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戦争と詠唱

 ちょっとした事件のせいで時間を多く浪費してしまったが、その後の準備は順調に進んでいった。


 まず姉妹がちゃんとした武器と防具を持っていないことから、それらを買いに行くことになった。

 武器はレイナが短剣、アイナがレイピア。

 レイナの戦闘手段は基本は魔法攻撃。よって護身用の短剣を買った。

 アイナは魔法と接近戦をこなすためにレイピアを買った。

 ちなみに俺は買ってない。今の俺には武器なんて必要ないし、買うなら王都で素材を武器屋に渡して作ってもらいたい。大鎌が非常に憧れる!ちょうど鎌にピッタリなクイーンマンティスの鎌をいくつも持っているからな。

 防具はできるだけ高いものを買った。レイナにはローブと皮革の胸当て。アイナには皮革の胸当て、肩当て、籠手。


 防具に強化魔法を付与したいがどうしよう。そうすれば簡単に壊れなくなるだろうし二人の安全に役に立つだろう。

 もういっそのこと魔法のことを告白してしまうか?

 時、空間、闇はともかく他は別に隠す必要はない。

 時と空間がもし周りにバレると大騒ぎになってかなり注目を浴びてしまう。

 闇魔法はそれ自体が危険な魔法だ。もともと魔族が使う魔法とあって特異な能力が多い。攻撃は言うまでもなく、他は『支配』の能力に偏っている。空間や精神の支配がその例だ。俺も空間支配の能力の一部を使って自分の気配を消すことがある。

 他はバレたところでなんということはない。多属性使いであることを知っているのは姉妹の二人だけなのだから。


 今日の夜にでも魔法の告白をして防具に付与しよう。

 そのついでに魔法の詠唱についても訊いてみたい。他人の詠唱は初めて聞いたからな。


 最後は馬車だ。

 昨日は売ろうと思っていたけど結局売る機会を失った。だから今日こそ馬車と馬を新調しよう。


 すぐに馬車を売っているらしいお店に来た。

 馬車と馬を売ることを伝えた後に新しい馬車と馬が欲しいことを伝えると、店主と店の裏側にある厩舎に向かった。


 正直言うとどの馬も同じに見える。

 説明を受けても「元気なんだなぁ」とか「おとなしいのかぁ」ぐらいしかわからない。

 だってそりゃそうだろう。馬なんて前の世界でほとんど触れ合う機会なんてなかったんだから。

 仕方なく今回はおとなしいやつを選ぼう。なんか可愛い……ように見えなくもない。

 馬車は見た目が平凡な幌馬車を選んだ。高い馬車は目立ちそうだし、今まで見た馬車もこのタイプの馬車は多かった。


 買取を済ませた後、宿に戻ってから二人にテーブルについてもらった。

 そこで話を始める。


「実はさ……とある事情で話さなくちゃいけないことができたんだ」

「………何ですか?」


 真剣な俺の言葉を聞いたレイナが暗い表情になった。

 なにか暗い話を始めると勘違いをしてしまったようだ。


「暗い話じゃないよ!!………実は、俺は他にも三つの属性が使えるんだ」

「……え?今なんて?」

「だから、火・風・光・回復・強化属性以外に水・雷・付与魔法が使えるんだ」


 開いた口が塞がらない状態の人を目の前で見たのは初めてかもしれない。

 普通なら滑稽に見えるそれも美少女がやったら可愛く見えるというのはズルい気がする。

 まぁそのズルのおかげでいい思いをしているから文句はないんだけどね。


「そこで、二人の武器と防具に強化属性を付与したいんだ。そうしたら普通の格好だから目立たないし、身体は守られるしで一石二鳥だしね」

「………わかりました。ちなみにイッセキニチョウとは?」


 こちらには似たような言葉はないのか。

 今後はちょくちょく教えていこう。きっと会話しやすくなるはずだ。


 強化もし終わり次は質問をしてみる。


「そういえばさ、魔法の詠唱ってどんなものがあるの?今まで詠唱ってほとんど聞いたことがなくてよく知らないんだ」

「そうなんですか?だいたいは専門の本に載ってることですが、私の場合は『ウォーターカッター』や『サンダーボルト』などはよく使いますね」

「私はね『ファイアアロー』とか『アースバインド』とかかな」


 ………うん、聞いただけで想像できる魔法だ。

 この世界こんなチョロくていいのか……。


「なんともまぁわかりやすい魔法詠唱だね」

「え?………詠唱の意味がわかるのですか?」

「うん。わからないの?」

「勉強しましたから意味は分かります。そもそもわからなければ魔法が発動しませんし。ですが勉強も無しに理解できるなんて、そんなことがありえるのでしょうか?」

「さあ?」

「………もしかして『クエイク』の意味とかも?」

「振動のことだよ」

「………そういう意味だったのですか………」

「??」


 正直何が何だかよくわからない。

 そんなこと調べればいいだけだろ。


「実は―――――――――――――――」


 何百年も昔のこと。

 人族等が魔族の住む魔大陸を侵略し、大陸を奪い支配しようとした。人族の何をここまで動かしたのかは今となってはわからない。

 それまでの戦争に魔王が出てくることは稀であったという。魔王は人間という生き物をゴミのように思っており、自らが手を出すまでもないと考えているのだろう。

 だから戦争するときは魔族の幹部が人間の大陸に出向くという形だった。それでも魔族の幹部といえば人族の一国の総力を合わせても敵わないだろう。

 しかしこの侵略戦争では魔王が動いた。流石に見過ごせない行為だったようだ。

 人族等の最高戦力を集めて行った侵略戦争はあっという間に片が付いた。魔族の圧勝である。魔王の力の大きさを人族等は見誤っていたのだ。自分たちの総力は魔王の力を上回ると。

 結局は逆に侵略され、人族等は壊滅に近い打撃を受けた。そもそも魔大陸に赴いた人々を除けば、他の人々は魔法も碌に使えないような人々だったのだ。文字通り人族等の『総力』での侵略だった。

 結果的には魔法に詳しい人はほとんどいなくなり、魔法に関する文献もほぼなくなり、人族等は人材だけでなく戦うための術も失った。

 人族等は何百年もかけて少しずつ魔法に関しての研究を進めてきたが、いまだに過去の魔法には遠く及ばない。

 ちなみに魔王は無数の魔物を人族等の大陸に放ち、魔大陸へと戻っていったという。


「…………というわけなのです。詳しい魔法に関する書物は既になく、過去の呪文も言葉が読めても効果がわからず理解できないといった状態なのです」

「なるほどね」


 さすがに笑えないな。

 何百年も前のことみたいだし、そこまで気にすることじゃないか。


 てか、もしかしてこれも翻訳魔法による影響なのだろうか?

 この世界の単語は自動的に翻訳できるようになっているし、もしかしたらこの世界の人には理解できない単語も翻訳されているとか?

 そもそも翻訳魔法が召喚魔法の一部だったとしたら、翻訳魔法のみを使うことができないかもしれないし。

 まぁ細かいことは想像することしかできないし、気にしていても仕方ない。


 その後は夜になって夕食を食べてすぐに寝た。

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