魔法の練習と実践1
ようやく神域の中にある川につきガブガブと水を飲む。神域だけあって水はすごく澄んでいる。
今までに死にかけたことは首輪の件以外ではないが、生き返るというのはこういうことをいうのではないか?
召喚されて拉致されて森で彷徨って……最後に何かを口に入れたのはいつだ?
そもそも俺が召喚されたときからどのくらいの時間が経過してるんだ?
何か口にしたい………ギンさんに訊いてみよう。
「ギンさん、何か食べ物はありませんか?」
「あぁ、少し待っていろ」
ギンさんの言葉に従って数分待っていると先ほどの群れの一部が果実のようなものを持ってきた。
それを貰って食べてみる。
……美味い!!久しぶりに口に入れる固形物が美味しいもので良かった。不味いものでも文句はなかったかもしれないが。
「そういえば神獣って魔法を使うことができるのですか?」
「当たり前だ。この世界に住む知性のある生き物はほとんどが魔法を使うことができるといわれている。ただ、実際に使えるかどうかは別だが。魔物だって上位の魔物なら使うことができるぞ。もちろん身体を強化したり火を噴いたりと簡単なものだけだがな」
「俺にも使えるんですよね?」
「もちろんだ。ただどの程度扱えるかは個人の資質によって変わってくるからなんともいえぬぞ。神獣に使える魔法は人間が使える魔法に比べて圧倒的に少なく、さらに魔法体系も全く違う。故に魔法の使い方は分かるが細かいことまでは教えられぬ」
「使い方だけで十分ですので教えてください!」
「いいだろう。ただ今日はもう遅い。練習をするなら明日がいいだろう」
「わかりました」
「ちなみにだが安心して寝ていいぞ。神域には魔物が入れないように我の部下が見張っておるし、神獣は神獣に襲いかかってこぬ」
「態々すみません。おやすみなさい」
愁斗そう言ってその場に寝転がり、そのまま眠りについたのだった。
次の日の朝、俺は日の明るさで目が覚めて起きる。周りを見回してみるとフェンリル達はすでに起きていた。
川に行き水を飲んで顔を洗う。
その後ギンさんを探して挨拶をした。
「おはようございます、ギンさん」
「おう。よく眠れたか?」
「はい。ぐっすりと眠れました。ありがとうございました」
「気にするな。いつか恩を返してもらうつもりだからな」
ギンさんはそう言って笑う。
もちろんそのつもりだ。恩は必ず返さなければならない。
「もちろんです!俺にできることがあれば言ってください」
「今は特にないからまた今度でいい。それより朝食にしよう」
昨日食べた果実と違う果実もいくつか食べる。
そして俺はギンに魔法を教えてもらうことになり、少し開けた場所に移動した。
神域入口の監視は部下のフェンリルがやっているという。
「まず大まかな話から始めるとしよう。神獣や魔物、魔人と人族、獣人族、妖精族の違いから説明をするとだな――――」
「ちょっと待ってください!!魔人?…てか妖精族?それってエルフとかですか!?!?」
「お、おう………何をそんなに驚いてるのかわからんが確かにエルフなどを含めた種族を妖精族という」
素晴らしい!!エルフと会えるかもしれないなんて………。
エルフは男女問わず美形だと相場が決まってるんだ!ぜひ会いに行かなければ!!
俺だって男だ。今まで人並みに恋だってしてきた。美少女に興味があって何が悪い!
「おい、話を進めていいのか?」
「あっ、すみません……お願いします」
「では最初から話し始めるとだな――――――――」
大まかに分けると神獣や魔物、魔人と人族、獣人族、妖精族は呪文を唱えるか否かで分けられるらしい。
神獣や魔物、魔人は呪文を唱えなくても魔法を発動することはできるらしいが、人族、獣人族、妖精族は呪文を唱える必要があるという。
もちろん魔人で呪文を唱える奴もいるし、人族で呪文を唱えなくても発動できる人もいるらしい。
人族の場合は呪文無しで発動できる人は非常に稀で、才能によって左右されるといわれている。
子供のうちからできる人はまだ一人しかいなかったらしいが、大人になってできるようになった人もいたし、年老いて死期間近になってから使えるようになった人もいたらしい。
結局は研究しても結論を出すことができなかったために、才能ということで落ち着いたという。
人族などが神獣などと違い多くの魔法を取得し発展させてきたのは、その肉体的弱さにあると考えられている。肉体面で勝ち目のない人族らは大昔から魔法の研究に重きをおいている。
長年の研究の成果で使える魔法と使えない魔法が個人で違うことを発見し、今ではそれを複数に分けて、使える魔法と使えない魔法を幼いころに理解し、使える魔法だけを練習することで個人の魔法の錬度をあげるようになった。
魔法は火・水・風・土・雷・光・闇・無・回復・空間・時・強化・付与の13属性に分けられていて、一般的に人族の場合は二・三属性、獣人族の場合は一・二属性、妖精族の場合は三・四属性使える。
ちなみに無属性魔法は全員が使えるし、獣人族は全員が強化魔法を使える(先ほどのカウントには含まれない)。強化魔法を使って肉体的に人族に勝るのではなく、そもそも肉体的に勝っている状態で強化魔法を使えるのだ。
もちろん例外もあって、過去に十三属性中九属性使えたエルフが存在したらしい。
全ての人が属性の才能を持っているが、全員が魔法を使えるかというとそういうわけではない。
火属性を話に挙げると、火花しか生み出すことができない人もいれば、小さな火の玉しか生み出せない人もいるし、家一軒丸ごと焼き尽くせるような人もいる。練習すればある程度は威力は上がる。
使える人数が少ない順に並べると
時・空間……………………世界(数千万人)に一人いるかいないか
闇……………………………主に魔人が使う魔法で人族が使える人は滅多にいない
数十万人に一人いるかいないか
光……………………………魔族(魔人・魔物)に有効な魔法
数万人に一人いるかいないか
雷・回復・付与……………数百人に一人いるかいないか
火・水・風・土・強化……一般的な魔法で使える人が多い