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case1…うさぎの場合①

朝日が眩しい。私はあまりの明るさに目を覚ました。「そういえば今日から学校だったか」そんな事を頭の中に思い浮かべながらベッドから起き上がる。夏休みが終わり、今日から学校が始まるはずだった。時計を見ると午前11時を少し過ぎたところ。ああ、また間に合わなかった。そうして私の、〈宇佐美うさみ そら〉の1日が始まる。


〈case1…うさぎ場合〉


起きてすぐすることと言えばスマホの確認。なにか連絡がきていないか。私は充電器に繋がれたスマホを手に取る。電源をつけると、友達2人からのメッセージが表示された。


〔今日は来るの?来るならカメラ持ってきて!byネコ〕

〔おはよう。今日はどっち?偶にはお茶でもするかい?byオオカミ〕


夏休みが始まってからできた友達。それぞれみんなの本名に動物の名前が入っていて、私の場合は宇佐美うさみからとってうさぎだ。結構安直。私は笑みを浮かべる。某無料メッセージアプリを開くと、私は


〔これから向かう。カメラは昨日渡したでしょ。〕


メッセージを打ち込み送信。早く着替えを済ませてしまおうと、箪笥に手をかける。中にはよく言えば“個性的な服“、悪く言えば“変な服“がぎっしり。母にも父にも理解はされなかった。


「偶にはお気に入りでも着ていくか。」


そう言って取り出したのはankorockのパーカー。これに袖を通した瞬間、私の存在が証明される気がするのだ。パーカーの中心に描かれた絵を見ているとふと自分の髪の毛が気になった。赤い。そういえば昨日染めてきたんだった。この服にもあってるんじゃないか?と少しウキウキしながら自分の部屋をでる。私の家は二階建で、私の部屋は階段を上がってすぐ横だった。私はなるべく音を立てずに階段を降りる。リビングには母しかおらず、父は既に仕事場のようだ。


「今日もお昼ね。」


母は、降りてきた私にそう声をかけた。彼女は私を見るわけでもなく、キッチンすぐ横のテーブルで優雅に紅茶を飲みながら新聞を読んでいた。


「…おはよう。」


「…。もうこんにちはの時間よ。」


母は私を見ない。最後に目を合わせて会話したのはいつだったか、もう忘れてしまった。


「今日から学校の筈でしょう。何してるの。制服着てさっさと学校へ行きなさい。」


淡々と喋る母。私はそれを無視してキッチンから食パンを取り出す。ジャムを塗って食べようとするが、食欲がなかったのか私は食べようとしなかった。その姿をチラリと見た母。


「いつも食べられないんだから、最初から食べないでくれる?誰が食べるのよ、それ。」


「…ごめん。」


私は謝るしかなかった。この時点で私はいつも自分が朝ごはんを食べないことを思い出した。朝ごはんと言っても、もう昼前だが。私はパンを皿の上に乗せ、ラップをしてから冷蔵庫にしまった。そして私はパーカーのフードをかぶり、玄関へ向かう。鍵は…どうしよう、今日は何時に帰るのだろう。私は玄関で腰掛けながら考える。その間、母はなにも言わない。私は立ち上がって相棒を探す。私は相棒のアイツがないと外に出られない。そういえば昨日は何処へ置いたんだっけ。


「あぁ、あったあった。」


相棒は何故か靴箱の中にいた。なんでこんなとこに置いたのだろう。昨日の自分に疑問をとばす。私は相棒を手に取り、顔につける。その状態で玄関にある全身鏡で自分を見ると、そこには鼻から上を隠すうさぎのお面をつけた女が映っていた。今日も相変わらずぽっちゃりだな。自分の体型を見て思う。いや、それも私の魅力か?とか考えてみたり。


「よし。」


私はそう言いながら玄関のドアを開けた。もう陽は高く上がり外に出た私を照らしていた。今日はきっと暑くなるな。私は目を細め、外を歩き始めた。

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