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送還勇者と来訪者  作者: 神月センタロウ
現代日本編
8/115

07:勇者サカカミご一行

前話からのつなぎで苦戦して時間と量が。

細かく考えてない箇所が多いのが弱点ですね……。

 時刻はもうすぐ20時になるだろうか。近所迷惑待ったなしの俺の声量にその場に居る全員が呆気に取られているが気にしない。


「セリスは無事なのか?!」

「わ、分からないです! 神剣様曰く、セリスさんが『勇者送還』の術のような物を使ったのは確実だそうです。行使した瞬間を感知したそうなんですが直後見失って、先日こちらの座標で弱くなった反応を二つ発見したそうです!」

「二つ?」

「はい。『神属性』の強い反応が一切無く、微弱な反応が二つと仰ってました」


 となると片方は俺の持っている指輪だろうか。さっきも光ってたし。もう一つがセリス本人……である可能性が高いという事か?


「全員こっちの俺の方の反応とやらに来たのか?」

「いえ、まずは私が最初って感じで。もしかしたら他の方も来てしまったかなと」


 で、見事にハズレを引いたのか。ただもう片方にも同時に人が行って無いというのは気になるな。


「もう一個の反応の場所は分からないか?」

「神剣様からは遠すぎて詳細は不明だそうです。ただ二つは近い場所にあるとだけ」

「そうか……」


 聞けば聞く程滅入ってくる。ノーヒントもいい所だ。感覚の尺度で言われても普通に身近な町内とかそういう単位なのか、或いは宇宙全体規模で見れば地球の反対側だって近いと言えるだろう。


「あの、ソウジさん。他の方は居ないのですか?」

「お前しか見ていない」

「そうですか、それは何よりです」


 何やら安堵して肩の力を抜いていくミーララ。反して途方に暮れたい俺。いまいち要領を得ないが聞ける範囲で聞いて置く事にする。


「さっきも言ってたけど、他の三人は同時に来たわけじゃないのか?」

「はい、一回の転移術で一人だけ『渡し手』で移動出来るそうです。なので人数分行う予定だったんですが、状況が状況なので何か問題がないか私だけ先行して来ました」

「なるほどね。取り合えずこっちはハズレだ。向こうに連絡は取れないのか?」

「あ、はい。連絡用の魔術具を貰って来ましたので、ちょっと待って下さいね」


 あるのかよ!やっぱそこ等辺の技術はあっちの世界のが格段に上か。というか、あの『手』って『渡し手』って言うのか。そんなどうでも良さそうな知識を反芻していると、ミーララが傍らに置いてあったリュックサックから占い師が使うような透明な玉を取り出す。


「あったあった。あーあー聞こえますかー、神剣様~? ん~、こっちかな?あ~あ~?」


 向きを変えたり両手で掲げたりしながら真剣に水晶玉に話かける少女。ちょっと危ない子に見えてしまう。ある方向に向いた時水晶が仄かに光を宿し、日本人達が思わず「おぉ」と息を呑む。


「神剣様~、神剣様~。こちらミーララ、聞こえますかどうぞ~?」


 なんだろう、今までの緊迫感が抜けて行くのを感じる。異世界との交信という神秘が行われるはずなのに、何かこうトランシーバーのやり取りというか……間抜けな絵というか。何回か同じような問いかけをしていると水晶玉の光が強弱をつけて明滅し始め、微かに何か音を発し始めた。


