最前線漂流者と神代魔術
冒頭で私の他の作品の人が出ます。
たまーにしか更新しない作品なんで気にしないでください(笑)
――アモーレの喫茶店「きっさ・おぶ・ざ・でっど」
「どーいたどいたーデスぅ! デッドライジングパフェお待ちぃデス!」
「ままま待てフラン! 腕、うーで! 落としてるって!」
「おお! 吉良、ありがたやデスぅ!」
~ ~ ~ ~ ~
「なんかにぎやかな所だね」
「まあ、味は良いから俺も気に入っては居るんだがな」
「あの娘は魔物?」
「ああそうだ。吉良とかいう漂流者のテイムモンスらしい、アンデッド種だとさ」
「テイマーかぁ……アレはあれでなんかいいね」
「噂じゃあの吉良ってテイマーは妙にアンデッド種に好かれやすいらしいぞ。なんか好かれる要素でもだしてんのかね」
「あー、たまに吉良さん? を食べたそうな顔してるから単純に美味しそうだから近くに居たいとか?」
「ああ……本当だ……涎垂らして見てら……そういう事もある……のかなぁ……」
「愛しい貴方が食べたいとか」
「俺は勘弁だな、それ」
突然フランというウェイトレスが動かなくなるのでどうしたのだろうと眺めていると、涎を垂らしながら主をじっと見つめている事がある。
その熱いまなざしは愛情すら籠っているようにも感じた。
「よっ、久しぶりだなギース」
ツンツンに逆立てた燃えるような赤い髪が特徴的で、それに負けないくらい威圧感を放つ鬼を模った甲冑に太刀を背負った大男、侍ゴドー。
しかし、彼の持つ太刀は太刀というにはあまりにも尺があった。
ぶ厚く重くそして長すぎた。
それはまさに物干し竿のようであった。
(ふおおおお、カッコいいかも!?)
「お待たせしたみたいだね」
ファンタジーな世界観に迷い込んだSFチックなフォルム。
全身を覆うフルプレート鎧のような身体は正にロボットと言って差し支えない。
その両手には取り回しやすい小盾がくっついている。
喋る声には合成音声のようなエフィクトが掛かっているが、その物腰は柔らかく感じ、どこか落ち着いた年上のお兄ちゃんな雰囲気を出している男、盾使いシェイド。
(あれ? どっかであったことある?)
「フランちゃーん、WWZサンデー一つおねがーい! (はーいデスぅ!)」
でかああああい! 説明不要!!
とでも言われそうなほど、はち切れんばかりに自己主張した双丘。
それを豪胆にも上半分のみ覆う形で露出した挑発的なトップ。
ボトムはボトムで下着が見えるほどの超超ローライズホットパンツ。
というかボタンもファスナーも開けてる段階で見えるほどではなく「見せてんのよ」である。
それにマントを羽織るというどっからどう見てもHEN・TAIですありがとうございますな女性エルフ、ナタリエ。
(うわぁ……私も背があの人くらいあったらああいう服装もありだったかな? いや、無しだな)
「ふむ……ギース君、毒料理というものに手を出してみる気は無いであるか? (お断りだ馬鹿野郎!)」
人狼というには線が細く、武骨なイメージがない。
服装もワイシャツにベストにスラックス。
その上から白衣を着て、顔には丸い眼鏡。
アニメとかに出てくるザ・科学者! といった出で立ちで言動以外に怪しいところは見当たら……訂正。
白衣の裏は大量のメス、そして弾帯のような形をした多分アイテムポーチには試験管に入った紫色の薬品群。
お巡りさん、この人危険物持ってます、なファンブル。
(普通の科学者? あれ? 錬金術師じゃなかったっけ? ……どう見ても錬金術じゃないなぁ……器用な人狐の方が良かったんじゃ……人をだましそうな雰囲気してるし)
「あ、あの……よろ、よろしくおねがいしますですハイ……」
なんだろう、この可愛い生物は。
すわ、自分と同じ人種か!? っとローズは思ったが、ローズはロリ巨乳属性だ。
しかしこいつは生粋のロリ属性だ、その差はかなりデカい。
何が? とは言わない。
おどおどとした態度は庇護欲を嗜虐欲を掻き立てる。
真っ白な耳付きローブに身を包み、某最後の幻想なRPGのような白魔導士を彷彿とさせる。
手に持った杖はちょっと大きすぎるんじゃない? と感じるが多分一般的なサイズなのだろう。
「この杖どう思う?」「すごく大きいです」なんて言わせた日には間違いなくお縄になるだろう魔人族のアメリア。
(か、かわいい……)
それしか出てこない。
うん、まったくもって濃ゆい面々である。
「おう、揃ったな? ローズ、改めて紹介するぜ。赤髪がゴドー、ロボがシェイド、露出狂がナタリエ、胡散臭いのがファンブル、んで、このちっこいのがアメリアだ」
