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愚か者

 ギルドに向かうとそこにはすでにフェルネ達はいなかった。

 でもそれも仕方がない。そこそこ時間がかかってしまっている。


 三人はそれぞれ個別に依頼を受けている。冒険者パーティーの階級はメンバーで一番階級が高い人の階級で、それ以上は依頼で上げるということになっているのだ。俺としては個人の階級をあげて冒険者パーティーの階級も上がるというほうがいい。全員が七級で冒険者パーティーとしては五級というのはなんというか舐められそうだ。そういう冒険者パーティーもいるのだろうが、メンバーが一人減っただけで階級の落ちるパーティーだと思われるのは心外だ。

 フェルネはすぐに六級に上がるだろう。俺と姉妹のデータから階級アップ条件を大体ではあるが絞り込めている。

 姉妹がいつ四級に上がるかはまだわからない。俺自身まだ四級になっていないのだから。


 フェルネ達に依頼の調子を心話で確認をする。


『俺の用事は終わったけどみんなは依頼どうかな?』


すぐに返事が返ってきたのはフェルネだった。


『既に二つ目は終わったぞ。今は三つ目の依頼場所に向かっている』


 さすがフェルネだ。

 依頼達成スピードがチートすぎる。

 今までフェルネの依頼スピードは俺がそこそこ調整していたのだが、やはり俺がいないとやりすぎてしまうところがあるようだ。フェルネが本気を出したら間違いなく最速になってしまうのだから。一つの冒険者パーティーに歴代最速で六級に上がった人物が二人いたら間違いなく目立つ。

 もうすでに十分目立っているのだがこれ以上は避けたいところだ。

 しかしフェルネだけ階級が低いと仲間外れにしているようで罪悪感を覚えてしまう。六級に上がるまでは我慢してやるか。


『今依頼終わりました』


 次に心話が届いたのはレイナだった。

 レイナもアイナも既に十近くの五級依頼を達成している。そろそろ階級が上がるころだと思うのだが。


『私も今終わったよ!』


 レイナの心話のすぐ後にアイナからも心話が届いた。

 さすが姉妹というべきか、息がぴったり合っている。


『二人ともお疲れ様。でも町に戻ってくるまで油断しないでね。どこで何が起こるかわからないから』

『わかりました』

『了解!』




 結局全員が集まったのは夕方頃だった。

 今日姉妹は一つしか依頼を受けられなかったがフェルネは四つ受けたそうだ。明らかに俺の倍近くのスピードだ。

 数日に一回の依頼を受けるのが一般的なのだがそんな常識など鼻で笑う行動になってしまっている。


 みんなで依頼達成の証明を持ってギルドに入る。

 中は夕方ということもあってなかなか騒がしい。

 今日の依頼について語る者、情報を交換している者、冒険者パーティーで話し合いをしている者などたくさんいる。


 三人はそれぞれ違う受付に行き依頼達成の証明部位を出す。

 そして依頼達成をして戻ってきた。

 そこで姉妹が俺に話しかけてきた。


「明日もう一度ギルドに来てほしいと言われました」

「私も言われたよ!」


 俺はその言葉の意味が理解できた。

 明日には四級に上がるのだろう。だからこそもう一度来てほしいと頼んだのだ。

 フェルネは特に気にした様子もない。差が開くことに特に何も感じていないのだろうか。

 いや、もしかしたら差だとすら思っていない可能性もある。上級魔人の戦闘力は一級冒険者の比ではないだろうから。ギルドの階級など気にする必要がないのだ。


 俺はそのことを了承し三人をつれてギルドを出た。




 次の日ギルドに行き受付に昨日の件について伝えると、職員は一旦奥に引っ込み一人の男を連れてきた。見た目は四十台だろうか、俺の予想ではギルド長だ。

 周りのひどく驚いた顔からもその可能性が高いことがわかる。ギルド長はあまり人前に姿を見せないのだから。


 その男は俺、フェルネ、姉妹の順に見回した後、ため息をついて隣に立つギルド職員の女性を見てつぶやく。


「そんなわけないだろう。こんな奴らに四級冒険者の資格があるだと?笑わすのも大概にしてくれ。特にそこの小娘など尚更ありえん」


 俺はこの男が何を言っているか一瞬理解できなかった。

 あまりにも予想外の言葉すぎて脳が働かなかったからだろう。

 てっきり姉妹が四級冒険者になるものだと思っていたのに。


 しかしこの男の言葉を理解したとき何故かそこまで怒りは湧かなかった。いや、多少の怒りはある。しかし怒りを通り越して呆れ果ててしまったのだ。目の前に立つ無能に怒りを覚えるだけ無駄だという思いもあるかもしれない。

 姉妹達も呆然としている。


 俺は冷静に問いかける。


「すみません。あなたの言っていることが理解できませんが。そもそもあなたは誰ですか?」


 俺が言葉を発すると興味のないものでも見るかのように冷たい視線をこちらに向けてきた。


「これだけの八百長をしたんだからそこそこ頭が回ると思っていたのだが頭も悪かったのか…………興ざめだな。しかも俺のことも知らないときた」


 知らなくて当然だ。

 ギルドで誰が強いかなど俺にはどうでもいいことなのだから。


「俺は四級冒険者のドイケルだ」

「それで?」

「あんたはマジで馬鹿なのか?四級の俺がお前たちにその資格はないと言ってるんだ。俺が十年かけてようやく上がれた四級にあんたらみたいなガキがなれるわけないだろって言ってんだ。どんな裏技使ったのか俺に教えてくれよ」


 何かと思えばただのやっかみか。

 自分が十年かけてたどり着いた場所に子供の俺達が一か月もかけずにたどり着けるはずはないと。

 確かに理解できなくもないがドイケルとやらの口の利き方が気に入らない。


「シュウトよ、この馬鹿を殺していいか?」


 フェルネがだんだんとキレつつあるようだ。

 魔人からすれば弱者である人間に罵られるのは頭にくるのだろう。


 俺がその言葉に答えようとするとドイケルがその言葉に答えた。


「おい、姉ちゃん。自分の力量を理解できていないのは愚か者だぜ?」


 俺が助けてあげようとしているのにドイケル自身が火に油を注ぐとは。

 これは殺されても文句は言えないな。


 まさに一触即発の空気。

 ギルド内の他の人々は緊張した面持ちで俺達を見つめている。四級冒険者が本気を出せば五級冒険者など相手にならないのだから。


 フェルネが今にも襲い掛かろうとしている。


 その時。


「自分の分をわきまえていないのは君ですよ、ドイケルくん」


 そう言いながらギルドに入ってきた人物がいた。

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