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捨てられたこの世界で  作者: 如月 奏楽
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プロローグ この世界

 私はただひたすらに走っていた。

何を作っているのかもわからない工場を全力で走っていた。

工場内は暗く何度も障害物にぶつかり止まりそうになるがそれでも走ることを止めるわけにはいかなかった。

 理由は単純、死ぬからだ。

私はついさっきから機械に追いかけられている。何故かわからないが目があってから執拗に追われている。しかしそれ以外にも何やら違和感を感じるのだ

 まずあの機械はおかしい。その姿のほとんどを形成しているのは金属で、何やら油のようなものが滴っている。この時点ではただの機械と何ら変わりはない。だが機械が自我を持っているのだ。四本の脚を持ちその体躯からは想像もできないような速さでこちらを追ってくる。

 このままじゃ追いつかれるのも時間の問題だ。あのおかしい機械を振り切らなければならない。


「でもどうすれば・・・・。」


 辺りを見回す。平坦な床に規則的に機械が並べられている。その中にひときわ高い機械が一つだけある。機械はおおまか円錐状になっていて、おそらく私を追ってくる機械には登れないだろう。あそこに上ることができれば、あの機械に為すすべはないだろう。


「・・・・よし!」


 私は機械に上ると決め、ジャンプの準備動作に入る。

足首を使い、飛ぶように走る。徐々に歩幅が大きくなり浮くようなイメージもできてくる。

その分減速するため、あのおかしい機械に距離を詰められてしまう。


「あと少し、あともう少しだ!」


 機械に近づくにつれ、歩幅を合わせていく。

その間にも距離を詰められていく。


「あと五歩・・四歩・・!」


 私だって生身であの背の高い機械を登れるわけじゃない。


「あと三歩・・二歩・・!」


 でも私には秘策がある。最後の一歩である左足を踏み出した瞬間、私は足首に全身の力を込めた。


「いっけぇぇぇぇ!」


 左足が離れる瞬間、足裏からものすごい勢いでジェットを噴射した。

その爆発的な推進力により私の体は浮き上がり、およそ十メートルの跳躍を可能にした。

目標の高さを優に超え、安全に背の高い機械の上部へと着地できた。

そしてそのわずか数秒後、耳が壊れそうなほどの轟音が響いた。足元も大きく揺れる。

私は体制を立て直し下をのぞくと、衝突し原形をとどめていないあのおかしい機械があった。再び動くことはなさそうだ。


「ふう、なんとかなったかな。」


 そう呟いて私は腰を下ろし、ジェット噴射させた左足をみる。

噴射口あたりが焦げ、黒くなっている。

私は物心ついた時から両手両足にこの噴射口がついている。

いつどうやって付けたのか、何が燃料になっているのか私自身にもわからないことだらけだ。一回のジェット噴射でどれほどの反動があるのかなど知りたいことは山ほどある。

だがこの疑問が解決することはないだろう。

 私は立ち上がり、すぐ上の天井に空いていた穴から屋上へ出る。

屋上からはこのあたりが一望できた。辺り一面工場や機械で埋め尽くされている。

そのほとんどが動いているが人影は一つも見当たらない。

それもそのはず、この一帯には私以外人類は存在しない。

もしかしたらいるのかもしれないが、物心ついた時から親すら見たことがない。

だからこそ何もわからない。

でもただ一つわかることがあるとすれば・・・・


この場所は他の世界から捨てられた場所ということだけだ。


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