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authentic world online  作者: 江上 那智
冒険の始まり
11/51

後始末と新装備に向けて

やっと漂流者が増えます(笑)

「ただいま!」


「つかれたぜ……」


「おお、戻ったか……? 聖女ジーナの姿が無いようじゃが……間に合わなんだか?」


「えっとね……救出成功って言えるのかなコレ……」

ローズはマジックバッグからジーナの灰を取り出す、LPは1/3迄回復しているようだ。


「この灰は、まさか……!?」


「……ジーナです」


「おお……なんと……」


「駄目……ですか? ……ダメですよね……」


「ん……むう……とりあえずマクスウェルに連絡を入れておくから逢魔へと連れて行くと良い」


「元の種族のままでって括りは無かったからいいんじゃねえの?」


「いや……まあ……それはそうなんじゃが……はあ……ちと後処理に関して頭が痛いのう……」

一応クエストは成功で良いらしい。

チラリとインフォを確認すると【クエスト:聖女を救え、成功?】と書かれていた。

色々と面倒ごとをモロックに押し付ける形にはなったが、とりあえず二人は頭を下げてマクスウェルの下へと向かう。


「よく戻った! モロックから連絡は受けておる。さあ治療室へ運ぼうぞ」

逢魔の城につくと城の前でマクスウェルがソワソワしながら待っていた。

いつも思うがこの人は政務をやってるのだろうか?


治療室のベッドに灰を置き、二人はそのまま客室に通される。


「ローズ様、キース様。後は私たちにお任せくださいませ」


「かなり危険な状況での灰化でしたので時間はかかりますが大丈夫です」

とランオウとランハクが伝えてくる。

治療以外にも何やら色々とやることがあるらしい。


「そうだな……三日後くらいには元気な姿を見せられるであろう。とりあえず今日は我らに任せて休むがよい」


「ありがとうございます、あとコレ……助かりました」

ローズはガントレットとタリスマンをマクスウェルに差し出す。

だが、彼は受け取りはしなかった。


「そのガントレットは其方用に調整したものだ、ほかに使えるものはおらんから持ってなさい。タリスマンも幻想魔術を今の半分の魔力消費で使えるようになるまで返さんでよい」

聞けばタリスマンの効果は幻想魔術のみのMP消費量1/2という特性らしく、タリスマンありで枯渇寸前まで持ってかれた今外してしまうと使用できないとのこと。

なので扱いに慣れるまでは持っていていいことになった。


「しかし……よくよく考えれば其方もむちゃくちゃだな。この機会に残りの装備を整えたらどうだ?」


「確かにローズはガントレット以外初心者装備のまんまだもんな」

なまじ夜間では強力な力を持っていた為に気にしたことは無かった。

マクスウェルがいうには夜に重点を置く装備ではなく昼のデメリットを少しでも軽減するためにデイウォーカーしか発現しなくなった古の夜人族の戦士たちはガントレットに刻まれたような特殊な刻印の装備を整えたそうだ。

これは以前にガントレットの時にも聞いた話である。


「鎧……よりかは軽装備の方が其方は良いか……胸当てなどの部位はネフィルに頼むとしてインナー系はロザリンに頼むと良いだろう、双方には私から連絡を入れておくから早いうちに会いに行くといい」


「ありがとうございます!」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



――服飾店「夜の風(よのかぜ)


「こんにちはー」

店内に入ると全体的に黒を基調としたゴシックな雰囲気の店内にマッチしないスウィートなロリータファッションの金髪ツインテ幼女店主が姿を現す。

これで200歳超えてるというのだから夜人族は侮れない。

「あら、いらっしゃいまし。この間ぶりですわね、王から連絡はいただいておりますわ」


「あはは……あの方、王様なのにアグレッシブですよね」


「ええ……おかげでえらい迷惑……ごほん! ええっと、戦闘用の服をご所望でしたわね? 軽鎧の下に来ても違和感がないような」


「たぶんそうです」


「では採寸させてもらいますわね」


「はい、お願いします」

風の魔術なのだろうか、カウンターの向こう側に居たロザリンはふわりと浮き上がるように跳躍してローズの前に降り立つ。

手にはメジャー。


「ふむ……ふむ……その憎らしいほどの胸部にさえ注意を払えば……ふむ……素材は……」


「なんか執拗に胸を触るのやめてもらえません?」


「あら、私としたことが……貴方の戦闘スタイル王の情報によれば……本能による蹂躙? なんですのコレ……」


「なんといいますか、身体が動くままに暴れまわる感じですか?」


「ふむ……ふむ……基本的に運動量が凄まじいのですわね? であれば胸の部分は柔らかく包むよりもしっかりと固定して、それでいて痛くならないように……うん、大体の目処が立ちましたわ」


