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回復薬とカイン病2

 次の日の朝もいつも通り朝食を食べてから買い物に向かう。


 食料などの生活必需品を用意したあとは武器屋に冷やかしに行った。

 男なら憧れるだろう、伝説の武器というものを探しに!!

 もちろん普通に市場に出回るはずはないだろうが、それでも気になってしまうのが男の性というものだ。

 しかし武器屋は見ているだけでも十分に楽しい。

 この世界は売り込みが激しいところがあるので、それさえなければ何時間でもいられそうなんだけど。

 それに今一番欲しい大鎌はどこに行っても売ってないのが気になる。実用的な武器ではないということだろうか。

 確かにバランスは悪そうだが決して使えないわけじゃないと思う………使えないか。

 でもカッコイイし持っていたら強そうじゃないかな?

 …………持ち歩きに不憫だな。


 そんなことで悩んでいた愁斗にアイナが話しかけてきた。


「ご主人様は何がいい?」

「え?何が?」


 話を聞いていなかった俺にアイナがムスッとした顔をする。


「ちゃんと話を聞いててよー!スライム菓子の味は何がいい?」

「…………はい?」


 スライム菓子。

 なんてエキセントリックなお菓子なんだ……。


「スライムをどうやって食べるんだ?」

「あっ、そうか。ご主人様はまだ食べたことがなかったんだね」

「最初はみんな驚くと思います。私も最初は驚きましたし」

「スライム菓子ってのはね、スライムのコアを取り除いて残りの部分を洗ってから果汁と混ぜて食べるんだよ。スライムのあのドゥルっとした感覚がたまらないんだから!!」


 そのまま屋台の看板に書いてある味の一つを選択して頼む。


 味は普通に果実なんだけど食感はゼリーだ。

 日本人の俺には馴染み深い食感だが、こっちの人には珍しい食感なんだろう。

 ゼラチンなんて普及してなさそうだったしね。


「うん。すごく美味しいね」

「でしょでしょ!………あのね、私のを少しあげるからご主人様のも少し欲しいな」


 !!!

 そんな顔されたら断れないよ……。

 鼻の下が伸びてないか心配だ。


 そんなことを考えていたら次はレイナが似たようなことを言い出す。


「私も交換したいです!」


 なんてこった。

 今後罰が当たらないか心配だ。

 でもそれはそれ、これはこれ。


「もちろんだよ。交換しよう」


 必死にニヤけないように顔を取り繕いながら頑張って交換した。


 嬉しいハプニングも終わりその日はそのまま上機嫌で一日を過ごしたのだった。



 翌日の早朝。

 馬車に荷物を積み終わり、いざ出発というところで問題が起こった。


 馬車を町の出口の門の近くまで進めると、そこで六、七歳の女の子が泣きながら馬車を止めようとしていたのだ。

 かなり危険そうな場面だったので慌てて介入を試みる。


「どうしたんですか?」


 女の子は必死すぎてまだこちらに気付いていない。


「ぐす……お金返してよぉ~……」


 どうやら金銭的な問題のようだ。

 この馬車の持ち主がお金を奪ったのか?


 急いで馬車の前に回り込み馬車を止める。

 姉妹は危うく轢かれそうになっていた女の子を後ろに庇い、俺と同じく馬車の持ち主を確認する。


 そこには見知った顔があった。


「またあなたですか」


 その人は一昨日俺達に偽回復薬を売りつけてきた人だった。


「あぁ君たちか。回復薬でも買いに来たのか?」

「そんなわけないでしょ!!」


 怒り気味のアイナが反論する。

 レイナは女の子に事情を聞いていた。

 俺は逃がさないように馬車の進路上に立ちはだかる。


「おい、邪魔だぞ。そこをどけ」


 もちろん無視する。


「レイナ、何かわかった?」

「はい。どうやら病気のお母さんのために貯めてたお金で薬を買ったみたいなんですが全く効果がなかったようで、この子がお金を返すように言いに来たらしいのです」

「そうだったのか」


 こんな小さな子供にまで売りつけてたのか。

 酷いにもほどがある。


「お金を返してあげてくれませんか?」

「あんたは馬鹿か!?どうしてお金を返さなきゃいけない。この子は薬を使ってしまってるし、効果がなかったのだってたまたま合わなかっただけだろ」

「偽回復薬を売っていたことをこの町の騎士に言いつけます」

「勝手にしろ。果たしてあんたみたいなガキの冒険者と回復薬販売の証明書を持ってる俺の発言のどっちを信じるかな?」


 商売人だけあってさすがに口がうまい。

 でも言ってることは確かに正論だ。

 たぶん騎士はあいつの味方をするだろう。


「わかったらさっさとそこをどけ!」


 仕方なく道をあける。


 偽回復薬商売人は門で待っていた数人の冒険者と町を出ていった。


 次はこの女の子だ。


「いったいいくらで薬を買ったの?」

「……銀貨二枚」


 まだ少し目が赤いもののゆっくりと落ち着いてきている。

 いや、落ち込んできている。


 銀貨二枚か。

 立て替えてあげてもいい。懐は全く痛まないし。

 でもそれは何か違う気がする。

 知り合いにお金を貸すのとはわけが違うし、いつでも誰かに助けてもらえると思われても困る。


「お母さんの病気は何ていうの?」

「カイン病っていうの」


 ごめん、わからない。

 そもそも元の世界でもそれほど詳しくなかったのに、こっちの世界の病気に詳しいわけがない。

 ここではかなりの暗記力を有しているらしいし、病気についても勉強しておくべきかもしれない。

 今度ギルドか書店に行って勉強しよう。


「レイナ達は知ってる?」

「すみません。わからないです……」

「私も知らない」


 そうか……。

 俺の回復魔法で治せるだろうか。

 この世界は怪我も病気も魔法で治せるらしいから試してみる価値はある。

 ただ、ダメだったときにこの子を傷つかせてしまわないか心配だ。

 だからといって何もしないというのは間違ってると思う。

 可能性があるなら試してみたい。


「君のお名前を教えてくれるかな?」

「……ミミ」

「そうか、ミミちゃんっていうのか。よろしくね。僕の名前は愁斗っていうんだ」

「私はレイナです」

「私はアイナ」

「……うん」

「もしよかったら、僕にお母さんの病気を診せてくれないかな?治せるかもしれないんだ」


 俺の言葉を聞いた途端、いきなり明るい顔になった。


「本当!?」

「絶対とは言えないけど治せる可能性は高いと思う。それでもいいかな?」

「うん!!」


 ……あんまり俺の話を聞いてないな。

 まぁいっか。

 たぶんできる。

 回復魔法はあまり使う場面はなかったけど、姉妹を治した時はその効果にとても驚いていた。

 回復魔法以外だってその効果はかなりのものみたいだし、魔力量だって普通じゃないらしい。

 これなら治せるはずだ!!


 ミミちゃんに案内してもらって、ミミちゃんの家に向かう。

 目立たないように自分たちとミミちゃんの雰囲気を闇魔法で消すことは忘れない。

 早朝だったこともあり幸いまだ人は少なかった。

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