「あいちてるー」の情報源(カイン視点)
調理部隊の三馬鹿トリオの一人、カインの視点です。
別視点17に出て来たエリエスの発端。
オレの名前はカイン。北の魔王城の調理部隊でコックとして働いている。
ここで親友とも言えるサムとバースと出会ったんだ。オレも合わせて三人で「三馬鹿」と呼ばれてる。
まぁ、実際バカばっかりやってるしな。
仕事は色々大変だが、毎日充実してると言える。
オレ達「三馬鹿」三人の朝一番の仕事として、生ごみの運搬がある。
騎獣部隊と農作部隊の隊員と協力して、前日に出た生ごみで一部の騎獣のエサになる野菜の皮と農作部隊の畑の肥料にするその他の生ごみをそれぞれの部隊に運ぶんだ。
朝一の仕事を終え、早足で厨房へ戻る道すがら三人で何時もの様に話をする。
今日の話題は、昨日のユーリちゃんのオレ達の評価だ。
「ってゆーか、ユーリちゃん、マジで可愛過ぎだから」
「な。笑顔で「しゅき」って言われてあの副隊長が撃沈してたし」
「って言うか、おやっさんは「大すき」だぜ。隊長に至っては「あいちてるー」ってズル過ぎる! オレだって「あいちてるー」って言われたい!!」
サムとバースの言葉に、思わず叫んだオレは悪くないと思う。
…思うんだが、何故か悪寒がして鳥肌が。
「---ユーリが、ディルナンに言ったんですか? 「あいちてるー」と」
低い、ひっくい声が、真後ろからした。
その声に込められた怒気は、ディルナン隊長でさえ目じゃない。
いつから後ろに人がいた? 全く気配がなかったぞ。
サムとバースの顔色は土気色だ。恐らくは、オレも。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはオレが敬愛する隊長の一人である書類部隊のエリエス隊長がいた。それも、すんばらしい笑顔で。後ろに黒い物が渦巻いてるけど。
オレは『エリエス隊長に罵られ隊』に入る位にエリエス隊長が大好きだ。イイ笑顔で鞭を振るう姿がとても良く似合う、見事なS気質のお方だと思う(現実逃避。お目に掛かれてちょっぴり嬉しい)
「はっきり答えなさい」
「「「は、はいぃ! 確かにユーリちゃんがディルナン隊長に言いましたぁっ!!」」」
「結構です。ふふふ」
オレ達に問い質して気が済んだのか、エリエス隊長はそのまま去ってしまった。
……何も無くてホッとしてる二人には悪いが、ちょっぴり鞭で叩いて欲しかったかもしれない。
オレは知らない。
この情報でディルナン隊長が午後の部隊長会議で命の危険を感じる羽目になる事を。
後日、情報源がオレ達だとばれてディルナン隊長の鉄拳に心ときめく事になるのを。