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モテモテ、ウハウハ発言の裏で(サム視点)

調理部隊の三馬鹿トリオの一人、サム視点です。


別視点16に出て来た主人公の言葉の発端。

オレの名前はサム。北の魔王城の調理部隊でコックとして働いている。

仕事は恐ろしくキツイが、中々に楽しい職場だと思う。

何せ、この部隊には名物に事欠かない。







まず、最年長隊員であるオッジじーさん。


長年『調理部隊の鬼』と呼ばれてきたこの人は、隊長になれる実力も打診もあったにも関わらず単なる一職人でいたいと言う理由でずっと一隊員として働いてきた超一流の職人だ。性格も食に関する事に関しては苛烈で頑固一徹。最近は大分柔らかくなってきた…らしい?

一時は、魔王様直属のシェフとして近習部隊に第二部隊所属してた程の腕を持つ。今では後進にその座を譲り、調理部隊で腕を振るいつつ指導役として日々食事提供に勤しんでいる。


今、北の魔王城で働く隊員でこの人の飯を食った事の無い人は皆無だ。

食事に関する「お仕置き」でも有名だし。




そして、調理部隊隊長、ディルナン。


オレ達若手の中でオッジじーさんが一番目を掛けていたその人は、今や調理部隊の若き隊長である。

隊長昇格当時は少しは悔しいと思いもしたが、それよりも妙に納得する部分があった。

ディルナン隊長の仕事への姿勢は凄いと思う。本人のやる気も実力も人一倍だし、視野の広さも臨機応変に対応する発想力もずば抜けてた。


それに、純粋な戦闘においても外警部隊どころか近衛部隊にも引けを取らないし、魔力量もかなりのモノだ。外見も同じ男でもカッコいいと思う。

それで冷静な性格とか、出来過ぎじゃね?




最後に、つい二日前に仮入隊でやって来たユーリちゃん。


とにかく可愛い。小さな幼子というだけでなく、素直にくるくるとよく変化する表情とか、小さな体で一生懸命働く姿とか、お昼寝中の寝顔とか、舌足らずな喋り方とか。

単に可愛いだけでなく、賢い子だとも思う。

その証拠に、オッジじーさんとディルナン隊長が揃って目を掛けている。

あれは、幼子が心配だからと言うだけの目じゃない。昔のディルナン隊長を見てる時のオッジじーさんの目と一緒だとオレは思う。事実、ユーリちゃんは二人の期待に着実に応えている。


でも、やっぱりぽてぽて歩く姿とか、美味そうに飯を食う姿とか最強に可愛いと思う。

その証拠に、他の部隊をも巻き込んでユーリちゃんの親衛隊『ユーリちゃんを見守り隊!』が正式発足した。

オレも勿論入隊したぞ! バースとカインと一緒にな!!

熾烈な争いを潜り抜けて、オレ達で創立メンバーに続く隊員№7~9を無事入手した。ユーリちゃんへの愛を考えれば当然だな!!!







「それで、ディルナン隊長がだな」

「うーわ、隊長ウハウハじゃん。それでなんで澄ましてられんだよ!」

「ばーか、隊長がお前と同じ筈が無ぇっつーの」


いつも通り、朝の一仕事を終えて作業準備をしつつバースとカインと話していた。


今朝の話題はディルナン隊長。

昨日、風呂場で積み上げられた後に飲みに行った先で話題に出た隊長の事だ。

当然ながら、隊長はモテる。昨日も飲み屋の女に隊長は来ないのかと言われた。

女は勿論、外警部隊のヤロー達にも「アニキ」なんて呼ばれてる。


「つーか、ディルナン隊長、集落のねーちゃん達にもモテモテで?」

「外警部隊のにーちゃん達にもモテモテでー」

「より取り見取りのウハウハ!」


そんな馬鹿を言ってゲラゲラ笑ってたら、いつの間にかポムルを手に持ったユーリちゃんがじーっとくりくりの大きな瞳でオレ達を見ていた。


「ユーリ、ポムル切るぞー?」

「あい、にーに」


オレ達が何を言うよりも早く、ユーリちゃんはアルフに呼ばれて去ってしまった。

だから、まさかオレ達の会話をバッチリ聞いてたなんて思いもしなかったんだ。




「ボク、タラシじゃないもん。タラシはたいちょだもん」

「おまっ…どこでそんな事覚えた!?」

「たいちょ、キレイなおねえちゃま達にモテモテでしょー? がいけい部隊のおにいちゃま達にもモテモテでしょー?? ボク、聞いたもん」

「誰だ、ユーリに変な事を教えたのはっ。………三馬鹿!貴様等かっっ!!」


だから、この後にユーリちゃんの口から零れた言葉にオレ達が心の中で絶叫する羽目になるなんて予想もしてなかった。


「たいちょ、ボクもキレイなおねえちゃま達とウハウハしたいのー」


ディルナン隊長にとってトドメの一言は、実はオレ達にとってもトドメの一言だったりする。



あぁ、仕事上がりのディルナン隊長が恐ろしいな……。

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