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ケイト家族の拉致2

 走り出して追いつくのに三十秒もかからなかった。

 目視できたところでどうやって敵を無力化するか考える。

 この後こいつらを尋問するだろうからできるだけ俺の手の内は隠しておきたい。

 人間の無力化に火魔法を使ったら流石に死んでしまうだろう。

 ミネリク皇国の人間なのだろうし死んでしまっても知ったことではないが今回はそうはいかないからな。

 やはり風魔法での無力化が一番いい。

 幸運なところは子供のミミちゃんが気絶して担がれているところだろう。ショッキングなシーンを見せずに済みそうだ。

 ケイトさんとダイズさんはそれぞれに監視が付いていて会話もさせてもらえないらしい。

 敵はそれぞれが商人のような身なりのいい格好をしている。

 おそらく商人として潜伏していたのだろう。


 まず心話妨害のために広範囲で結界を張ってから俺はゆっくりと狙いを定める。

 ボールを投げるようなものとは訳が違うので、当てようと思って魔法を打ち出せば当たるのだから慎重に狙いを定める必要はない。どうやら周りの人々は違うらしいのだが。

 俺も今回は多方向から魔法を射出するので慎重にならざるを得ない。

 使う魔法は『ウィンドブレード』という魔法。鎌鼬と呼んだほうがイカしてる気がするが、その詠唱ではこの世界の住人が魔法を行使できないからな。

 この魔法の効果は鎌鼬そのもの。遠くの物質を空気で切り裂く。


 ケイトさんの家族に当たらないように慎重に狙いを定めたところで素早く魔法を射出する。

 放たれた魔法は寸分違わず敵三人の両肩から先を切り落とした。


「……ん?」

「……え?」


 あまりに綺麗に切り落としたからか、いまだに何が起きているのか理解できていないらしい。


 俺は落下を始めたミミちゃんの傍に一瞬で駆け寄り、ゆっくりと抱きしめる。

 そこでようやく三人は攻撃されたことを理解したらしい。

 しかしもう手遅れである。

 両手は既になく人質をとることもできない。


「ミミちゃんをお願いします」

「え?あ、はい」


 呆然と立ち尽くしていたケイトさんにミミちゃんを渡してケイトさん達を風の結界で覆う。

 そこからは敵を一人ずつ気絶させていった。


 無力化してすぐに全員の両腕をくっつけていった。

 別にくっつける必要はないのだがミミちゃんが目を覚ましたら大変だからな。


 全員の拘束を終えたところでケイトさん達に振り返った。


「大丈夫ですか?」

「は、はい。もう何がなんだか……」

「まずは怪我を治しますね」


 そういってケイトさん達の治療を始める。

 ケイトさんとミミちゃんは擦り傷程度だがダイズさんは全身のところどころに大小様々な傷を負っていた。


「あの、ありがとうございました」

「いえ、今回の件は私に原因がありますから」


 俺はケイトさん達が狙われた理由やそうなった経緯を話した。


「そういうことだったんですか…………二度も助けていただいてありがとうございました」

「今回のは当然のことをしただけで感謝するようなことではないですよ。こちらに落ち度がありますから。では早く王都へ向かいましょうか」


 少し強引に話を切り上げて王都に向かった。



 結局王都に着いたのは昼過ぎだった。

 もともと王都に近い場所だったし途中で先ほど助けてもらった騎士が待っていてくれたので、そこからは馬車に乗せてもらったからだ。

 どうやって無力化したのか訊かれたが魔法が得意とだけ答えておいた。

 ケイトさん達は笑っていたが。


 ミミちゃんが王都に向かっている途中で目を覚ましたがなんとかなった。

 最初は先ほどの出来事の恐怖の所為で泣き出してしまうかと思っていたが、俺を見てすぐに明るい顔になったので安心した。

 そこから王都に着くまでずっと俺の膝の上に座っていた。先の理由で拒めなかったのは言うまでもないと思う。


 王都の城門では姉妹とラスタルさんにサリバンさんが待っていた。

 結局助けには来なかったのか。

 まぁいたらいたで邪魔だったのだが。


「やはり無傷で戻ったか!さすがは六級冒険者だな!!」

「シュウトさん、お疲れ様です」


 サリバンさんがそう言ってニヤリと笑い、ラスタルさんが労いの言葉をかけてきた。

 俺と一緒に王都に来た騎士たちはその言葉に絶句する。


「今は五級冒険者です」

「ん?昨日あたりに五級になったのか?」

「そうです」


 そのことに何故かまた絶句する騎士一行。


 愁斗は知らないことだが一般的な騎士の実力は冒険者五級相当。

 その騎士五人に勝利してみせた相手達に冒険者五級になりたての人間が勝てるわけがない。

 騎士はそのことに驚いていたのだ。


「そうかそうか!訓練が楽しみになってくるな!!」

「魔法以外は普通の冒険者以下ですよ」


 自分で言ってて悲しくなるが事実だ。

 俺の肉体的スペックと魔法があったからこそ上級の魔物を倒せてきたのだから。


「そういえば捕らえた襲撃者はどうしましたか?」


 長く続きそうな会話にラスタルさんが終止符を打ってくれた。


「馬車の後ろで寝転がって寛いでいますよ」

「そうですか」


 ラスタルさんが馬車の後ろのほうで縛られて寝転がっている襲撃者を確認する。

 どいつもこいつもこちらを睨みつけているが少しも怖くない。

 心話も馬車に結界を張っているから問題ない。


「ではこの人たちは私たちが預かりますね」

「よろしくお願いします」


 ラスタルさんはそのまま城に向けて馬車ごと去ってしまった。

 あんな人たちに街中を歩かせるわけにはいかないしな。


「訓練は明日に持越しになりそうだな」

「そうですね」


 今日はさすがに仕方ないか。


「ケイトさん達はどうなるんですか?」

「まずは城に連れて行かねばならないだろう」

「ですよね。じゃあ行きましょうか」


 その後はケイトさん達を伴って城に行き、軽く事情聴取をされただけで終わった。

 ケイトさん達はしばらく国で安全を保障するとかで城に隣接する別館でお世話になることになったそうだ。このことには国に感謝している。


 よし、明日から本当に訓練に取り組もう!

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