「ざっくりだなオイ!」
「ロボって……」
「この完璧ボディを見せないなんて世界の損失よ!?」
「胡散臭いとは失礼であるな」
「ふえ!? ち、ちっこい……」
口々に文句を言うがギースはどこ吹く風だ。
「んで、こっちのがローズだ」
「よ、宜しくお願いします……」
「か……」
何やらナタリエが震えている。
「かー! 勿体無いわねぇ! そんなにいいモノ持ってるならもっと出しなさい! 強調しなさい! それはもう武器よ武器! パッと見はFね、それ天然? アバター弄ったの? たしかサイズは一段階しか増減出来ないから実際はEかGって事? えい! 「うひゃう!?」 うーん……揉んだ時の感触は直感で天然物……いいわね! 天然もの!!」
どうやら胸の事を言っているらしい。
現実のローズの胸は過度の栄養不足と運動不足、そして病気の影響で最早見る影も無いが、間違いでもない。
「うぁ、やめ、ふにゃ、うぅ……」
無造作で、それでいて気遣うような絶妙な手つきで背後から掴まれ、いじり倒されている。
いやらしさは感じないのに、心地よい触り方に抵抗空しく身体の力はどんどんと抜けていく。
なぜだろう、まるで母に包まれているかのようだったというのは後のローズの言である。
「落ち着け変態が!」
「あだ! いったいわねゴドー、なにすんのよ!」
「公衆の面前でセクハラすんじゃねえよ、シェイドが立てなくなってるだろうが! (ええ!? なってないよ!?)」
「眼福過ぎて立てなくなりそうなのはアンタの方なんじゃないの? イヤラシイ、なんならそんな気持ちにならないように、その節操のないイチモツ潰してあげるわよ?」
「あ”? やれるもんならやってみやがれ! その前にその目障りなシリコンマシマシの豊胸駄肉を斬り落としてやる!」
「豊胸ですって!? これは天然よ? あああ! あったまきた! PVPよ! 表へ出なさい!」
「望むところだ! 行き遅れの変態処女露出魔め!」
「言ってはならない事を! それを言ったら戦争じゃない! それに25はまだセーフよ!」
「は! セーフだ? 言ってろ耳年増ぁ! なんなら俺のマサムネで開通式してやんよ!」
「キィー! だったら二度と勃たないようにソコだけ焼き尽くしてやるわ!」
「ストーップ! 二人とも落ち着いて! ほら、ローズさんが怯えてるよ」
「「あ」」
随分と愉快な人たちのようだ、これでパーティが成立してるんだから面白い。
今のやり取りで大体は見えた。
シェイドがまとめ役だ。
アメリアは性格上入りたくても入れない。
ファンブルはあきれ顔はするものの、よっぽどのことが無い限りはシェイド任せな雰囲気だ。
「狂乱」と言われているようだし、微妙に変な言動もあるが常識枠で間違いなさそうだ。
しかし、気性の荒い二人はよくも悪くもこういった事を仕出かすのだろう。
だが、この気性の荒さは上手く使えばかなりのアドバンテージになる。
競わせて敵地に放り込めば勝手に暴れてくれるのだから。
しかも個々の実力がかなり高いから、一見無謀にも見えるソレがまかり通るのだ。
「はあ……相変わらず苦労してんなシェイド」
「そう言うならパーティに戻ってきて欲しいね」
「あの中に? 無理だぜ、今の俺じゃ間に入ったら一瞬で死に戻る」
「それは蜘蛛祭りのパワーレベリングで」
「っと、それだ」
「え?」
「今回おまえらを呼んだのはこのローズが蜘蛛素材を欲していてな」
「アイツの素材を?」
「しかも織物の方だから単純な魔術による火力戦だと出ねえんだわ」
「ああ、なるほどね」
「そう言うこった。じゃローズ、詳しい話は自分で詰めてくれ」
「ギースは?」
「俺か? そろそろ屋台の仕込みをして金稼がねえとな。店の資金は貯まったが、今使うと改装すらできねえからな」
「魔物狩りに一緒にくればいいんじゃない?」
「いや、出来れば露店の売上でやりてえ。これは俺の我儘だ」
「うーんそういう事なら仕方ないか。そのうちまた狩りに行こうよ、βの時みたいにさ」
「ま、考えとくわ。んじゃなローズ、おれも三日後にはジーナの見舞いに行くからよ」
「うん! ありがとうギース」
「じゃあな」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「と、言うわけでぇぇぇ!!」
「蜘蛛の縄張りよおおお!!」
「「イエェェェェェ!!」」
喫茶店で喧嘩していたとは到底思えない。
実はかなり仲がいいのでは?