『……ちら、……ジャン』


 断片的にしか聞こえなかったが凄い嫌な箇所だけハッキリ聞こえてしまった。完全に元相棒と断言できる。


「ミーララ、チェンジだ。違う人に出て貰え。ユリウスが良い」

「えええ?!」

『その声はソウジかい? いや~懐かしいジャン、元気してる~?』


 間に合わなかったようで流暢に喋り出す水晶に苛立ちを覚える。


『ハハハ、無事連絡が来たって事はこっちは王女ちゃんじゃなかったって事でいいのかジャン?』

「うわ……想像してたよりウザイ喋り方。語尾無理矢理すぎでしょ」


 真由が露骨に嫌悪の態度を取る。俺もそう思う。


「ああ、こっちにはセリスは居ない。状況を確認したいからユリウスに変われ」

『超冷たいジャン、しょうがないな~……俺俺ユリウス! 変わったジャン!』


 この馬鹿剣へし折りたい。


「遊んでる暇ねーんだよ! さっさと変われ!」

『なんか愛想悪いな~、まぁ今はそれどころじゃないか。ちなみにチェンジは不可で僕としか話せないジャン』


 状況を理解しててこれか……一回溶かして打ち直して貰うように進言しよう。インゴットに加工してどこかに封印でもいいな。


「大まかににはミーララから聞いたが、セリスは無事なのか?」

『王女ちゃんは……ああ、ちょっとずつ座標が移動してるから少なくとも死体で放置されてるわけじゃないみたいジャン。運送されてたら生死は判らないけど』

「縁起悪い事言うな! 場所の詳細は?」

『んー、そこからそんな離れてないはずなんだけどな? ソウジ、そっちで10日前くらいに何か異変は無かった? 多分そこで魔族連中がそっち跳んだはずなんだけど』


 たまに素で話すから余計にイラツクんだが。必死に怒りを抑えて10日前をカレンダーで確認する。10日前…水曜日…あー…と凄くシックリ来る事件を思い出した。


「異変と言って良いのか判らないが、ひとつ心当たりがあるな」

『お、いいねいいね。どんなのジャン?』

「今居る場所からちょっと離れた場所に居た時に視線みたいな物を感じた。殺気交じりの嫌なやつだな」

『あーそれ大当りっぽいジャン。多分その瞬間見つかったんだと思うジャン』

「見つかったって魔族に俺がか?」

『そうそう。その時遭遇してないとなると多分、座標指定が甘くてソウジが居た場所からちょっと離れたとこに転移したんじゃないかなと思うジャン。僕くらいの優秀な術媒体が無いと難しい術ジャン』


 腐っても神様の眷属か。最後の部分を無視してシャキシャキと話を進めていくとしよう。


「で、そこの近くにセリスは居るんだな?」

『多分そうジャン。ソウジ、その場所まで移動して王女ちゃん探す事は出来るかジャン?』

「当たり前だ。何があろうが探してみせる」

『いいねいいね、これは想定してた中でも良い展開ジャン。じゃあこれからの予定について説明するジャン』

「どうすればいい?今すぐ動くのか?」


 ちらりと徹を見るとOKサインを出してくれる。どうやら車も出してくれるらしい。


『まずは今のソウジの座標にこっちから後三人、まぁ想像してる通りの奴らを送るジャン。で、合流後現地へ移動して貰って捜索して欲しいジャン』

「もう片方に三人送り込めないのか?」

『同時には無理ジャン。往復で5分、で片道分も含めて最低でも7分くらい時間差が出来るジャン。王宮襲って逃げ果せるような奴に単独で数分は勇者でもない限り危険な事になりかねないジャン』

「そんなに強い奴が生き残ってたのか……」

『魔王の後継者を自称していたらしいジャン。強めの戦力が戦後処理で遠征した隙を衝いて、最大戦力の一人である王女ちゃんを無力化して掻っ攫ってったみたいジャン』


 最大の脅威である魔王を倒して油断していた、と言ってしまえばそれだけだが許容することは出来ないな……確かに自分達のトップである魔王が負けそうになっている状態で出てこなかった奴が、そんな大それた事を出来る実力を持っていたというのは想定外だろうか。歴代最長の討伐期間のせいで、そういった搦め手を準備する期間を作ってしまった俺のせいだろうか?そう思うと自分の未熟さに反吐が出る。と、同時に疑問が浮かんできた。


「じゃ何でミーララが最初に転移なんだ? 戦闘力なんか無いぞ?」

『そこは察しろジャン。要するに強行偵察、エルフちゃん本人が志願したジャン。僕は止めたよ?』


 恐ろしい事を言ってくれる。ソロで遭遇したらアウトであろう敵の居る場所へ非戦闘員を送り込むとか。


「いえいえ、私なんかいくらでも代わりが居ますし。戦闘でも全然お役に立てませんでしたからね~、雑用の一種ですよ。何個か上等な魔術具も頂きましたし、それに運もいい方ですし!」


 ミーララに視線を向けると若干気恥ずかしいといった感じ手をブンブンさせながらで答えていた。


「後で説教な」

「えええ、何でですか……」


 心外だと言わんばかりに泣きそうな声で抗議してくるのを無視すると水晶玉がフォローを入れてくる。


『色々手詰りだった所を結果的には良い方向で解決してくれたんだし、大目に見てあげるジャン』

「それでも説教だ。一歩間違えば死ぬ所だぞ?」

『まぁ、それは否定しないジャン。でもソウジが居る可能性も有ったからハイリスクハイリターンの賭けジャン?』

「他に手段は無かったのかね……で、俺が魔族に狙われてるってのは何か根拠が?」

「それは魔王の後継者と名乗るヤツが『復讐と前魔王を越えた事の証明である』との発言をしていた事と、セリス様が転移術を使った事での推察ですね。実際こうしてソウジさんの世界に来ている現状を見るにほぼ間違い無いかと」