「お? おわったか?」

一緒について来ていたギースは採寸の時の光景を見て拙いと感じ、明後日の方の商品を物色していたようだ。


「ええ、お連れの肩には肩身の狭い思いをさせて申し訳ありませんわ。で、ですわ。取って来てほしい素材がありますの」


「素材ですか?」


「ええ、全てをウチの在庫でまかなう事も可能と言えば可能ですわ。でも、希少な素材をその忌々しい胸の部分にふんだんに使う羽目になるので普通に支払えば平気で10万Nは超える金額になりますの」


「じ、10万N!!?」


「それ、私じゃ払えないよ……」


「ですからその部分のみ素材を持ち込んでいただければ、あの(バカ)からの頼みですので加工費は格安にさせてもらいますわ」

王の扱いは街の人もこんな感じのようだ。

慕われているのかそうでないのか判断に困るところだ。


「ど、どれくらいになりますか?」


「そうですわね……希少な素材を取って来てもらえれば半額の5万、それ以外の素材も持ち込みすれば加工費のみで……3万で全身作りましょう」


「それって安いの? ギース」


「俺に聞くなよ……多分だがかなり格安だと思うぞ? さっきその辺の商品見て回ってたが、どいつもこいつも「銘」が入ってやがる……匠の仕事だよ……正直羨ましくなるね」


「あら、なかなかいい鑑定眼()をもっていますわね……生産に興味がおあり?」


「うん? 俺は料理人だからな」


「あら、そちらの方でしたか……残念ですわ。「表」の方では銘まで読み取れる方はなかなかおりませんのよ?」


「そうなの?」


「ああ、鑑定眼のスキルを鍛えていないと作品に刻まれた「銘」は見えるけどよめねえんだよ」


「ちなみに銘は読めましたの?」


「アンタの名前だろ? ロザリンってよ」


「ご名答……よろしければこちらの職人を紹介しますわよ? 前途ある方は大歓迎ですわ」


「料理人はいるのかい?」


お菓子職人(パティシエ)で良ければ」


「……菓子……か……」


「料理とは若干趣が異なりますわね」


「だが、得るものは少なからずある……か? 俺は漂流者だがいいのか?」


「ええ、構いませんわ。では伝えておきますわね。その職人の名前はメッツィ・コールサワー、三番通りから三つめの路地に入った奥にあるラボにいますわ」


「ラボ?」


「なんでも、料理もお菓子も科学だ! っていう変わり者ですの、大昔に機械人の方に科学を教わったらしいですわ。腕は確かなので性格を除けばかなり素晴らしい職人ですわ」


「なんだそれ……」


「ああ、忘れてましたわ。彼はDrメッコールと呼ばないと機嫌を損ねるので注意してくださいまし」


「なあローズ……俺はやまったか?」


「ま、まあまあ……いいんじゃない? っと、素材は何を集めればいいの?」


「おっと、すまん。横道に逸れまくったな」


「そうでしたわね。必要なのは「女王蜘蛛の織物」一反、「女王蜘蛛の糸玉」でもいいのですが、こちらの場合は1玉で80gですので……7つは都合していただければ」


「げ! アイツか……」


「知ってるの? ギース」


「ああ、直接やったわけじゃないがな。アモーレの南の森に「蜘蛛の縄張り」というまんまな名前の場所があるんだが、そこのボスだ」

ボス事態はそれほど厄介ではないらしいのだが、道中に現れる蜘蛛が厄介なのだとか。

隊列を組んで襲ってくる歩兵蜘蛛「インファントリースパイダー」

これは戦闘が得意な面子で固めれば大した脅威ではないのだが、問題はほかに出てくる蜘蛛。

ネットを張ったり穴を掘ったりと罠を仕掛けてくる工作兵「T-ソルジャースパイダー」

歩兵と一緒に出てくるとこれだけでも十分に面倒なのだがその上がある。

指揮官「コマンドスパイダー」

これが出てきた場合死に戻りが視界に入ってしまう。

兎に角兵の使い方が上手いのだ。

押せるときは攻め、ヤバくなれば工兵を駆使して引き、援軍を呼んで戦線を整えてくる。