「は? え? なんで? いつの間に森?」
とりあえず、ローズがどれだけ戦えるのかを見たいという事になり、それ如何によっては蜘蛛退治には連れて行くがある種の護衛依頼のような状態になる。
筈だったのだ、筈だったのだが……。
「うん、ごめんね。僕たちのパーティ……というかあの二人が頭使うの嫌いでさ……」
「実力見たいなら現地でやったら織物も手に入るし実力も解るしで完璧じゃーん! と素で言い放った脳筋であるからな」
「現地に行く前に実力を見るために現地に行く……なにそれ?」
そう、蜘蛛退治のための実力を見るために蜘蛛退治をするという意味不明な結論で今に至るのだ。
まるで謎かけのような答えにローズは頭を抱えた。
「はう……お二人が申し訳ないですぅぅ……」
「いや、別に否はないんだけど、急展開過ぎて頭が追い付かないだけ……アメリアさんのせいじゃないよ」
「ところで、ギースからざっくりとは聞いているけども、夜人族? だったっけ? 昼間はステータスが半減するらしいけど、大丈夫?」
「え? ああ、一応このガントレットで補正はかかってるので攻撃面は大丈夫だとは思います。防御面で言えば森の中も日がささないので少しだけ再生はしているからいきなり致命傷を食らわなければ」
「ふむ……中々に頑丈なようであるな……今度吾輩の薬の実験体に「お断りします」……残念である」
「おっしゃあ! まずは俺たちの戦い方を見せる! ついてこられるかどうかはそれを見て決めろ! 一っ番槍いただきいいいい!」
「あ、コラ! ずるいわよ!!」
「早いもん勝ちよぉ! お? お誂え向きに指揮官付きだぜ! しゃあ、これが俺の全力よ!」
そう言ってゴドーは勢いよく蜘蛛の群れの中心部に突貫していく。
「……シェイドさん……私が軽く一戦やって合わせるか護衛かの判断だったのでは?」
「うん……の、はず……だったんだけどねぇ……」
「まあ、アイツらに戦場を前にさせてお預けは無理であるな」
「うう……ごめんなさいです……」
なんだかんだで協力してくれる辺り、ギースの言った通り良い人達なのだろう。
良い人たちだとは思う。
そうこうしていると蜘蛛の群れの中心から雄叫びが聞こえて来た。
「いっくぜぇぇぇ! 【修羅の道】! 【骨断肉斬】! 【捨て奸】!」
「あっちゃあ……」
「あれは張り切ってるであるな」
「後先考えてないですぅ……」
「あれは何!?」
「それは私が! 解説しましょう!」
絶対お前ら付き合ってるだろ! と呆れを含んだ目でナタリエを見るローズ。
「お願いします」
「まず【修羅の道】なんだけどね」
――【修羅の道】
職業:侍のアクティブ戦技スキル。
回復することなく「生物」を100体連続で斬り殺すことで覚える事が出来る。
「修羅道とは、斬ることと見つけたり」
攻撃力倍に跳ね上げ、無心になり目の前の敵をただ只管に斬る事に集中する。
味方が近くにいると巻き添えを食らう可能性があるので使用するときは注意が必要。
倒せば倒すほど攻撃力にボーナスが入り、同時にどんどん斬殺マシーンになる。
※味方すらも敵に見えてしまう。
効果終了後、3時間は攻撃力が1/3にまで下がる。
効果は10分間、もしくは戦闘終了。
クールタイム:効果終了から30分。
――【骨断肉斬】
大太刀のアクティブ戦技スキル。
「肉を斬らせて骨を断つ!」
自らの身体で攻撃を受け止め、100体を反撃で斬る事により覚えることが出来る。
素早さを代償にして防御力を倍に上げる。
効果終了後、3時間は防御力と素早さが1/3まで下がる。
効果は10分間。
クールタイム:効果終了から30分。
――【捨て奸】
職業:侍のアクティブ戦技スキル。
「相手にとって不足なし、命捨てがまるは今ぞ」
HPが尽きても戦闘不能にならず、LPが尽きるまで戦い続けることが出来るスキル。
仲間を逃がすために死地に留まる事で手に入る。
効果時間中は怯むことが無くなり、痛覚100%カットの無痛状態になる。
効果は戦闘終了まで。
