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神創遺産

 神創遺産アーティファクト

 以前一際俺の興味を引いた本があった。それは神創遺産と呼ばれる摩訶不思議な遺産についての本だ。

 神創遺産は人族等が一度滅ぼされかけたときよりもずっと前から存在していたという。

 誰が作ったのか、どうやって作ったのか全く不明で、普通の人間では壊すこともできないそうだ。神創遺産という名に相応しい代物である。

 種類も様々で生活に使うものから戦闘に使うものまでいろいろとあったらしいが、今ではそのほとんどが人間の手にないらしい。

 人間が魔族との戦争で負けを悟ったとき当時の空間魔法使いが世界各地に隠したともばら撒いたともいわれている。実際のところはどうなのか未だにわかっていないらしい。

 俺が探していた伝説の剣にあたるものはこの神創遺産だと思う。

 人間の手にないということは人間が行かないような場所を探せばいいじゃないかと最初は思った。

 でもよくよく考えてみればそれが無理だと思い至った。

 人間が足を踏み入れられないような場所はこの世界にいくらでもあるのだ。

 日本にいたときは人間が住める場所が大陸の多くを占めていたが、この世界では人間が容易に入れない場所のほうが大部分を占めてる。

 そんな場所に神創遺産が隠されていたら手に入れられなくても仕方がないと思う。

 なにせ今のこの世界の人々は魔法の呪文すら碌にわかっていないのだから。

 そんな遺産があっても魔族との大戦に負けてしまったというのはおそらく使う暇もなく殲滅されてしまったからだろう。しっかり使えていたら多少は抵抗できていたかもしれない。

 それに人族等が神創遺産をどれほど手に入れていたのかさえもよくわかっていない。そもそもその遺産がどこから出てきたものなのかわからないらしい。この本を書いた人がたまたま知らなかっただけという可能性もあるが。

 本当に摩訶不思議な遺産である。


 俺が目的地を決めずに旅のようなことをしているのもこれに起因している。

 本当はすぐにでも神創遺産を手に入れたいのだがどこにあるのか見当もつかない。人族等が入らないような、いや、入れないような危険な場所にあるのだということは予測できるのだが。

 それに神創遺産の情報などどこにもないのは明白だ。そんな情報があればどこの国も全力で取りに行くだろうから。

 だからこそ旅をしながらのんびりと探していこうと思っている。



 そんな価値のあるものをもらった姉妹は慌ててそれを返してきた。


「わ、私はこんな高価な物を受け取れません!」

「そ、そ、そうだよ!二つもマジックポーチを手に入れるなんていったいいくらかかるのか想像もできないよ!!」


 それは確かにそうなのだが………。

 それでもせっかく作ったのだから受け取ってもらいたい。


「お金ならたくさんあるって言っただろう?それぐらい気にしなくていいんだけどなぁ。それにきっとこの先、冒険者の生活をしていく上でそれは絶対に役に立つ物だと思うんだ。どうか受けって欲しい」

「………わかりました。絶対に大切に使うと約束します!」

「お姉ちゃんがそういうなら私も大事に扱うことを誓う!!」

「ありがとう」


 その後は食事を堪能しつつ、いつもしているような会話をして昇格祝いが終わった。

 姉妹は終始とても嬉しそうな顔をしていた。

 フェルネもいつもと変わらない様子だった。マジックポーチについて事実に気付いている様子はなかったのは良かった。バレないように魔力を極力抑えて作ったのもだしさすがにバレないだろうとは思っていたのがなんとかなったようだ。


 その日の夜はいつも以上にぐっすり眠ることができた。




 フェルネが六級に昇格するのもあと数日で済みそうだし、それが終わったらこの町を出ることにする。

 三人には既に了承を得ているため俺は早めに準備を進める。


 久しぶりに馬車を引いてもらっている馬に会いに行った。長い間会っていなかったため少し気になったのだ。

 しかし相変わらずおとなしかった。

 まるで俺の心を察しているかのように俺の操車に素直に従ってくれるいいやつなのだ。これからも良好な関係を維持していきたいと思っている。

 普段は宿の店主に暇な時間があったら馬に運動をしてもらうように頼んでいる。これには料金が発生するのだが仲間にはお金を出し惜しみしない。体が訛ってしまうのは困るからな。


 馬との久しぶりの再会を終えた後、俺も少しだけ依頼でもしようかなと思いギルドに向かった。


 ギルドの掲示板には特に目立った依頼などはなかった。

 簡単な依頼を一つ受けて町を出ることにする。できるだけ近場の依頼を選択したため昼過ぎには戻ってこられそうだ。


 依頼を受けるようになってから一人になる機会が多くなった。

 昼間は基本的に個人で依頼を受けるようにしている。それで得た金銭ももちろん個人のものだ。奴隷に金銭を持たせるというのはほとんどないことらしいが、俺からしてみれば個人で稼いだお金を本人の了承を得ているからといって自分のものにするのはとても罪悪感を感じる行為だ。


 ということで一人になったときは基本的には周りに注意を払いながら闇魔法と空間魔法と時魔法の練習をしている。こればっかりはさすがに一人の時以外では練習できない。一つでも周囲の人物にバレればきっと世界中が我先にと接触してきて勧誘するだろうから。

 それほどまでにこの二つの魔法で得られる効果は凄まじい。


 空間魔法は攻撃の面で言えば防御不可能。空間そのものを切れば物理的にも魔法防御でも防ぎきれない。存在そのものを両断してしまう。

 防御の面で言えば攻撃不可侵。ありとあらゆる攻撃を異次元に移し無効化できる。それこそ核爆弾があっても異次元に移してしまえばただの爆弾以下の存在に成り果てる。

 要するに矛盾が矛盾たり得ない究極の魔法なのだ。


 時魔法は時間停止を基本に使ってきたが時間逆行もできる。変化そのものを無かったことにできるのだ。以前、魔物の腕を切り飛ばした後に魔法でそれを再生できないかやってみたところ、見事に元の状態に戻った。時間逆行とはおそろしい能力である。

 それだけではない。切り飛ばしたほうの腕に時間逆行をかけてみたところ死んだ状態の魔物が出来上がった。腕を切られた魔物の本体は腕がないまま存在していた。

 要するに物質のコピーができたのである。

 切り飛ばされた腕が元にあった場所にくっついたのは魔法の効果範囲にその二つを入れた場合だけだった。

 これも究極の魔法といっていいだろう。


 闇魔法についてはララリア王女に教えてもらったのだがこれはまだ効果の全容が見えない。効果が多すぎるのだ。しかしこれも当たり前といえる。いくら魔族が魔法操作が得意だからといって一つの属性で他十一の属性を扱う人族等に対抗できるはずはない。闇魔法に複数の能力が備わっているからこそ強い魔法でいられるのだ。

 俺は今回で幻惑魔法を使えるようになった。これの便利な点の一つとして変装が行える点がある。これがあればいざという時に自分の存在を隠匿できる。そんな状況に追い込まれるつもりはさらさらないが。


 自分に何ができて何ができないのかを知っているというのはとても重要なことだと改めて思い知らされた。

 今回の依頼は練習時間に限り大いに意味のあるものとなった。

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