プロローグ
VRものがやってみたくてやってみたくて
MMOはあらすじにも書きましたがやったことないです。
なので生暖かいまなざしで眺めてください。
プロローグは短いです。
あと暗い。
タイトルは変えるかもしれません。
「陽子さん、具合はどう?」
『へ、い、き』
「そう、点滴とりかえますね」
とある大学病院の一角にある個室。
そこに横たわる女性、茨戸陽子。
彼女は数年前に交通事故に遭って両親を失い、自らは首から下の全身麻痺に陥った。
その時はまだ喋る事だけはでき、親しかった友人も姿を見せ、馬鹿な話をしたりして慰めてくれたものだ。
しかし、現在は彼女の病室を訪れるものは居ない。
親戚はもとより近づこうとはしない。
祖父母も今は姿をほとんど見せない。
動くことが出来ない彼女を見ているのが辛いのだ。
不幸はそれだけにとどまらない。
首から下の感覚が無いことが災いし、ある病気の発覚が遅れたのだ。
いや、もし早期発見できたとしても治ったかどうかは分からない。
――ALS――筋萎縮性側索硬化症――
脳や末梢神経からの命令を筋肉に伝える運動ニューロン(運動神経細胞)が侵される病気で、難病の一つに指定されている。
人間の手や足、顔など、自分の思いどおりにからだを動かすときに必要な筋肉、随意筋。
その随意筋を支配する神経を運動ニューロンという。
この「ニューロン」というのは「神経細胞」のことだ。
運動ニューロンは、歩いたり、物を持ち上げたり、飲み込んだりするなど、いろいろな動作をするときに、脳の命令を筋肉に伝える役目をしている。
この運動ニューロンが侵されると、筋肉を動かそうとする信号が伝わらなくなり、筋肉を動かしにくくなったり、筋肉がやせ細り、最悪には呼吸困難に陥り、放って置けば勿論死に至る。
ALSはこの運動ニューロンが侵される病気なのだ。
この病気に初めに気づいたのはいつも陽子の看病をしてくれる看護師。
陽子の呂律が微かに悪くなっていることに気づいて医者に進言。
即座に精密検査をして発覚したのだ。
もし全身麻痺に陥っていなければ運動機能の低下でもっと早くに発見できたであろう。
だが、最初に言った通り難病指定されている症状の一つ。
治るのかと言われれば難しいと言わざるを得ない。
現代では人工呼吸器などを用いてしかるべき措置を取れば延命は可能だ。
それで50年以上も生きていた事例もある。
現在の彼女は呂律がそこまで流暢には回らず、濁音と「ら」行がしゃべりにくい為瞬きワープロを使い、他者とのコミュニケーションをとっていた。
「あ、そうだ。陽子さんゲームに興味ある?」
『ど、ん、な、?』
「没入型VRゲームっていうのでね、簡単に言えばゲームの中に入り込んで遊べる感じかな?」
『?』
「私も詳しくは知らないんだけど先生がね、VRが脳に与える刺激が治療に役立つ可能性があるから試験を行いたいっていう話を受けて被験者を募集してるの。それにね、VRの中だったら自由に動き回れるって聞いたし、その……最新のは同意があれば性的な行為も可能らしくて……後者の部分は抜きにしても陽子さん、車いすで庭を散歩するくらいでしょ? そこなら自分の脚で歩けるかもって私も思ったから……authentic world onlineっていうゲームなんだけど、どうかな?」
その発言を聞いた陽子は目を見開いた。
即座に言葉を打ち込むために目線を動かす。
『う、け、る、!』
『い、つ、か、ら、!、?』
もし手足が自由に動いたのなら陽子は看護師の肩を掴んでゆすっていただろう。
それほどの衝撃を陽子は受けたのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
最新VRゲームauthentic world online。
ふれこみは「偽物ではない本当の異世界へ」。
様々な種族が入り混じり、好きにその世界を謳歌出来るのがという作品。
本当を謳っている通り、ゲームらしさを損なわない程度にアシストが付いている。
昨今の異世界事情はゲーム的な要素が強かったりするので、テスターの大多数は違和感がないらしい。
「ライトノベルでおなじみの異世界転移したみたいだ」
なんて言葉も出るくらいの満足度だ。
サービスを提供する運営会社が医療の応用も考えて、痛覚設定も現実に影響を与えないようにしつつ本物の感覚を体感できるように開発した最新作、それがこの作品。
矛盾している気がしないでもないが。
それでも自分の脚で動ける、自分の感覚を再び体感できる。
いつもの見慣れた景色ではない様々なものが見れる。
陽子はそんな期待に胸を膨らませ、準備が整うのを待ちわびていた。
「よし、できたわ。陽子さん、準備は良い?」
「は……い」
「ログアウトしたら連絡が来るようになってるから安心してね、いってらっしゃい」
看護師の言葉を聞き、返事をする前に陽子の意識は別の世界へと羽ばたいていった。