 どこまで迷惑な話なんだ。神剣も無い状態で、しかもこっちの世界の俺なんか勇者でも何でもないのにリベンジとかやめて欲しい。


『まぁそういう訳で行動開始ジャン。今から転送しても大丈夫かジャン?』

「5分後に頼む。家の中でアレされたら俺が怒られる」

『了解ジャン』

「ついでに何か装備を持って来れないか?タキシードしか持ってきてねーんだわ」

『それならエルフちゃんのリュックに何個か入ってるはずジャン。何か貸して貰うジャン』

「そうする。お前は来れないんだよな?」

『行けない事は無いかもしれないけど、多分この大陸が滅びるジャン?』

「まぁそうなるか……んじゃ宜しく頼む」

『了解ジャン。じゃ一旦切るジャン』


 軽い宣言と共に水晶玉の光が消えてしまった。久しぶりに話したが本当にウザイ。気を取り直して庭に出る為の身支度を整える。


「さて、そういうわけでちょっと庭行ってくるわ」

「あにぃ、見に行っていい?」

「私も見てみたいです!」

「いいんじゃないかな。ミーララは何か俺の装備見繕っといてくれ」

「はーい」

「じゃ、私は何かお茶菓子用意しとくわね。何がいいかしら……」

「俺は車借りて来るわ。えーと、何人だ?」

「俺含めて5人、徹で6人だな。勿論徹は戦闘無しな」

「了解。んじゃ行ってくるわ」


 それぞれ分担して手際良く支度する。そんな中、父さんだけ全くついて来れずに一人でポカーンとしていた。





 暫くして。徹がレンタカーを借りて戻ってくるまでの間に若干手狭になりつつあるリビングで簡単な作戦会議となる。


 二人がけのソファーには、真っ黒なローブに同じく真っ黒なトンガリ帽子のこれぞ魔女という感じの20代前半の女。真紅の長い髪が帽子から無造作に溢れている。顔の造形は美しいのだが、ツリ目の三白眼のせいか初対面ではキツイ印象が否めない。


 その横に座っているのは、見た目10代後半の少女。特徴的というか特徴しかないパーツで構成されている。髪色は均等に正面から見て三色に分かれていて、左から白黒茶。頭頂部には猫っぽい三角耳がピコピコ動いており、顔に至っては基本的には人間の整った少女のようだが鼻が黒く、猫のような構造になっている。切れ長の目も手伝って、これぞ野生児といったところだろうか。


 ソファーの横に立って居るのが、銀色に光るフルプレートに身を包んだ灰色髪の青年。立っているせいでその身長の高さが際立つ上に、全身鎧なので更に大きく見える。前髪を上げ丸見えの顔は彫りの深い整った物だが、どこか二枚目に一歩足りなく、どちらかというと愛嬌のある感じだ。


 更に横にミーララ、三人と向き合うように俺と妹組が床に座る感じでテーブルを囲んでいる。両親は食卓の方からこちらを伺う感じだ。コホンと咳払いをして青年、ユリウスが一歩前へ出る。


「では、移動の手段が来るまで時間があるという事なので簡単に自己紹介を致しましょう。私はハイランド王家に仕える騎士団所属のユリウス・コモン・フラットランド。以前ソウジには色々とお世話になった身です。宜しくお願いします」


 言いながら優雅に両親へ一礼、向き直って妹組に一礼する。日本人組もつられてお辞儀で返す。こういう所作は流石としか言い様がないな。


「じゃ、年齢順なら次はあたしかな?」


 赤髪の魔女が涼しい顔で言う。


「年齢順ならミーララが最初。次がシェンナ」


 獣人の少女がすかさずツッコミを入れる。

 俺には懐かしいやりとりだ。


「ミーララはもうしたでしょ?」

「あ、いえ、私もまだ正式にはしてないですよ」

「あら、ごめんなさいね。まぁ言っちゃった手前させて貰おうかな。あたしの名前はシェンナ。見ての通り、と言ってもソウジ君以外はピンと来ないかもしれないけど魔術師よ。ソウジ君には色々と面倒を見させて頂いた感じね。よろしくね」


