冒険者パーティー
「俺はこのまま王都に向かうよ」
「はい。それがいいと思います。ご主人様はもうミネリク皇国に付いたか殺されたものだと思ってるでしょうから」
「私も賛成!」
王都に向かうことに決まったところでさっそく行動……といきたいところだが、まずは朝食と風呂だ。
「じゃあまずは朝食を食べて、その後に風呂に入ろう」
「お風呂!?そんな必要はありません!ボディソープとシャンプーさえいただければ、私たちは火魔法と水魔法が使えますので大丈夫ですから!」
「そうだよ!!お風呂なんてお金がもったいないよ!!」
さすがにこればっかりは譲れないんだよね。
「でも湯船に浸かるのは気持ちいいよ?」
「……それは確かにそうかもしれませんが……お金は節約しないと………私たちがギルドで依頼を受けていた時もお風呂に入ることができるほどの余裕はありませんでした」
「お金にはかなり余裕があるから大丈夫だよ。ちなみに銭湯ってどれくらいかかるの?」
「施設によって違いますが、だいたい一回あたりの入浴で銀貨三枚です」
「高ー!!」
一回で三千円の銭湯なんてありえないだろ。
俺なら一回千円でも入らないぞ!
まぁ今なら全然気にならないんだけど。
「ですから遠慮しておきます」
「いや、お金なら気にする必要ないから行こう!」
「………そもそもどうしてそんなにお金を持っているのですか?」
「神域の近くの森で狩りをしてその素材をたくさん持ってるんだけど、売ったらかなりのお金が手に入ったんだ。まだまだたくさんあるから。ちなみにそこのマジックポーチに入ってるよ」
そう言って近くに置いてあるバッグを指さす。
「それマジックポーチだったの!?すごい!!初めて見た!マジックポーチって貴族の趣味か上級冒険者しか持ってないものだから、一般人じゃ見ることもあんまりできないんだよね」
「だから安心して風呂に入ろう!」
「………わかりました」
なんとか説得し終えて朝食の後に風呂に入る。
もちろん真面目な俺は覗きたいなんて少しも考えていない………いや、少しは考えていたかも。
二人とも年相応の素晴ら……ゴホン。
でもこれは男なら当たり前のことで恥じることではない!
考えるだけなら罪じゃない。俺は思想の自由が国に保障されているんだ!
………あれ?ここは異世界だから保障されていないのか?
いいや、そんなことはない。俺は日本の権利と一緒に召喚されたはずなんだ。……ソウニチガイナイ。
とかなんとか訳のわからないことを考えている愁斗であった。
それが終わったら次は二人のギルドカードを再発行してもらうためにギルドに向かった。
入ってすぐに受付に向かう。
二人が嫌がった受付があったので一番遠い受付に行くことになった。
「ギルドカードの再発行に来たのですが」
「わかりました。金貨五枚かかりますがよろしいですか?」
「二人分再発行したいのですが」
「わかりました。では金貨十枚になります。ここにギルドカードを発行したときに記入したことを、もう一度記入してください」
俺はお金を払い二人には用意してもらった用紙に記入してもらう。
書き終わった用紙を渡して受付嬢が奥に入って行く。
少し待って受付嬢が戻ってきた。
「これが新しいギルドカードです。ところであなた方はパーティーを組んでいらっしゃらないようですが、パーティーを組みますか?」
俺が二人の方を向くと二人は首を縦に振る。
「組みます」
「では名前を決めてください」
「パーティーのですか?」
「はい」
「少し考えてもいいですか?」
「どうぞ」
受付から少し離れて名前を考える。
「名前どうする?」
「ご主人様にお任せします」
「私も!!」
「………」
これは俺の付けた名前を採用したいという建前で、自分たちが決めることから逃げてるんじゃなかろうか?
そうに決まってる!!
「三人で決めた名前にしたいなぁ」
「ご主人様が決めた名前がいいです」
「私も!!」
「………」
やっぱりそうだ!!
でも急には思いつかないよな………。
一応訊いてみよう。
「すみません、今すぐに決めないとダメですか?」
「いいえ。後からでもいいですよ」
「じゃあそれでお願いします」
「わかりました。ではギルドカードを三人分預からせていただきます」
今回は三人のギルドカードを渡す。
受付嬢が奥に行き、戻ってきたときは少し驚いた顔をしていた。
「あなたが噂のシュウトさんだったのですね」
「噂の?」
「はい。冒険者ギルド史上最速で六級になった期待の新人さんです。あくまでギルド職員しか知らないことですが」
「はぁ………」
目立ちたくなかったのにすでに目立ち始めている。
ただ簡単な依頼をこなしていたというだけで!!
「それではギルドカードをお返しいたします。あなた方のパーティーは六級です」
「わかりました。ありがとうございました」
ギルドを出るとアイナに質問される。
「ご主人様って魔法属性は何で登録してるの?」
そうだった。
これを教えておかないと、いざというときに口裏を合わせられないよな。
「一応は火・風・強化だよ」
「どうして?」
「なんとなくかな?」
「そうなんだ」
実際はちゃんと理由があるのだが説明し辛い……。
風魔法はいろいろ便利だからだ。風を操ることは空気を操ること。空気は万物が関係するものであり、いろいろな場面で役に立ってくれるだろう。
強化魔法は単純に身体の性能を誤魔化すため。
火魔法は……………単純にカッコイイから。
話をしながら次の作業に移る。
その後は次の町への移動に必要になる物を買いに行った。
まずは三人分の食料と生活用品から集める。
そんなこんなでいろいろなものを買っていたとき、三つの目をもつ魔物ウォードッグと一緒に歩く冒険者を見かけた。