「うわぁ……」


「それを突破してよしんば女王の場所まで行けたとしてもそこからがさらに厄介なんだよ」

女王のエリアは歩兵と工兵が指揮官を倒すまで無限湧きするらしい。

一体ならいいが指揮官は三体居るので全部倒す前に物量で圧し潰されるそうだ。


「無理でしょそれ……」


「一応倒した奴は居るらしい」


「どうやって?」


「一番楽に倒せたのは指揮官以下兵隊どもを6人のフルパーティのうち5人を盾持ちで固めてアタッカーの魔術師を全力ガードMPポーションがぶ飲みで、徹底的に蜘蛛の弱点である火魔術使って女王のみ狙って倒したんだってよ」


「超力圧し……」


「んで、その織物はレアアイテムで、火魔術を使うと燃えるのか出ないらしく、何度倒しても見つからないと。糸玉は腹を裂いたら手に入るがよくて2玉だから7となると……首尾よく二個ずつ手に入ったとしたらと考えても最低4回は周回が必要なわけだ、まあセンサーが働けば10回以上の連戦は覚悟だな」


「無理過ぎる……センサーってなにさ……」


「物欲センサー、この手のモンには有名なセンサーだぜ? 欲しいと思ったアイテムはなぜかほぼ出ない、出ても1個と最低値、仲間と行けば仲間だけ手に入る、あと一個だーって思ったら次の時は3つ出たとかな……必要な時に出ないで、必要なくなると出るんだよなぁ。別にそんな確率してないし運営も弄ってない、だのに出ないオカルト染みたセンサーだ」


「こわ! 物欲センサーこわ!! あ、そういえば織物の存在を知ってるって事は誰か手に入れたの?」


「ああ、今最前線に居る攻略組のトップパーティ「メギドの光」が普通に(・・・)倒した」


「へえ!?」


「人族最強バ火力脳筋太刀使い「斬竜」のゴドー・ムラサメ、移動する精密理不尽要塞機械人二枚盾使い「鉄壁」のシェイド・コキュートス、18歳未満お断り破滅の公然わいせつ女エロフ魔導士「六色使い」のナタリエ・アビスゲート、どうして君はそこにいるの? 色物パーティの色んな意味で癒し枠「魔人聖少女」アメリア・ホリィ、お前それゲーム違うから! 高機動公害毒殺爆弾魔な人狼錬金術師「狂乱」のファンブル・ダイスロールの五人パーティだ」


「二つ名の前の文章が悪意しか感じない」


「実際に戦い方を見たら納得する」


「……傍から聞いてても納得したくないですわね……」

ロザリンすらあきれ顔だ。


「なんでそんなに詳しいの?」


「あまり言いたくないが、β時代のパーティだった……もちろん料理人兼斥候役だが」

ギースのスキル構成は今と余り変わらないらしい。


「そ、そうなんだ……濃いね」


「まあ、嫌じゃなければ紹介してやる。てかそいつら以外でまともに女王蜘蛛倒した奴をしらん」


「ちなみにどんな感じだったの?」


「無限湧きするって事は経験値ごっそりだろ? ヒャッハー! で指揮官残して延々蜘蛛退治。アイテム尽きたから指揮官バッサリで護衛の居なくなった女王涙目だな」


「酷過ぎる……」


「魔物とは言え哀れに感じますわ……」


「で、でもその人たちが居れば……」


「玉7つだろうが織物だろうがすぐ手に入るだろうさ」


「うう……嫌だけど紹介してもらう……」


「俺だってこんな事無かったらあまり会わせたい連中じゃねえよ……中身は割といい奴らなんだがなぁ……っと、紹介するなら早い方がいいか?」


「うん、出来るならジーナが目覚める前に織物だけでもロザリンさんに渡したい、ネフィルさんは……まあ、間に合えば」


「そうか、したら今連絡しておく。狩りに出てなけりゃすぐ会えるだろ」


「わかった……こわいなぁ……」


「まあ、漂流者同士とって食われるわけでもないのでしょうし、安心なさいな」


「ロザリンさん……うん、頑張って持ってくる!」


「お頼みいたしましたわ」

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