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ユークリウス国王への謁見2

 国王が向かいのソファーに腰かけたところで国王に促されて俺もソファーに座った。


「お会いくださりありがとうございます」


 まずは俺から話し始めた。


「いや、私も話をしたいと思っていたのだ。お主に……シュウト殿に話さなければならないことがたくさんある」

「私もいくつかお聞きしたいことがあります」


 俺の言葉を聞いて国王の表情が少し心苦しげに変わった。


「まずは一つシュウト殿に確認しておきたいことがある。………お主をこの世界に呼び出したのは私で、この国が総力を挙げて召喚したのだ」

「知っています。私もここに来るまでは半信半疑でしたが、私の顔を見た門番の騎士が驚いた表情をしていたので」

「そうか……」


 国王はそこで話を切ったが、すぐにまた話し始めた。


「ということは今の自分の状況をある程度は理解しているのか?」

「はい。この国で召喚されてすぐにミネリク皇国に拉致された………違いますか?」

「……その通りだ」

「召喚されてすぐに拉致されるとは、あまり私が必要なかったように思いますが?」


 別にそんなことは思っていなかった。

 しかしここにきて自分の状況を再確認させられて、自分でもよくわからないような感情に満たされていた。

 それは安堵なのか困惑なのか、はたまた憤怒なのか。


「そんなことは断じてない!!私がシュウト殿の人生を荒らしてしまったのは理解しているし、このようなことになってしまったことを本当に申し訳なく思っている!!言い訳をするのは見苦しいことだと承知で私の話を聞いてほしい……」

「そのためにここに来ました」

「ありがとう……実は私達にもよくわかっていないのだ。あの日召喚に成功したときシュウト殿は眠っていた。最初は死んでいるのかと戸惑ったが呼吸はしているし生きていることは確認できた。だから国賓専用の部屋に移して厳重な警備で、それこそ近衛騎士団長を除くこの国の最強戦力である近衛騎士を警備につかせて、そこから一週間目覚めずに眠り続けたシュウト殿を守っていた。今後ろで控えているのがその近衛騎士だ。そして警護を続けて一週間後の夜中にいきなり姿を消したのだ」


 近衛騎士が申し訳なさそうに頭を下げてきた。


 ………俺そんなに眠り続けていたのか。

 拉致されてからも眠り続けていたのだからもっと寝ていたのだろうが。


「本当に意味が分からなかった。近衛騎士は交代で夜中も警護していたし部屋に入ることはおろか近づくことさえもできぬはずだった。しかし定期的にしていた確認で部屋に入ったときそこにシュウト殿はいなかった。近衛騎士が警護する中で逃げ出せるはずはなかったのだが、最初は逃げ出したのかと思った。しかし起きてもできるだけ警戒心を上げないように最高級の部屋で待遇していたのだ。それこそ悪意などないと知ってもらうために。そこから拉致されたのだと思い至ったのだ。そんなことをするのはミネリク皇国しかいない。あそこは力が全ての国だ。国の力を上げるためならなんでもする」

「そうだったのですか………事情は分かりました」

「本当に申し訳なかった!」


 国王は立ち上がって頭を下げた。

 日本人としては目上の人に頭を下げられるととてもムズムズする。


「私は別に謝罪を聞きにここに来たわけでありませんから」


 俺がそう言うと国王は緊張した顔になり、近衛騎士は少し身構える。


「………私を殺しに来たのか?」

「………はい?」

「ミネリク皇国に命令されて私を殺しに来たのではないのか?」

「まさか。むしろ私があの国の皇主を殺してあげたいくらいですよ………ああ、操られていると思っているわけですね………この通りです」


 俺はその場で首が見えやすいようにローブを外した。

 ローブの下に着ているのは防具。

 もちろん何かあっても目立たない安物の防具だ。

 素材だけ最高のあの残念な防具はこのあと武具店に行って改良してもらう予定だ。


「首輪は………どうしたのだ?」


 俺を見ている目は防具には目を向けもせずに首のあたりを凝視している。


「もともと私はミネリク皇国から脱出してここまできたのです。首輪は脱出の際に破壊しました。危うく殺されかけましたが」


 あの時のことは今でも忘れない。

 絶対に報復すると決心したのだ。


「どうやって破壊したのだ?」

「……内緒です」


 あなたのせいで危うく死ぬところでしたよという皮肉には気づきもしないぐらい目を丸くしていた。


「そうか………無理には訊かない」

「ありがとうございます」

「シュウト殿が生きていることをミネリク皇国は知っているのか」

「どうなんでしょう?首輪の魔法が発動した後に誰も探しに来なかったので知らない可能性は高いですね」

「なるほど………ところでシュウト殿は冒険者になったのか?」

「はい。今は六級冒険者です」

「もし金銭が必要なら私たちが出そう。もともと一生を遊んで暮らせるほどの金銭を渡すつもりでいたのだ」

「けっこうです。この国に借りを作りたくありません。この国が私にいくつか借りがあるとは考えていますが」


 さっきの皮肉を無視されていたことにムッとしてもう一度皮肉を言ってみる。

 案の定、国王は痛いところを突かれたような顔をした。


「それで貸しの一つをここで使ってしまいたいんですけど」

「私たちにできることならなんでも言ってくれ。できる限りのことはすると約束しよう」

「ありがとうございます。私は二人の冒険者仲間と一緒に行動しているのですが、二人も含めて私達に剣術や体術を教えてほしいのです」

「そんなことでいいのか?」

「はい。それと―――――――――――――――」


 俺が何か言い出す前にいきなり大男が部屋に入ってきた。


「おい!あれらを倒したのはおまえか!?」


 いきなり現れた男はまだ四十代ぐらいに見える大男だ。

 顔つきは無表情でも周りを威圧できそうな感じだ。

 身体のあちこちには傷があり、その数は冒険者の比ではない。


 国王はこの大男に向かって呆れたように言葉をかける。


「またか………サリバン、今重要な話し合いをしているのだ。邪魔をしないでいただきたい」

「お、おう。しかしな、彼が運んできた荷物の中身がすごいぞ!!全てが上級魔物の素材なのだ!!」

「本当か?」

「そのことについて話があります」


 勝手に話を始める前に俺が先に話し出す。


「魔物の素材を多く手に入れたのでこの国で買っていただこうかと思いまして」

「どうやって手に入れたのだ?」

「もちろん討伐してです」

「そうか。買い取ろう。ザルザ」

「はい」


 後ろに控えていた大臣らしき人が部屋から出ていった。


「さて、今後の話をしよう。これからここで鍛錬するならこの城で泊まるがいい。もちろんいつまでいてもいいのだが……」

「城で泊まるのはお受けしてもいいのですが、鍛錬が終わったらここを出て冒険者生活に戻ります」

「そう言うと思っていた。そういうことにしよう。鍛錬はそこにいるサリバン将軍と私の後ろに控えているラスタル近衛騎士団長がする。二人ともこの国の最強の名に相応しい力量を持っている」

「サリバンだ。鍛錬すればいいのか。よろしくな!」

「ラスタルです。一緒に頑張りましょう」


 ラスタル近衛騎士団長はサリバン将軍とは反対の雰囲気を纏っている。

 ラスタル近衛騎士団長は金髪で美形の顔だちをしている。

 二十代後半を思わせる若々しさで多くのファンを持っていそうだ。


「大崎愁斗と申します。これからよろしくお願いします」

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