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拉致された救世主

「待って!」


 レイナが首輪を壊すことを許可し、さっそく壊そうとしたらアイナが口を挟んできた。


「どうしたの?」

「私は壊してほしいなんて思ってない」

「………どうして?」

「今はこのままでいさせてほしいの。決してご主人様を信じていないわけじゃないんだけど………でもご主人様のそばにいられるっていう安心がほしいの」


 そっか……。不安だよね。

 財産も何もない状態で放り出されたときのことを考えると……。


 俺だって最初この世界に来た時は不安だった。

 知らない土地で何も持ってない状態だったから。

 奇跡的に神獣フェンリルのギンさん達に救ってもらったから今生きているけど。


 きっとアイナは似たような感情になっているんだろう。


「わかった。でも首輪が邪魔になったらすぐに教えてね」

「わかったわ。……ありがとう、ご主人様」


 そう言ってほほ笑む。

 可愛い笑顔を見ることができたから俺も満足だ。


 そこでレイナが質問してくる。


「あの、ご主人様。どうやって首輪を壊そうとしたのですか?」

「一気に魔力を流して壊すんだよ」

「そんなことでは壊れないと思いますよ?」

「たぶん一気に多量の魔力を流すことで魔法的な何かを吹き飛ばすんだ……と思う」

「……首輪に掛かってる魔法を強引に吹き飛ばすなんて、いったいどれほど多くの魔力を………………………………?どうして疑問形なんですか?」

「俺も確証がないんだよ。自分の首に嵌ってた首輪を外したことしかないから」

「えっ!?ご主人様も奴隷だったの?」

「あー………いや………」


 二人は信用できる。

 それに何かあった時のために情報は共有しておきたい。


 俺は二人に今までのことを全て話すことにした。

 気付いたら知らないベッドにいて監禁されていたこと。

 逃げて神獣に助けてもらったこと。

 そこで神獣から俺の今現在の立場を憶測で教えてもらったこと。

 あそこから走ってこの国まで来たこと。


 二人は何か考え始めた。

 そしてレイナが口を開いた。


「おそらくご主人様は『拉致された救世主』だと思います」

「『拉致された救世主』?」

「はい。神獣さんの憶測はだいたい当たっています。実は―――――――――――――――」


 レイナはこの国であったことを話し始める。


 以前に国中の兵士があるものを探していた。

 兵士が言うには一人の男性だという。

 国民は最初は国王様かまたはこの国の唯一の王子様だと思ったらしい。

 しかし少し前にそれが取り消されたのに国民が疑問を持ち始めた。

 さらに王都にいた複数の上級冒険者が城で大規模魔法が行使されたのを感じ取ったことを証言した。

 そこから兵士が探していたのは召喚者なんじゃないかという答えに行き当る。

 そして国民が城に殺到し捜索者が召喚者かどうか問い詰めたらしい。

 それを国王様は是とだけ答えたという。

 そこから国民は拉致されたことに気付いたという。

 犯人がミネリク皇国だということも国民は口に出さないが気付いているらしい。


「―――――――――――――――ということがあったのです」

「そうなんだ…………国民は逃げたと思わなかったのかな?」

「それはないと思います。国王様はとてもいい方で説得を成功させるだろうとみんなが信じていましたから。それにもし失敗したとしても召喚者が逃げ出すなんて不可能でしょうから」

「どうして?」

「召喚者はいつも魔法が存在しなかった世界から来ていたらしいですよ。ですから国中の騎士や兵士に囲まれているところから逃げ出すなんてできないんです」

「なるほど………ありがとう」


 やっぱりこの国で当たってたな。


「そういえば召喚者って黒髪黒目なのも常識なの?」

「……?そんなことないですよ。黒髪の人も歴代には何人もいたらしいですが茶髪や金髪もいました。ですが青髪や赤髪は聞いたことありませんね。ご主人様の赤髪は初めてなのではないでしょうか?」


 そういえばまだ赤髪のままだったな。


 髪にかけていた魔法を解く。


「えっ!?黒髪だったのですか?」

「ご主人様、黒髪だったの!?」

「黒髪は目立ちそうだったからね」

「ご主人様は風・回復・強化魔法以外にも何か使えるのですか?髪の色を変える魔法など聞いたことがありません………」

「厳密には髪の色を変えてるんじゃなくて、髪の見える色を変えてるんだけどね。光魔法で」

「……?よくわかりませんが光魔法も使えるのですね!四属性もつかえるなんて……しかも回復魔法と光魔法まで……ご主人様、さすがです!!」

「お姉ちゃん、ご主人様は火魔法も使えるよ!」


 ……なんでそんなこと知ってるんだ?

 俺が火魔法を使ってるところなんて一度でも見せたことはあったか?

 この町にくるまでの移動中だって魔物には風魔法を使うようにしてたし、食事だって魔法を使わずにファリナス商店で買ったものを使っていたはずだ。


「だってご主人様が倒した盗賊の中に焼死体があったもん!」


 よくそんなとこまで見てたな……。

 アイナって意外とスゴイ人物なのかもしれない。

 てか高校生の年代で焼死体を見たことがある人って………申し訳ない。


「ってことはご主人様は五属性も使えるのですか!?やっぱりすごいです!」

「だよね!」


 うーん………やっぱり嬉しいけどこの呼び方はなんか背徳感があるよな。


「そういえば二人は魔法属性は?」

「私は水と雷を使えます」

「私は火と土と強化よ」

「付与魔法を使ってる人を全然見ないんだけど?」

「付与魔法を使える人はあまり冒険者にはなりませんから。ほとんどは商人などの職業に就きます。その方が儲かりますからね。もちろん個人の資質によってつけられる付与の属性・継続時間・効果の違いがありますから、一概に全員がその職業に就くとは限りませんよ」

「そういうことか」


 俺は付与魔法を使う場面がほとんどなかったから、そういう細かいことは全然わからなかった。

 俺が使ったことがあるのは森の中にいたときで、夜寒くなったときに火魔法の付与を服に施して寒さを凌いだぐらいだ。


「武器に付与魔法を施したらなかなか使えそうだね」

「確かにそうですが付与魔法の施された武器は値段がとても高いですし、定期的に付与してもらいに行かなければなりません。とにかくお金がかかるということです」

「なるほど……」


 現実はそんなに甘くないといったところか。


「それにしても本当に何も知らないんですね」

「ハハハ………」


 これでもいろいろ勉強してるんだけどな……。

 まだ勉強が全然足りないみたいだ。


「これから二人にいろいろ教えてもらえると助かる」

「もちろんです!」

「もちろんだよ!てかお姉ちゃんばっかりご主人様と会話しててズルい!!」

「アイナは休んでてください。私のほうがいろいろ知っていますから」


 口論が始まりそうになったところで話を変える。


「さて、今後の話なんだけど……」

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