はさせてもらうが」


「あ……そっちか……はいよ」

ローズと同じく可視化する。


「ふうん……我流蹴脚術ねえ……よしわかった! あとは採寸を」


「脱がなくていいんだよな?」


「まだ引っ張るか! 一応そのローブだけは外してくれ……なあ、コレ平気なのか?」


「ん? この穴か。腕の感覚は薄いし力もほとんど入らないけど食器程度なら持てるぞ」


「なるほど……ちょっとコレを付けてもらえるかい?」

手渡されたのは重厚なガントレット。


「握ったりは難しいけど、普通に腕を動かす分には気にならないなぁ」


「そうか……ならこれを造ってアレをアレして……よし! 二人分合わせて三日で仕上げよう。金額は素材持ち込みだから……7万だな。残ったミスリル全部くれるなら相殺できるぜ?」


「じゃあそれで。いい? ジーナ」


「ああ、鉱石持っててもアタシらじゃ使えねえし」


「おっけー。んじゃ三日後の……朝には用意しておくよ」


「ありがとう!」


「さんきゅー!」


「またご贔屓にーってね」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――スラヴァード城、談話室。


「ふむ……これは確かに先代のものだな」


「筆跡も間違いないですね」


「しかし、突然いなくなったと思えばそんなことをやっていたとは……この手帳は貰ってもよいか?」


「はい、私たちが持っていても仕方のないものですから」


「ローブはいいのか?」


「よい、其方たちが有効に使ってくれ。そのうち遠くへ冒険にいくのだろう?」


「はい、もっと広い世界をみたいので」


「ではその前にせめて一つでも終技まで習得しましょうか」

気が付けばランハクがローズの背後に立ち、がっしりと肩を捕まえている。


「うえ!? は、はい……」


「あー、アタシも少し鍛えなおしたいかもな」


「ならばランオウが相手をするといい」


「かしこまりました」


「お? いいのかい?」


「ああ、構わんよ」


「ではさっそく参りますか?」


「望むところだな」


「よい心がけですね。ではランハクほどではないですがドラクロワ流格闘術の手ほどきをいたしましょう。安心してください、ローズは手技を主体としてますがドラクロワ流格闘術には蹴技も存在しますから」


「げ! お、お手柔らかに」


「大丈夫ですよ、ランハクほど鬼ではないので」


「お姉さま? そう思っているのはきっとお姉さまだけですよ?」


「あらランハク、そんな事ないですよ?」


「……マクスウェル様……アタシ生きて帰れっかな」


「まあ、頑張れ」

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