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ユークリウス王国入国

 やっとユークリウス王国に着いた。門も案外簡単に通れた。

 ここからはもう少し緊張を解いて進んでいこう。ステルス解除。

 ただ、走ってる姿は見られたくないので街道は走らずに、街道に沿って森の中を走ることにしよう。


 さっき門を通ったときには冒険者らしき人も商人らしき人もいなかった。今あの門は通行禁止になっているのだろうか?

 しかしそれでも門番らしき人は十数人はいた。おそらくあれだけではないのだろう。

 気になったのはやはり髪と目の色だ。俺は髪を染めたことはないので、髪の毛は黒に近い焦げ茶色といったところなのだが、どうやらこの世界では黒髪黒目というのは珍しいらしい。みんな元の世界ではあまり見なかった色をしていた。そういえば例のあの女も銀髪だったしな。

 ローブでも買って顔と髪を隠して行動したほうがいいだろう。色くらいなら光魔法で調節して変えられるんだが、さすがに顔までは変えられない。それまでは髪の色を赤に変えておこう。


 そんなことを考えながらも身体はしっかり動かしている。

 ようやく人間と会話ができるんだ。待ちきれない!


 今までと同じ速さで十数分走っていたら、遠くから人の声らしきものが聞こえてきた。

 そろそろこの素材だけ最強の装備を外した方がいいだろう。無一文の人間がこの装備はありえないと思うし。

 

 多くの人々の気配から考えると、街が近くにあるのかもしれない。

 街道に出て声のする方向に徒歩で向かっていく。


 すると大きな城壁に囲まれた町があった。

 人に話しかけることができる嬉しさについ早歩きになってしまう。


 そして町の入口に差し掛かったところで門番と思われる人に声をかけられる。


「止まって身分証を提示してください!」


 想像してたほど威圧的ではなかったが、それでもやはり強い口調だった。


「すみません。ここから少し離れたところにある村から冒険者になるためにこの町に来たのですが、途中で武装した多くの人達に襲われて馬車を荷物ごと置いて逃げてきてしまったので、今無一文なんです」


 そう言って着ている汚れたスウェットを見せた。


「盗賊に襲われたのか……だからそんなみすぼらしい恰好をしているのか………」


 もう少し考えて発言してよ……。さすがに『みすぼらしい』は傷つく。


「まぁ武器も所持していないみたいだし、いいだろう。今回は特別に通行を許可しよう」

「……そんなに簡単に通行許可してしまっていんですか?」

「いいのいいの。お前悪そうな奴じゃないしな。それに俺はこの町の騎士で団長やってんだ。ここの門番では俺がルールなのさ!」


 さすが異世界。……いや、日本の規則が厳しいだけか?


「助かります。ありがとうございました」

「いいってことよ。じゃあな」


 そう言って門を通り抜けた。


 まずやらなきゃいけないことは金を集めることだ。でないと町で暮らしていけない。

 魔物の素材ってどこで売ればいいんだろう?

 近くにいる人に訊いてみよう。あそこのごっついおばさんでいいか。


「あの~すみません、ちょっといいですか?」

「おや、なんだい?」


 やっぱり思った通りフランクな人のようだ。


「魔物の素材を売りたいのですが、どこで売ればよいのでしょうか?」

「そんなの冒険者ギルドに決まってるだろう?」

「俺まだギルドに登録してないんです……」

「そうなのかい?ちょいと待ってな!」


 そう言うと近くにいた冒険者に話しかけていた。どうやら知り合いのようだ。


 数十秒経過したところで戻ってきた。


「どうやら登録してないと素材を売れないらしいんだよ。それでだ、商人に直接売りに行っても買い取ってくれるらしいんだよね。ちなみにこの町の商人の店はあそこに見える立派な建物だからね」

「態々すみません。ありがとうございました」

「あいよ。ちなみにアタイは宿屋をやってるんだが、あんたはもう宿とったかい?」

「いえ、まだです」

「それならウチにきなよ」

「はい。宿屋はどこにありますか?」

「商人の店の向かいにあるよ。じゃアタイはもう行くからね」

「はい。ありがとうございました」


 何とかお金を手に入れられそうだ。

 それに宿の予約もとったようなものだしな。


 まずは亜空間から素材を取り出さないと……。

 人気のない路地に入り、魔物の大きな皮を取り出して、その中にここに辿り着くまでに集めた『普通』と思われる素材を出して皮で包む。大きすぎてサンタになったような気分だ。こんなみすぼらしいサンタはいないだろうが…………。


 そのまま急いで店に向かう。

 店の看板にはファリナス商店と書いてある。


「すみませーん!」

「はい!本日はどのようなご用件で?」


 対応してくれたのは三十代前半の男性の方で見るから人が良さそうだが、商人って聞くとそれだけで愛想笑いに見えて、抜け目ない気がしていけない。裏でいったいどんなことを考えているのやら……。


「魔物の素材を売りたいんですけど」


 そう言って袋ごと台の上に乗せる。

 店員さんは目を丸くして袋を見つめていた。


「は、はい。わかりました。鑑定に少し時間がかかりそうなので、しばらくお待ちください」


 そう言って素材を持って奥に入って行ってしまった。

 そういえば異世界の店っていっても案外普通なんだな。商品は結構きれいに整頓されているし、店自体の雰囲気も悪くない。


 商品を観察しながら時間を潰していると、先ほどの男性が戻ってきた。

 その様子は少し困惑気味だ。


「……失礼ですが少し質問してもよろしいでしょうか?」

「お答えできることならば」

「はい…。今までいろいろな商品を見て鑑定してきましたが、これほど高品質な素材をこれほど大量に持ってきた人は初めてでして………どうやって品質を保っているのですか?」


 ……そうきたか。

 時魔法を使える人なんてほぼいないこの世界で、これほどの品質を保てる人はいないのか?

 でもそれなりに試行錯誤して品質保持をしている人はいるだろうし……。

 ここは究極の言葉で誤魔化すとしよう。


「それは我が家の秘術なので…すみません」

「いえいえ、こちらこそ不躾な質問をしてすみませんでした」


 余計な詮索されなくて良かった。


「これらの素材を鑑定した結果、合計金貨七枚に銀貨八十枚になりました。」


 また困ったことになった。

 この素材にこの金額が妥当なのかどうかわからない。

 今は生きていくためのお金が必要なだけでそんなに大金を求めているわけじゃないんだけど……。

 まぁ今回は仕方ないか。気にしない気にしない!


「ありがとうございました」

「またのお越しをお待ちしております」


 そしてそのまま店を出た。



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