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偶然の出会い3

「どうして……」

「また迷惑を……」


 二人は泣き出してしまった。

 周りからすれば、一人のローブを被った男が美少女に何かをして泣かせているという最悪な場面。

 俺への周りからの視線が痛い……。


 俺は二人の手を引っ張って、近くにある宿ですぐに三人部屋を借りて中に入ってもらった。

 宿屋の店員に何か言われかけたが、首輪を見せて納得してもらった。


 部屋に入ってもなかなか泣き止まないので、部屋に風の結界を張って外に音が漏れないようにした。

 しばらくして泣き止んだが益々落ち込んでいる。

 ………俺何かやらかしたか?


「ごめん……俺何かやらかしちゃったかな?俺あんまり泣いてる理由がわかってなくて………」


 申し訳なく思ってるのは分かってるけど泣くほどのことか?


「助けていただいただけでなく、ここまで連れてきていただいたというのに…………あまつさえ私たちを大金を使ってまで買っていただいて………私たちが生涯をかけても返せるかどうかわからないほどの大金を……………本当にどうやって恩返しをしたらよいのか……」

「……ごめんなさい」


 うーん……本当に困った。

 こういう時ってなんて言葉をかければいいんだ……。

 「気にするな」なんて言葉は効果がないのは実証済みだ。

 いっそのこと大量の金貨を見せて負担に感じていないことを伝えるか…………お金の問題じゃないよな。


 とりあえず………………寝よう。

 これは逃げじゃない逃げじゃない逃げじゃない………。


「今日は早いけどもう寝て、難しいことは明日考えよう?」

「……わかりました」

「……はい」


 そこで愁斗は衝撃的なことに気付く。


 ここって三人部屋だよね………?

 ……俺はいったい何をやってるんだ!!!


「わ、悪い!!勢いで三人部屋にしちゃった!今すぐ部屋を変えてもらえるように頼んでくるね!!」


 急いでドアに向かおうとすると二人がいきなり服を掴んできた。


「ど、どうしたの!?」

「………私は一緒でもかまいません」

「………私は一緒がいいな」


 アイナの言葉にレイナが驚いた顔をする。


「………実は私も一緒がいいと思ってました」


 次はアイナが睨む。


「お姉ちゃんは男の人が苦手なんじゃないの?」

「アンナだって最近似たようなこと言ってませんでしたっけ?」

「あんなことされれば誰だってそう言うに決まってるでしょ!!」


 愁斗はそれを見て少し安心する。

 なんかよくわからないが結果的に話が逸れて、いい方向に向かっているようだ。

 ただ二人が口論になり始めていたので先に眠ることにする。

 前の世界で『女同士の喧嘩に男が口を出してはいけない』という暗黙の了解があったのをよく覚えている。


 この部屋は三つ寝室がある部屋なのでコッソリ自室に向かう。

 小さな声で挨拶をするのは忘れない。


「おやすみなさい」


 その日、完全に愁斗が眠りにつくまで口論の声が響いていたという。



 次の日の朝、愁斗がゆっくりと目を覚まして身体の自由がきかないことに気付く。

 しかし寝ぼけているせいか深く考えないことにする。

 意識がはっきりするまでその余韻を楽しんでいると、さすがに身体が動かないことに違和感に気付いたのかゆっくりと周りを見回そうとする。するとこっちの世界に来てから全く嗅いでいなかったあの特有の甘い匂いがすることに気付く。

 そして左を向いてみるとそこにはレイナという美少女がこっちを見つめていた。

 目が合ったところでレイナが挨拶してくる。


「おはようございます、ご主人様」


 ……今何て言った?ご主人様?

 そんな素晴らしい呼び名で呼ばれるなんてここは夢の中なんだろうか?


 愁斗がそんなことを考えていると、次は右側からツンツンされて反対側を向く。

 するとそこには予想通りアイナがいた。


「おはよう、ご主人様」


 やっぱり夢だった。

 ということはこれは明晰夢というやつなんだな?

 なるほど。こういう感覚なのか。なかなかいい体験だった。

 だが現実逃避じみた夢からもう覚めなきゃな。


「おやすみ」


 ちゃんと現実世界で目覚めるためにもう一度眠ることにする。



 次起きたときはさっきとは違う違和感があった。

 これは寝過ぎたときによく起こるあのダルさだろう。

 身体を起こしそのまま寝室を出る。

 そこにはすでにテーブルについてるレイナとアイナの姿があった。


「おはよう。ごめんね。変な夢を見ていたおかげで起きるのが遅くなっちゃった」

「いえ大丈夫ですよ、ご主人様」

「………え?ご主人様?」

「はい。私たちはご主人様に買われましたから」


 そういうことか。

 ってことはさっきのも夢じゃなかったのかもしれない。

 それよりも………。


「ごめん、それ外すの忘れてたよ。今外すね」


 二人の近くに寄っていくとアイナに話しかけられる。


「これ外せないの。つけた人にも外せないのよ。外せるのは奴隷商でも一握りの人間だけらしいの。おそらく勝手に外されないように奴隷商の幹部が首輪を解除する方法を独占しているんだわ」

「なんだそれ?それって理不尽じゃないか?」

「そうなのかな?私にとってはこれが常識だからそうは思わないけど……」

「ちなみにどれくらいの間、奴隷でいなきゃいけないんだ?」


 この質問にはレイナが返してきた。


「場合によって様々です。冒険者ギルドで売られた奴隷はその返済分の期間を奴隷として過ごすことになります。ただ、奴隷の場合は一般人より労働に対する対価が低いので長期間の場合がほとんどです。労働に対する賃金が月に銀貨十枚程らしいので、私たちは二人で金貨三十枚ということですから……」


 レイナがその後の言葉に詰まる。

 おそらく複雑な計算の仕方がわからないんだろう。

 公的な学校が存在しないこの世界では識字率も低いし、複雑な計算をできる人もあまりいない。

 もちろん前の世界の高校で習うようなことをできる人はいないだろう。


 ちなみに一般人から奴隷になった人は一生奴隷でいるなんてこともよくあるらしい。

 どういう経緯で奴隷になったのかにもよるらしいが。

 さらに賃金も本人ではなくギルドに直接支払われるので、主人に奪われる必要はないとのこと。

 一般人からの場合はその限りではないそうで、主人に奴隷の賃金を渡されるため奴隷からの脱却は難しいそうだ。


「レイナ達は一人当たり十二年と半年といったところかな」


 さすが異世界だな。今回のは感心じゃなくて呆れだけど……。


「もし二人が望むなら今すぐ解放してあげられるかもしれないよ」

「本当っ!?」

「本当ですか!?」


 二人は驚いた顔をしてすぐに真剣な顔に戻る。


「もしできるのだとしても私は今のままがいいです」

「私も今のままでいいの」

「どうして?その首輪さえ取れれば今まで通り自由だよ?」

「私はこの先ご主人様のそばで残りの人生を過ごして、今までの恩を返したいのです。これは妥協ではなく私の望みです」

「私もお姉ちゃんと同じ気持ちだよ!」

「………一緒にいるのはいいけど、せめて首輪はとらない?俺それがすごく嫌いなんだ」

「……私たちを捨てたりしませんか?」

「もちろんだよ」

「……じゃあご主人様が望むなら」

姉妹の奴隷に関するコメントは多数の読者様からいただきました

自分でも少し強引すぎたかなと反省しております

ストーリー上今更変えることはできませんので、この件に関するコメントは控えていただけると幸いです

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