戦闘終了時にHPが尽きていればそのまま戦闘不能になる。
また、効果終了時にHPとLPの最大値が一日の間半分になる。
クールタイム:24時間。
「というスキルね!」
殴りたい、ナタリエのそのドヤ顔。
「めちゃめちゃ切り札じゃないですかヤダー!」
「うん、【捨て奸】まで出したなら今日は使い物にならないよアレ……」
「バカであるな。まあ、蜘蛛如き吾輩たちが残っていればなんとでもなるである。一応スキルデメリットを消去するアイテムもあるにはあるであるが、使えばこれまた役立たずになるである」
これも謎かけだろうか? スキルデメリットを消せたなら再び戦えると思うのだが。
『おおおおおおああああああああ!! クビオイテケェェェェ!!』
その戦いぶりは修羅というかバーサーカーといった方がいい気がする。
ちょっと、とある妖怪も混じってるが気にしてはいけない。
一応シェイドがいうには他はまあ別としてもアレは本当に切り札で、撤退戦などで効果を発揮するらしい。
要するに完全な囮で捨て駒だというのだから割り切っている。
使われる本人も好きなだけ暴れての死に戻りなら否は無いそうで、本人がいいならいいのだろう。
この辺の蜘蛛程度ならもうアイツだけでいいんじゃないかな?
「はあ……はあ……どうよ?」
「スゴイデスネ」
「がーはっはっは! だろう?」
清々しいまでの脳筋である。
「次は私ね」
(これ……全員分やるの?)
そう思った時にシェイドから袖が引かれる。
「ボソ(とりあえず僕とファンブルとアメリアの三人でも蜘蛛退治は容易いから安心して)ボソ」
どうやら脳筋組で終わりのようだ。
ならば安心だと思い、ナタリエの戦いを見守ることにする。
「来たわね? いくわよー」
眼を閉じて前にかざした手の平から魔法陣が浮き上がり、風も無いのに彼女のマントがはためく。
『風は火に力を与え、水は土に活力を与え、光は歓喜の朝を産み、闇は静寂の夜を創る』
「!!? マズい! あの馬鹿女!!」
「え? え? 何?」
「アメリア、急いで結界を! 範囲極小で僕らを覆える範囲に密度最大、規模は4重!!」
「は、はいですぅ!」
「ローズ君、伏せるである!」
メンバーの慌て方が尋常ではない、一体何が始まるというのだろうか。
『廻る廻る、命は廻る。恵む自然の歓喜を抱いて』
詠唱が進むごとに上空に魔法陣が現れる。
「4重結界『四神絶衝壁!!』……結界張ったですぅ!」
『廻る廻る、因果は廻る。夜の帳の静寂聞いて』
初めの魔法陣に重なるように次の魔法陣が現れる。
「保険だ! マグネットコート!!」
『天の理日と風を唱和せよ、地の理土と月を唱和せよ、人の理火と水を唱和せよ』
三つめの魔法陣が重なった時、それを補佐するようにさらに三つの小型魔法陣が出現する。
「来る! 衝撃に備えるである!!」
『四属陰陽死と再生! おお神よ、我らに祝福を!!「熾天使の歌声」!!』
合計6つの魔法陣が織りなす破滅の光。
風の緑、火の赤、土の茶、水の青、光の黄、闇の黒。
六つの色「六色」が混ざり合い、灰を経て純白へと変化する。
小型魔法陣から降り注ぐ光の筋は次々と蜘蛛たちを焼き払い、その数を減らしていく。
およそ20もの光を断続的に降らせ、小型魔法陣が中央の大型積層魔法陣に重なり光を強めて行く。
「みんな、僕に捕まれ! うおおおおお!!」
シェイドが叫ぶと、足を踏ん張り脇を閉めて顔を覆うように両腕を前に出す。
同時に半透明なシールド「マグネットコート」が範囲を広げ、アメリアの結界の内側を補佐するように展開される。
強い光が網膜を焼き目の前が白に染まる。
強烈な破壊の音は聴覚を麻痺させ音が消える。
次に視界が開けた時は何もなかった。
文字通り、本当に「何もなかった」。
蜘蛛の姿も、木々も、何もかもだ。
「ふふーん、凄いでしょ! あふう……」
戦略級の超大規模神代魔術を行使した馬鹿は魔力の枯渇により天へと昇って行った。
「バカ……女……」
残された面子も死屍累々であった。




