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ユークリウス国王への謁見3

 軽い挨拶が終わったところでサリバン将軍が話しかけてきた。


「シュウトは何属性保持者なんだ?」

「大勢の前では言いたくありません」


 そう言って後ろに立っていた近衛騎士を見る。


「ラスタルとサリバン以外は部屋から出ろ」


 近衛騎士は国王の命令に一瞬の躊躇いもなく部屋から出ていった。

 全員が部屋から出たのを見計らってから話し始める。


「火・風・強化属性と………回復属性です」

「なるほど。四属性保持者ですか。やはりなかなかの逸材だったようですね」


 ラスタル近衛騎士団長が感心したように言った。

 しかし国王は少し考え込むように黙りこんだ。

 そしてゆっくりと口を開いた。


「シュウト殿はケイトという女性を知っているか?」

「………知っています」


 国王が驚いたように、そして何かを確信したように言った。


「では最近その人の病気を治療したか!?」

「はい」

「やはりか!!シュウト殿がカイン病を治したのだな!!その技量がこの世界でトップクラスなのは理解しているか?」

「はい。ちなみに回復属性と同じくらい強化属性も得意です」


 国王はもちろんだが残りの二人がそれ以上に驚いていた。


「それは本当か!?」

「シュウト君、それは本当ですか!?」

「え、ええ、まあ」


 あまりの驚きように少し引いてしまった。


「その力を見込んで頼みがある!!」

「私もです!どうかお願いします!」

「はい。私で良ければ」


 そのあとは誰を治療すればいいのか話した。

 サリバン将軍のほうは数年前から妻が耳が聞こえないらしくそれを治してほしいとのことで、ラスタル近衛騎士団長のほうは年の離れた妹が乗馬事故で下半身不随になってしまったらしくそれの治療を頼んできた。


 その話が終わったとき国王が咳払いをして話の流れを変えた。

 よくよく考えてみれば国王の前で国王を無視して話していては不敬なことだと思い至った。

 二人がすぐに謝ったが国王は気にしていないというように手で制した。


「二人の大切な人を思う気持ちを私はよく理解しているつもりだ。それぐらい熱くなっても仕方あるまい。それよりもシュウト殿に話しておきたいことがある」

「なんでしょうか?」

「シュウト殿がカイン病を治したことはシュウト殿が考えていることよりもずっと重大なことだ。今回の調査でシュウト殿の名前が出なかったことから、治療主ではなく患者のほうに目が向けられる」

「…………」

「気づいたようだな。シュウト殿が考えている通り、ケイトという女性の身に危険が迫っているかもしれない。もちろん私達は迅速に彼女を保護した。今この王都に護衛をつけて連れてきているところだ。しかし仮にミネリク皇国が手を出すとなると何をするかわからない。君という存在を手に入れるためにそこそこの戦力をもって彼女を捕らえようとするだろう」


 ………そんなこと考えてもいなかった。

 治療したらもう大丈夫だと思い込んでいた。

 治療するならその後のことまで考えるべきだった。

 治療した全員のその後まで気にすることは無理だろうけど、せめて多くの視線が集まる最初の患者にはもう少し配慮をすべきだった。

 もしかしたら自分が不治の病を治したことに浮かれすぎていたのかもしれない。

 だからこんな当たり前のことにも気付けなかったんだ。

 よく考えれば不治の病を治すことがこんなに簡単なことなわけがないのに。

 今回だけでも責任をもって彼女の安全を確保しなければ。


「彼女に何かあったら私がシュウト殿に連絡をしよう。今日から少しの間この城に住むのだからいつでも連絡できるはずだ」

「はい。よろしくお願いします」


 ちょうど話が一区切りついたところで先ほど出ていったザルザが部屋に入ってきた。

 少し困惑したような表情だった。


「シュウトさんにお持ちしていただいた魔物の素材なんですが鑑定が終わりまして………総計が高すぎて買い取っていいのか悩みまして…………」

「どれくらいになった?」

「白金貨でいって百二十枚ほど」

「百二十枚だと!?」

「はい」


 白金貨が一枚一千万ほどの価値だから…………十二億!?

 これはスゴイ…………。


「どうしてそんなに高いのだ?」

「それが、素材自体がどれもミネリク皇国の神域前を主な生息域としている四級から二級の魔物の素材でしてかなりの高額になってしまうのですが、それに加えて信じられないほど品質がいいのだそうです。外傷がほとんどなくどのように殺したのかわからないと鑑定官が言っておりました。素材そのものも魔物の死後一時間も経過していないほどの鮮度とのことで………」

「シュウト殿………話を聞かせてくれないか?」

「そうですね…………魔物はどれも風魔法の応用で殺しました。鮮度の維持方法は我が家の秘術なので教えられません」


 もちろんそんなことはない。

 前も似たような事を言った気がするな。


「………そうだな。それならば仕方ないか」

「それでどうしますか?」

「さすがにこれ程の額をいきなり使うとこの先心配だな………」

「なら。軍の予算を少し充ててくれ」


 今まで黙っていたサリバン将軍が話に入ってきた。


「大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。あの素材を軍の武具に使えば相当な戦力の向上が予測される。それにあれらの素材は市場に滅多に出ない素材だ。今のうちに確保しておきたい」

「わかった。そういうことで進めよう。ザルザは金銭の準備を頼む」

「承知いたしました」

「では今日はこれでお開きとしよう。シュウト殿、最後に何か言うことはあるか?」

「一つだけ」

「なんだ?」

「ミネリク皇国の件についてなら協力することもやぶさかではありません。ただし今後私の自由を妨げないでほしいです。それと今日のことは内密にお願いします」

「…………本来シュウト殿を召喚したのはそれが目的なのだ。助力はとても助かる。そしてその二つの要求は受け入れることを約束しよう」


 俺は最後に伝えることを伝えて部屋を後にした。








 愁斗が部屋を出た後、三人はまだその部屋で話をしていた。


「彼は予想以上の逸材でしたね」

「そうだな。あいつは剣術も体術もなしですでに俺の強さを超えている。なんといっても二級の魔物を単独で倒せている時点で世界最強の一人なんだからな。【九属奏ノネット】か【五天奏クインタプル】になるのもそう遠くはないかもしれないな」


 ラスタルの言葉にサリバンが大きく同意する。


「おそらく相当な魔法の使い手なのだろう。だからこそカイン病を治すことができたのだ。私たちはどうやら想像を遥かに超える人間を召喚してしまったようだな。ここで暴れられていたら皆死んでいたかもしれない………」


 この言葉を二人は否定することができなかった。


「しかしだ、彼を全力をもって鍛錬せよ。敵対する可能性は高くないと予想できる。少しでも恩を感じてくれるように心がけねばなるまい」

「はいよ」

「わかりました」

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