 いけしゃあしゃあと嘯く魔女に一瞥くれてやる。視線に気づくとフフンと返された。言いたい放題言いやがって。


「次は私。名前はアルマ、獣人族。好きな物は魚介料理なので是非」


 言いながら母さんの方を見るアルマ。ブレないなこいつ。


「あと、ソージの嫁候補二人目。よろしく」

「さらっと問題発言するな!」


 明らかに日本人組が引いてる。両親に至っては双方湯のみを落とした。やりすぎだ。してやったりといった感じのアルマがニヤニヤしてるのがムカつく。


「嘘、嘘だからね。今の。真由もかすみちゃんもちょっと離れるな」

「あんなに私の尻尾を求めたのにー。遊びだったのねー」


 尻尾の所を若干トーンを落としてゴニョゴニョ言う辺りに悪意しか感じられない。あと棒読みやめろ。


「混ぜっ返すな! ミーララさっさと進めろ」

「はいはい。私はミーララ・カーララと申します。エルフ族の120歳の若輩者ですが皆さんのお荷物運搬や掃除、洗濯などの雑用を担当させて頂いてました。改めて宜しくお願いしますね」


 ペコリと頭を下げる。ユリウスに次いで常識的な対応に涙が出る。さすが年長者か。


「じゃ、こっちの番だな。俺の横に居るこっちのガラが悪い方が妹の真由。で、こっちの小さいのが平屋かすみちゃん。あっちのテーブルに居るのが母さんと父さんだ」


 順々に手早く紹介し、兄がお世話になりましたとか、それぞれが一言ずつ付け足して行った。


「もうすぐ帰ってくると思うけど、今回の運送役が平屋徹。俺のこっちの世界での悪友だな」

「なるほど、クルマというやつだったか。馬より速いんだろ?」

「ああ、ビビるなよ?」

「ハハハ、俺がそんな物で臆すると思うのか?」


 昔からユリウスは丁寧にフラグを建てるのが上手い。今回も期待しておこう。


「というかお前、赤ん坊と嫁さんは良かったのか?」

「まぁ……心配無いかと言われれば嘘だがな。神剣様の仰る分には、一ヶ月程で一人帰れる分はお力が戻るそうだ。何、心配するな。今回の件をサッサと済ませてあの笑顔を拝むさ」


 フラグにしか聞こえないんだよなぁ……そういや今更な気がするが、思っていた疑問をぶつけてみよう。


「素朴な疑問ななんだがシェンナ、こっちで魔術使えるの?」

「え?」


 何を当然と言う顔で返された。


「そんなの当たり前じゃな……何ここ、マナが全然無いじゃない?!」


 魔術を発動させようとしたのだろうか、何やら構えた後に真っ青になっている。


「……一人戦力外が増えたか」

「ちょ、ちょっと、ミーララ何か無いの?!」

「えと、確かマジックワンドやスクロールなら何本か頂いて来ましたので」


 そう言いながら二人でリュックを漁り始めた。本当にノープランか……。


「人選ミスったんじゃね?」

「確かに俺の体もやや動きが鈍いな。まぁアルマも居るし物理で攻めるしかないだろう。相手も同じ条件だろうしな」

「マナが無い世界ってのは考えなかったのか……」

「一応考慮はしてあったんだがな。城の近隣に居た戦力で考えたら外せなかったのは付け加えておこう。何よりこのメンバーの方が連携は取り易いだろ?」

「まぁ、否定はしないけどさ。そう言えば、真由達にも言葉が通じてるのはどういう原理なんだ?俺はこっちに戻ってきてから無くなったっぽいんだが?」

「ああ、それはこいつだな」


 言いながらユリウスが篭手を外してブレスレットを見せてくる。飾り気の無い銀色の腕輪。


「神剣様が手ずから言語理解の効果だけ込めて下さった。どうやら内部のマナを利用する分には問題無いようだな。この分ならミーララの持ってきた装備も大丈夫だろう」

「便利だなそれ……俺の分無いの?」

「セリス様の分は貰ってるが、お前の分は無い。欲しいのか?」

「それが有ればこっちの世界で通訳としてやっていけて、生活楽なんだがなぁ……」

「まぁ、俺達が帰るときに神剣様と相談する事だな」


 落胆する俺にユリウスが苦笑しながら返してくる。そこまで話していると家の外からクラクションが聞こえてきた。


 さぁ、裏ボス攻略に行こうじゃないか。

 お読み頂き誠に有難う御座います。


 もしお気に召して頂けましたら、ブックマークだけでもして頂けると励みになります。感想も書いて頂ければ舞い上がります。


 お時間御座いましたら是非お願い致します。

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