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I am DEAD   作者: アム
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メモ一枚分の貴女の優しさ



まさか、ね。まさかこんなに厳しい戦いになるとは思いませんでしたよ、神様。


《メモ一枚分の貴女の優しさ》


これはチャリで家をでる前の小四のまだやせてる私と、小二なのに目が人生に疲れてる弟の様子。


いやいやいや。少ない、少なすぎるだろこれは。私はベッドの上で正座し、口をポカンと開けていた。手には先ほど天使からもらった一枚のメモを携え。妙に清楚なメモ用紙の花(菊)柄に天使の優しさを感じる。それと同時に「なんでよりによって菊柄なの!?」と叫び出したい衝動に駆られる。

そのメモにはターゲット(ぶっちゃけ殺すべき相手)の情報が記されていたわけだが、その内容が


1.日本人

2.おじさん

3.肌色の柔らかいものが好き


だけってどうなのよ。これはもうアレだな、地獄行き決定かもな。天使の「早めに諦めさせてあげよう」的な悪意と愛を感じるよ。


「っんのクソ天使ぃぃぃぃぃ!!こんな情報量で探せるかよぉぉぉ!!そして最後の情報超いらねえ何故ならおじさんはみんなOPPAIが好きだってことくらい知ってるんだからね!!清廉ぶって妙な伏せ字使ってくれるなよ天使ぃぃぃぃぃ!!」


自室で埃を舞い上がらせながらのたうち回り悶絶する私をミニサイズの弟が諫めた。


「うるさいぞ姉貴。落ち着けよ…つっても無理な話か。あいつこんな下らないメモ渡してすぐに消えちゃったからな、文句も問い返しも言えないんじゃあな」


そう、そうなのだ。奴め、試練を受けると決めて過去に戻り目覚めた私たち(小四まで私たちは同じ部屋だった、今考えるとおぞましいことだが)に、ちょびっとばかしの説明と情報を渡すと「すいません、忙しいので私は失礼します。頑張って下さいね★」とか抜かして天に昇っていってしまわれたんですよ。うん…天使が人殺しを応援するなよって話だけどさぁ。いや忙しいのはわかるよ?だって天使じゃん?神からの崇高な使命を帯びてるワケでしょ?そんでもって美少女じゃん?きっと親衛隊とかがわんさか待ってるワケでしょ?


「絶望的だ……」


思わず呟いた私に、弟が鼻を鳴らし、


「何だよ、あんなにあっさりやるって言ったのに。今更気弱になってんのか」

「いや、違うよスーパーマイクロチビぼうず。絶望的な方が私は燃えるんだ、そう、この手の震えは歓喜によるものなのだよ断じて怒りや恐怖ではない!!断じて違う!!」


私は意地を張った。


「うるさいぞ姉貴。あんまりうるさいと親父に怪しまれるだろうが」


寝癖でボサボサの髪を揺らして私は頷いた。








そして、今に至るワケだが………とりあえず夏休みの小学生にあらざる切羽詰まった形相で私たちがチャリを飛ばし目指したのは、近くのアーケード街だった。ここは人通りが多いし、今日は全国的に休日だし、掃除機をかけるという些細な理由によって昔はかわいかったであろう奥さんに家を追われた哀れなおじさんがたくさんプラプラしてるだろうというワケで、ターゲットに遭遇する確率が高いと踏んだのだ。私って天才じゃね?よく「お前は自信過剰だ」と言われるが、私にもこの自信がどこから湧いてくるのかはわからない。

ちなみに、私たちは2人ともターゲットの顔を覚えていない。そうなんだよね、だから困ってるんだよね。これは何とも致命的な要因だ。

私は弟に「ホシはスケベそうな顔をした中年男性に違いない。見落としがないよう二人で別々の方を見てしっかり捜すぞ」とさながら中年刑事のような貫禄を漂わせながら指示を出し、アーケードの中央辺りの広場のベンチに私達は背中合わせで座った。弟は私の貫禄に圧倒されているのか、文句も言わずに従っている。まあ、ただもう諦めてしまっていて、ぼんやり私に言われるままにしているだけなのかもしれないが。こいつは昔からそうなのだ。困難を前にすると、平然とした様子で投げやりになって流されていることがあるのだ。その可能性も否めないから、余計私が頑張らねばならないだろう。

私は自分が担当する方の通りを睨みつけた。そして睨みつつも私の頭は半分ほど回想モードに入っていた。人の顔を見続けるなんてすぐ飽き…いや、ちゃんと見張りもやってたよ?お姉ちゃんは嘘なんてつかないよ?だがしかし、端から見れば今の私は、明後日より遠い未来を見ているような呆けた顔をしていると思う。―――比喩ではない。


要するにあの日のことを思い出していたのだ。私達がこんなちんちくりんな格好で、こんな賑やかで癪に触るアーケード街で、ピラッピラのメモ一枚を頼りに背中合わせで目をギラギラさせなくてはいけなくなった原因である、あの日のことを。




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