ノートの使用目的(サム視点)
本編32に出てきたノートの使用目的。
あの時彼らはこんな事を話し、発案者はこんな事を考えていました。
書類部隊での仕事を終えて、ディルナン隊長に抱えられて食堂に戻って来たユーリちゃん。その腕の中には、ユーリちゃんには少し大きいぬいぐるみがあった。
隊長の騎獣であるタイガスのレツを模した可愛らしいぬいぐるみがまた良く似合う。
隊長がユーリちゃんを降ろしてぬいぐるみを置いてくる様に指示を出せば、一生懸命厨房の奥の発注スペースに運んでいく。
「あれ、やばくねーか?」
「抱っこするよりも抱き付いてますね。お昼寝する姿もかなり可愛かったですからねー」
オレだけでなく、バースとカインも一緒にユーリちゃんをガン見してると、横でシュナス副隊長とオルディマがそんな会話を交わす。
その間も誰も仕事の手は誰も止まらない。待ちに待ったユーリちゃんの帰還だけあって、寧ろ速度を増している。
「変な大人に着いて行かない様にもう一度教え込むか」
「ディル、甘ぇぞ。ユーリみたいなちまいのは簡単に連れ去れる。寧ろ他にも協力してもらって監視体制強化しろ」
更に隊長とオッジじーさんがユーリの防犯の話を始めた。
そんな中、無事にぬいぐるみを運び終えたユーリちゃんは大人達の会話を知る事も無く、オルディマが運んだ夕飯を食べ始める。
そんなユーリちゃんを目にしつつ、オレの中である思いが生まれる。
「…隊長、ダメ元でお願いあるんだけど」
隊長に声を掛けると、隊長が視線を向けてくる。
「少し特殊なノート欲しいんだけど。書類部隊経由したら手に入るかな?」
「…そんなモンどうする気だ」
「今さ、ユーリちゃんの絵を作業日誌に書いてるじゃん。どうせならちゃんとした形で残したくってさ。それだとノートだけど絵の具とかで彩色出来るんだよな。金払えってんなら寧ろ喜んで払うし」
件のノート、実は興味本位で発売当初に休みの度にあちこちを探したけど通常の雑貨屋では入手困難の答えが返ってきた。でも北の魔王城のコネなら行けるんじゃねーかな?
但し申請系の書類出そうと思ったら上長の許可印が必須だから、ディルナン隊長の協力が必要不可欠だ。
そんな事を話すと、いつの間にか調理部隊の面々がオレに視線を向けていた。
「そーいや、お前の趣味絵を描く事だもんな」
「へー、そんなノートあんのかー」
「そういう事ならいんじゃね? 隊長」
「色塗りの道具は持ってるんだろうな」
「どの位の金額か分かってるのか?」
アレコレ飛び交う会話に、周囲に反対の様子は見られない。
「道具は一通りは持ってる。値段は普通のノートの十倍位だったかな。
仕事には影響出さない。プライベートの時間内で描くし、ダメかな隊長」
「隊長、オレ、ユーリの可愛い姿の保存大賛成っス!」
「うん、オレも良いと思うけど」
「勿論日誌と一緒に回すんだろうな?」
もう一度隊長に手を合わせて頼むと、アルフやオルディマ、じーさんが援護してくれた。
初めての出来事だ!
「まずは取り寄せが出来るか確認してからだ。そのノートの詳細を提出しろ。物によっては料理のデザイン保存にも使う名目で揃える」
「了解! 明日、発注用のテーブルに置いときます!!」
目立った反対が無いどころか賛成の雰囲気に、許可とまではいかないけど隊長が情報提示を求めて来た。
これは商品パンフレットがあるから大丈夫。
「それにしてもそんなノートがあるのか」
「紙が厚くて、丈夫なんだ。ノート自体の質もいいし」
「それで無くても代わりになりそうなノートもあるかもな」
「んじゃ、経費でノートを買う事は確定だな」
そんな会話をしていたら、食事を終えたらしいユーリちゃんの声が後ろからした。
ユーリちゃんも落書き用とレシピ用のノートが欲しいみたいだ。
落書き帳に何を書くんだろうか。その内見せて貰おう。
それにしてもユーリちゃんのイラスト専用ノートが手に入ると思うとワクワクする。
ユーリちゃんはこれからどんな可愛い姿を見せてくれるんだろうか。一枚でも多く絵にして残したい。
そんでもって、これでいくらでもユーリちゃん見放題の口実も手に入れたっ! ぐふふっっ!!




